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にぎやかな来訪者と、静かな本音

玄関の方へ視線を向けると、

 そこには息を切らしたゆなと、もう一人――やたらと元気そうな少女が立っていた。


 濁った赤色のショートカット。

 茶色の瞳に、ぴょこんと一本だけ立ったアホ毛。

 ゆなより少し背が低く、全体的に勢いだけで動いていそうな雰囲気だ。


「初めまして! ニーナって言います! よろしくです!」


 片手を大きく上げて、唐突に挨拶。


「……よろしく」


 勢いに少し圧倒されつつ、そう返す。


「すみません……」


 横で、ゆなが申し訳なさそうに頭を下げた。


「友達のニーナです。

 予定決めてからって言ったのに、全然聞いてくれなくて……」


「えへへ!

 だって、ゆなの家行きたかったし! 我慢できなかった! ドンマイ!」


「ドンマイは私が言う側だよ!」


 ゆなのツッコミで場が少し落ち着いたので、俺はため息混じりに言った。


「まあ……もう来ちゃったなら仕方ないな。

 とりあえず、風呂入る?」


 その瞬間――


「聞いてたお風呂!!」


 ニーナのテンションが一気に跳ね上がる。


「ちょ、ニーナ落ち着いて!

 服どうするの!?」


 そんなやり取りを横目に、

 俺は無言で風呂を温め直した。


 二人はわいわい言いながら、

 そのまま風呂場へ消えていった。


 食事の用意をしながら待っていると、

 しばらくして二人が戻ってきた。


「……のぼせた……」


 ニーナは完全にぐったり。


 どうやら初めてのちゃんとした風呂に興奮しすぎたらしい。


 水を飲ませて、少し休ませてから食事にする。


 今日は珍しく、四人での食卓だ。


 量が足りるか心配していたが、

 風呂に入る前にゆなが宿屋のおばさんから余った料理をもらってきていたらしく、

 いつもより少し豪華だった。


 全員が箸を持ったところで、

 なぜかゆなが口を開く。


「えっと……

 たけるさんと、しずかさんは……恋人、です」


「……え?」


 一瞬、箸が止まる。


 しずかはというと、

 特に動じる様子もなく、いつも通り。


 俺は慌ててゆなに目配せする。


(え、どういう設定!?)


 ゆなから返ってきたのは、

 “今は合わせて”と言わんばかりの小さな合図。


(……まあ、いいか)


 そう思って、黙って食事を続ける。


「お似合いの二人ですね!」


 ニーナが目を輝かせる。


「秘密の恋とか、めっちゃ憧れます!!

 絶対言わないので安心してください!」


 親指を立ててグッとポーズ。


「……ありがとう?」


 わけはわからないが、

 このノリは嫌いじゃない。


 改めてよろしく、という流れで食事に戻る。


 二人の話を聞くと、

 街から少し離れた場所に、綺麗な湖のような場所があるらしい。


「明日しか休み合わなくて!」


「だから、ゆなの家に泊まってそのまま行こうって!」


 勢いだけで決まった計画だな……。


「危なくないのか?」


 つい、最近の討伐騒ぎを思い出して聞いてみる。


「何かあったらダッシュで逃げます!!」


 ニーナが胸を張る。


 根拠はなさそうだが、

 まあ、悪い子ではなさそうだ。


「……じゃあ、今日は泊まっていいよ」


「やったー!!」


 そんなこんなで、夜。


 ゆなとニーナは同じ部屋で寝ることに。


 俺としずかは、いつも通り俺の部屋だ。


「おやすみ」


 そう言ってベッドに入ってから、

 ふと思い出して聞いてみた。


「……見られちゃったけど、大丈夫?」


 しずかは、少しだけ間を置いて答える。


「……大丈夫、だと思いたい」


 珍しい言い方だった。


 いつもは、もっと断定的なのに。


 その微妙な変化が、なんだか新鮮で。


「はは……」


 思わず、小さく笑ってしまった。


 しずかは何も言わなかったが、

 その沈黙も、悪くなかった。


 賑やかな来訪者がいても、

 この家の夜は、ちゃんとこの家のままだった。

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