表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/37

使いを頼まれただけなのに、森が静かになった

いつものように、俺は土木工事の現場で身体を動かしていた。

 特別なことは何もない。土を運び、木材を運ぶ。ただそれだけだ。


 そんな中、現場の(おさ)が俺に声をかけてきた。


「ちょいと使いを頼まれてくれねーか?」


 近くまで来て、低い声で続ける。


「こんな危険な状態でも、森の採取にためらいなく行くお前だ。

 難しいことはねぇだろ」


 ――危険な状態ってなんだよ。

 情報共有しろよ、と内心ツッコミを入れたが、長の顔を見て言葉を飲み込んだ。


 強面で、体格もよく、正直――

 大人の関係になってもいいと思えるくらいには好みだ。


「……わかりました」


 反射的に、そう返事をしていた。


 内容は、森に入って特定の樹木と、その周辺の土を採取してくるというものだった。

 必要な道具と麻袋を渡され、俺は一人で森へ向かう。


 道中、見慣れない動物が何度か襲ってきたが、以前使えるようになった雷を軽く放つと、すぐに逃げるか倒れるかした。


 ――雷を本気で出すと死ぬ。

 なんとなく、加減できるようになっている自分がいた。


 森の奥へ進み、説明された条件を思い出しながら辺りを見回す。


「……たぶん、これだよな?」


 正直、説明はかなりアバウトだった。

 だが、雰囲気で分かる。

 それっぽい樹木と、根元の土を採取し、麻袋に詰める。


 目的達成。

 そう思い、森を出ようとした、その時だった。


 地面が、揺れた。


 これまで襲ってきた動物とは明らかに違う。

 大きく、重く、殺気がある。


 振り返ると、巨大な獣がこちらを睨んでいた。


「……ああ、はいはい」


 正直、驚きよりも、面倒くささが勝った。


 今まで通り、雷を出せばいい。

 そう思い、手をかざす。


 雷が落ち、獣は悲鳴を上げ、そのまま動かなくなった。


「……雷、便利だな」


 それだけ呟き、俺は森を後にした。


 採取したものを長の元へ届けると、彼は満足そうに頷いた。


「よくやったな」


 ねぎらいの言葉と共に、いつもより少し多めの金貨を渡される。


 ――今日は、いい日だった。


 その夜。


 ハローワーク的な場所では、ちょっとした騒ぎになっていた。


「危険指定されていた魔物が、死んでいるだと!?」


 職員たちが慌ただしく動き回り、奥では責任者らしき人物が声を荒げている。


「誰が倒した!?

 討伐の記録は出ていないぞ!

 倒した者を探せ!」


 誰がやったのか分からない。

 だが、確実に“何か”が起きた。


 その頃、俺はというと――

 いつもの宿で、いつものように身体を拭き、ベッドに横になっていた。


「……明日も仕事だな」


 そんなことを考えながら、何事もなかったように眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ