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酒場にて、事情を聞かされる

せっかく、いい男と二人で酒を飲んでいる最中だというのに。

 割り込んできた女に、正直かなり苛立っていた。


 だが――


「えっ! ルナさんじゃないですか!」


 コウヘイが、どちらかというと喜んだ声を上げた。


「コウヘイか。仕事では世話になっているな」


 二人は、どうやら知り合いらしい。

 話を聞くと、右も左も分からなかったルナに、土木仕事をコウヘイが教えていたようだ。


 ……なるほど。

 それで、か。


 コウヘイが、明らかにルナに感心を向けているのが分かって、胸の奥が少しだけむっとする。


「それで、なんの用だ?」


 俺は不満を隠さず、そう切り出した。


「魔法が使えそうとか、討伐とか……何がしたいんだ?」


 するとルナは、勝手に椅子を引いて座り込み、腕を組んだ。


「私は金がいる」


 唐突な言葉だった。


「両親が死んでしまってな。

 小さい弟妹がいる。稼がなければ、養ってやれない」


 酒場の喧騒の中で、その声だけが妙に静かに聞こえた。


「最近、この辺りに変わった魔物が現れたと聞いた。

 賞金のために討伐したいと考えていたところ、お前を見つけた。

 だから、一緒に討伐してほしいのだ!」


 ……ものすごく自分勝手だな、とは思った。

 だが、理由は思った以上にまともだった。


「……そうか」


 俺は、つい頷いてしまった。


「では、一緒に討伐してくれるのだな!?」


 ぐいっと距離を詰めてくるルナに、うっとおしさを覚えつつ、俺はまず疑問を投げた。


「その前に聞きたいんだが……

 この世界、冒険者とかギルドってないんだよな?」


 俺の言葉に、コウヘイとルナは顔を見合わせた。


 そして、コウヘイが説明を始める。


「魔物自体はいるけど、基本的にはそんなに強くないんだ。

 普通の人でも、数人いれば倒せる」


「だが、たまに変わった魔物が現れる」


 ルナが続ける。


「そういう魔物は非常に強い。

 だから、討伐依頼として張り出される」


 話を聞くと、討伐できるのは主に魔法を使える者や、国に仕える騎士。

 それでも一応、仕事として掲示はされるが、誰も受けないのが普通らしい。


 その代わり、褒章金だけは少し多め。


「……それでか」


 俺は納得した。


「でもな、俺が使える魔法は雷と、さっき出した氷だけだぞ?

 魔法なんて最近知ったばかりだし、戦闘経験もない。

 そんな魔物、倒せるわけないだろ」


 冷静に、事実だけを伝える。


「それでもだ!」


 ルナは食い下がる。


「魔法があれば、可能性はある!

 手伝ってくれるか!?」


 事情は分かった。

 同情も、少しはした。


 だが――


「悪いけど、断る」


 俺ははっきり言った。


「今日は、酒と飯を楽しみたいだけだ」


「なんでだ!?」


 しつこく迫ってきたが、その理由を告げると、ルナは渋々引き下がった。


 結局、その後は三人で普通に食事を楽しんだ。

 酒も料理も、相変わらずうまい。


 宿に戻り、ベッドに横たわる。


 ルナのことを思い出す。


 普通に話す分には、楽しい女だ。

 あの強引ささえなければ、変な女ではない。


「……まあ、悪い人じゃないんだけどな」


 ごく一般的な感想を頭の中で呟きながら、俺は眠りについた。

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