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第一王女ガラテア、炎の帰還

王の御前――

 そこは、この国の力が集う場所だった。


 魔法師団。

 魔法を扱い、国家にとって脅威となる魔物を討伐する精鋭部隊。

 ハローワークの掲示に張り出される“危険指定”の魔物は、本来この魔法師団が対処する存在である。


 その師団の頂点に立つ者が、今、王の前に立っていた。


 豪奢な金髪がゆるくカールし、背中まで流れ落ちている。

 薄い緑の瞳は鋭く、きつそうな印象を与えるが、整った顔立ちは誰が見ても美少女だ。

 身長は妹であるアスタナよりもさらに低いが、その存在感は圧倒的だった。


 第一王女――

 魔法師団団長、ガラテア。


「陛下。

 只今、遠征依頼を終え、無事帰還いたしました」


 自分の父である王に対しても、口調も姿勢も一切崩さない。

 それが、彼女の“貴族としての矜持”だった。


 王カエサルは、静かに頷く。


「よく戻った、ガラテア。

 無事で何よりだ。まずは休息を取るがよい」


「はっ!」


 短く、力強い返答。

 ガラテアは一礼すると、踵を返し、颯爽と玉座の間を後にした。


 自室に戻ると、鎧を外しながら護衛の一人を呼び止める。


「……わたくしが遠征に出ている間、王城で何か動きはありましたか?」


 護衛は一瞬言葉を選び、やがて報告を始めた。


 危険指定の魔物が四体同時に出現したこと。

 そして――

 “救世主の紋章”が、平民の少年に発現したという話。


 話を聞き終えたガラテアの眉が、わずかに吊り上がる。


「その紋章が発現した平民は、今どこに?」


 声音は冷たい。


「まさか……王城に留め置かれている、などということはありませんでしょうね?」


「現在は、陛下の命により、王城の離れの一室に」


「……平民を王城に?」


 苛立ちが、はっきりと表情に出た。


「お父様は、何をお考えなのかしら」


 護衛は慌てず、事実だけを伝える。


「検証の日程がずれ、明日となったためです。

 検証が終わり次第、平民街へ戻る予定と聞いております」


「そう……」


 ガラテアは一瞬考え、すぐに結論を出した。


「では、明日の検証。

 わたくしも同行いたしますわ」


 護衛が目を見開く。


「時間と場所は、こちらで指定します。

 その少年に、必ず伝えなさい」


「はっ!」


 護衛が下がるのを見届け、ガラテアは小さく息を吐いた。


(救世主、ですって……)


 文献に記された存在。

 国家の命運を左右する“選ばれし者”。


 それが、本当に平民の少年で済む話なのか――

 彼女は、強い違和感を覚えていた。


 翌日。


 王城内にある訓練場。

 広く整備されたその場所に、関係者が集められていた。


 ガラテア。

 アスタナ。

 そして、救世主とされる少年――ウィル。


 周囲には魔法師団の団員、護衛たちがずらりと並ぶ。


「これより、

 紋章が発現した少年の実力検証を行う!」


 魔法師団の一人が、場に響く声で宣言した。


 ウィルは顔面蒼白のまま、護衛に促され前へ出る。


「……魔法を発動してみよ」


 言われた通り、ウィルは両手を前に出す。


 だが――

 何も起こらない。


 沈黙。


 ガラテアの表情が、露骨に険しくなる。


「……ふん」


 一方、アスタナは腕を組んだまま、動じない。


「文献には、剣の才を持つとも記されています」


 護衛が剣を差し出す。


「次は剣での検証だ」


 対戦相手は、この国で二番目に強い剣士。


 開始の合図と同時に、剣戟が響く。


 最初は一方的だった。

 だが、次第に――

 ウィルは食らいつき、剣を重ね、ついに勝利を収めた。


「……」


 場がざわつく。


 アスタナが口を開いた。


「魔法は使えないようですけれど、

 剣の腕前は悪くありませんわね」


 ガラテアは冷静に頷く。


「……確かに」


 だが、その視線は鋭いままだ。


「ですが」


 ガラテアは、アスタナへ向き直る。


「わたくしは、“複数の魔法を扱える者”がいると報告を受けています。

 その者は、どこに?」


 その瞬間――

 アスタナの表情が、ぱっと明るくなった。


「そうなんです!

 たけるさんは本当に凄いんです!」


 ガラテアが、ぎょっとする。


「……たける?」


「はい!

 あんな凡庸な男ではありません!

 魔法も、見たことのないものばかりで……」


 勢いよく語る妹の姿に、ガラテアは言葉を失った。


(……誰?

 この子)


「ですけど……」


 アスタナは少し肩を落とす。


「魔法師団には入らないって言うんです。

 土木工事が俺の仕事だ、って」


 沈黙。


 ガラテアは、ゆっくりと目を細めた。


「……なるほど」


 そして、静かに告げる。


「一度、その男を確認する必要がありますわね」


 炎を操る第一王女は、

 その瞬間、はっきりと“標的”を定めていた。

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