表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/111

男二人、湯気の向こうで見た現実と理想

しずかも風呂から上がり、髪を軽く拭きながら部屋へ戻っていく。その後ろ姿を見送ってから、俺はコウヘイの方を振り返った。


「じゃあ、次どうぞ。先に入ってきなよ」


 そう言うと、コウヘイは首を傾げてニヤリと笑う。


「いや、一緒に入ればいいだろ」

「……は?」


 一瞬、意味が分からず固まったが、コウヘイはもう脱衣所へ向かっている。


「男同士だろ? 減るもんじゃねぇし」


「いや、そうだけど……」


 なぜか変なテンションになりつつも、結局一緒に風呂へ向かうことになった。


 コウヘイは豪快に服を脱ぎ捨てる。

 露わになった身体は、無駄のない筋肉がついた見事なものだった。


「……相変わらず、いい身体してんな」

 思わずそう口にすると、


「お、たけるもな。細いけど締まってる」

 そう言って、肩口を軽く叩かれる。


「やめろ、くすぐったい」


 俺も同じようにコウヘイの肩に触れてみる。

 以前なら、変に意識したかもしれない。だが今は、ただ「いい体だな」と素直に思っただけだった。


 その瞬間、なぜか脳裏に浮かんだのは、しずかの柔らかい感触だった。


「……なんで今それ思い出すかな」


 自分でもよく分からず、小さく苦笑する。


 身体を洗い終え、二人で湯船に浸かる。


「はぁぁぁ……」

 コウヘイが深く息を吐く。


「気持ちいいなぁ……」


 その声があまりにも“日本人の風呂の入り方”そのもので、思わず笑ってしまった。


「なんだよ?」

「いや別に、気持ちよさそうだなーっと思ってな」


 最初は少し気まずいかと思ったが、ただの友達同士の風呂だった。

 変な緊張もなく、普通に楽しい。


 風呂から上がり、食事の部屋へ行くと、女性陣三人が料理を並べたり、皿を出したりしていた。


「手伝うよ」

 そう声をかけると、


「もう終わるから大丈夫ですよー」

 ゆなが笑顔で答える。


 俺は先に椅子へ座ったが、コウヘイはなぜか立ったまま固まっていた。


 女性三人が動き回る様子を、先ほどと同じ熱量の視線で見つめている。


「……コウヘイ」

「ん?」


「とりあえず、座れって」


 視線は動かさず、身体だけ椅子に沈む。


 イケメンのはずなのに、どこか残念だ。


 食事は終始和やかに進み、笑い声の絶えない時間となった。


 その流れで、明日は「片付け」という名目で、家の中をみんなで探索しようという話になる。


「面白そうだな」

「暇つぶしにはちょうどいい」


 二人とも快く引き受けてくれた。


 さて、問題は寝る場所だ。


「女性陣と男性陣で分かれて寝ればいいんじゃない?」

 俺が提案すると、


「待て待て!」

 コウヘイが勢いよく手を上げる。


「せっかくだし、全員一緒に寝ようぜ!」


 その目がやたらとギラついている。


「さすがに男性と一緒は……」

 ゆながやんわり断る。


「じゃあ、女性陣と男性陣で分かれよ!」

 ルナが即座にまとめに入る。


 その時、しずかが静かに口を開いた。


「……私は、いつも通りたけると一緒に寝る」


 一瞬、空気が止まる。


「いつも通り?」

「一緒に寝る?」


 コウヘイとルナの反応は対照的だった。


「付き合ってるなら当然か」

 ルナはあっさり受け入れるが、


「……ちくしょう……」


 コウヘイは血涙でも流しそうな顔だ。


「じゃあ、コウヘイは空いてる部屋で一人な」

「えっ!? 嫌だよ!」


「……たけるとの時間は、邪魔しないで」


 しずかの一言に、コウヘイは崩れ落ちた。


 だが諦めきれず、今度はゆなの方を見る。


「じゃ、じゃあ三人で――」

「女同士で話もあるからダメ」


 ルナが即座に切り捨てる。


「ほら、行くよ」


 そう言って、ゆなと一緒に部屋へ向かっていった。


「……また明日な」

 俺が声をかけると、


「覚えてろよ……」

 小さな恨み言が返ってくる。


 結局、俺としずかはいつも通り同じ部屋へ。


 背後から聞こえた「ちくしょう……」という声を無視し、布団に入る。


 隣で、しずかが静かに身を寄せてくる。


 騒がしくて、少し疲れた一日だった。

 それでも、こんな日常が続けばいいと、自然と思えた。


 そうして俺たちは、いつも通り眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ