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手加減した結果、壁に穴が空きました

「……撃ってみなさい」


 そう言われたものの、

 俺はすぐには動けなかった。


(いや、待て待て)


 攻撃魔法は、

 正直“何となく”で出したものだ。


 魔物相手ですら、

 一撃で消し飛ばしてしまう威力。


 人間に当たれば――

 まず、死ぬ。


 一歩間違えれば、

 俺は罪人だ。


(さっきみたいに、

 細い光の線にして……

 威力を落とせば……)


 頭の中で、

 必死にイメージを調整する。


 そんな俺を見て、

 ガラテアが苛立ったように言った。


「手加減はいらないと言ったはずよ!」


 きつい声。


「早く撃ちなさい!」


(いや、手加減しないと

 ヤバいんだって……)


 俺は一瞬考え、

 防御役の魔法師団員に声をかけた。


「すみません、先に防御魔法を張ってもらえますか?」


 一瞬、不満そうな顔をされたが、

 すぐに杖が構えられる。


 地面を叩くと、

 先ほどと同じ――


 長方形の光の板が、

 彼女の前に展開された。


(よし……)


 人体を避ける。

 板の端を狙う。


 雷は――

 細く、鋭く。


 威力は、

 できる限り落とす。


 そう強く念じて、

 俺は手を前に突き出した。


「……いけ」


 次の瞬間。


 バリッ!


 短く、乾いた音。


 放たれた雷は、

 確かに“細かった”。


 だが――


 速すぎた。


 目で追う暇すらなく、

 雷は光の板の“端”を貫き、


 そのまま――


 ドームの壁へと到達した。


 ドンッ、という鈍い音。


 雷が消えた後、

 ようやく異変に気づく。


 壁に――

 深い穴が空いていた。


「…………」


 しん、と。


 訓練場全体が、

 完全な沈黙に包まれる。


 誰一人、

 言葉を発しない。


 そんな中――


「な、な、なんですか今のは!!」


 ガラテアの、

 素っ頓狂な声が響いた。


 その声で我に返ったのか、

 周囲が一気にざわつき出す。


「今の、見たか……?」


「防御、貫通したぞ……」


「いや、壁まで……」


 防御魔法を張っていた女性は、

 完全に固まっていた。


 ガラテアは、

 目を見開いたまま俺を凝視している。


 護衛も、

 魔法師団も、

 全員が俺を見ていた。


(威力、上がってるーーー!!)


 心の中で、

 全力で叫ぶ。


(細くしたのに!?

 なんで!?)


 多分――

 雷の速度を“光”として認識しているせいだ。


 そのイメージが、

 悪い方向に作用した。


 顔は必死に平静を保っているが、

 内心は完全にてんやわんやだった。


 そんな中、

 ガラテアがすっと手を上げる。


 それだけで、

 場は再び静まり返った。


 彼女は冷たい表情のまま、

 スタスタと俺に近づいてくる。


 そして、目の前で立ち止まった。


「……検証は、これ以上必要ありませんわ」


 低く、はっきりとした声。


「ですが」


 一拍置いて、

 鋭い視線を向けてくる。


「これほど異端の魔法を使える者が、

 普通の人物だとは思えません」


 俺は黙って聞くしかない。


「アスタナが確認したと聞いていますが……」


 ふん、と鼻を鳴らす。


「本当に“確認できているか”

 わたくしが直々に確かめます」


 そして、命じるように言った。


「部屋へついてきなさい」


 そう告げると、

 振り向くことなく歩き出す。


(あー……面倒なやつだ)


 ぼんやり立ち尽くしていると、

 護衛二人が近づいてきた。


「来い」


「抵抗するなよ」


 完全に連行だ。


 ガラテアの後ろを歩きながら、

 俺は内心ため息をつく。


(王様との話、

 全部台無しじゃないか……)


 そんな時――


「ま、待ってください!」


 必死な声が響いた。


 ガラテアも、

 護衛も、

 全員がそちらを見る。


 そこに立っていたのは――


 顔色の悪い、

 金髪の少年。


「……ウィル?」


 俺が“身代わり”に差し出した、

 あのウィルだった。


 彼は震えながらも、

 一歩前に出る。


「そ、その人は……!」


 何かを言おうとして、

 言葉に詰まる。


 その姿を見て、

 俺は小さく息を吐いた。


(……あーあ)


 どうやら、

 まだ終わりそうにない。

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