色が変わる日常と、嫌な再会
正直、成功するとは思っていなかった。
けれど、しずかの漆黒だったはずの美しい髪は、光を受けてきらきらと輝く金色へと変わっていた。
「しずかさん……すっごく綺麗です!」
ゆなが目を輝かせてそう言うと、
「……ありがとう」
短く返しながら、しずかは自分の髪の先をそっとつまみ、まじまじと見つめている。
その赤い瞳は、はっきりと嬉しさを宿していた。
「たけるさん! 私も髪の色、変えたいです!」
今度はゆながきらきらした目で詰め寄ってくる。
「いや、それはもう少し待ってくれ。どのくらい続くのかも、どうやって元に戻せるのかも、正直まだ分からない」
「むぅ……そうですよね」
がっかりした様子のゆなには、ちゃんと自分で制御できるようになったらな、と約束して、その場は収めた。
「……しずか。一応、元に戻せるか試したいんだけど」
普通の提案のつもりだった。
けれど、しずかはすっと視線を逸らして、無言で拒否を示す。
「しずか? 確認しておかないと、後で面倒なことになると思う」
この世界に来てから、
“確認を怠った結果、面倒になる”という経験は嫌というほどしてきた。
真剣に言うと、しずかは少しだけ間を置いて、
「……わかった」
小さく頷いてくれた。
椅子に座ってもらい、いくつか試してみると、髪の色は元に戻せたし、別の色にも変えられることが分かった。ただし、持続時間については不明なままだ。
「じゃあ、とりあえず金色のままで過ごしてみよう。どれくらい持つか確認したい」
「……うん」
そのまま夕方になり、いつも通り風呂に入り、食事をして、普通の夜を過ごす。
しずかの髪は風呂に入っても色が変わることはなく、三人とも緊張することなく眠りについた。
――そして、次の日。
俺は仕事がいつ再開するのかを確認するため、ハローワークっぽい場所へ向かった。
長から「張り出しておく」と言われていたからだ。
掲示板にはいくつか仕事が貼られていたが、土木工事の再開はまだだった。
(……最近、結構金使ってるよな)
正直、少し不安だ。
男の職員に聞こうとしたが列ができていたので、仕方なく、あの不愛想な女職員の方へ向かう。
「すみません。数日でもいいので、働ける仕事ってないですか?」
ちらりとこちらを見ると、彼女は無言で数枚の紙をばさっと出してきた。
・道路の整備
・下水処理
・遠方へ行く貴族の護衛
「……この貴族の護衛って、何ですか?」
「ある貴族が西方の街へ行く予定です。最近は物騒なので護衛をつけることになっています。平民が受ける仕事ではありませんが……報酬は高いです」
危険な魔物討伐と同じ類だな、とすぐに理解した。
雷での高速移動もできるし、魔物も何度か倒している。
(……いける気がする)
それに――
西方方面には、アブソルが言っていた魔石の場所もあったはずだ。
一石二鳥だ。
俺はその仕事を受けることにした。
家に戻り、しずかとゆなに数日家を空けることを話す。
「……嫌」
「数日だけだから」
「毎日一緒だったのに……」
「金がないと生活できない」
二人とも渋々、了承してくれた。
そして次の日。
数日分の荷物を持ち、集合場所へ向かう。
――その時だった。
(……ん?)
どこかで見たことのある馬車と護衛。
嫌な予感がして足を進めると、馬車の中から顔を出したのは――
「たけるさん! 今回はよろしくお願いしますね!」
にっこりと笑う、見慣れすぎた顔。
(……デジャブか?)
いや、違う。
これは現実だ。
アスタナの満面の笑顔を前に、
俺は心の底から思った。
(……絶対、面倒な旅になる)




