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拗ねた笑顔と、次の厄介事

その日の夜、ゆなが帰ってきた。


「ただいまですー」


「おかえり。先に風呂、どう?」


「はい!お願いします!」


 いつもの流れで風呂を勧め、

 三人で食卓を囲む時間になる。


 食事が始まったところで、

 俺は今日あったことを簡単に説明した。


「しずかにさ、ネックレス渡しただろ?

 あれ、消えなくなるかどうかの検証で――」


 そこまで言ったところで、

 ゆなの箸が止まった。


 ……あれ?


 ちらっと顔を見ると、

 明らかに不機嫌そうだ。


「……ふーん」


 声のトーンが低い。


「ゆな?」


「別に、なんでもないです」


 いや、絶対なんでもある。


 いつも元気で、

 不機嫌になるところなんて見たことがない。


「えっと……料理、口に合わなかった?」


「美味しいです」


「じゃあ仕事で何かあった?」


「何もないです」


 完全に拗ねている。


 どうしたものかと悩んでいると、

 くいくい、と袖を引かれた。


 しずかだった。


「……ゆなにも、何か送ってあげれば大丈夫」


 ぼそっと、

 でも妙に的確な一言。


 ――あ。


(そういうことか)


 ネックレスは検証目的だったとはいえ、

 結果的にしずかにだけ渡した形になる。


 女性二人と暮らしていて、

 一人だけに“贈り物”。


 そりゃ、つまらなく感じるよな。


「……ごめん」


 俺は素直に頭を下げた。


「プレゼントのつもりじゃなかったんだけどさ、

 気ぃ遣わせたよな」


 ゆなはぷいっと横を向いたまま。


「……別に、欲しいわけじゃないです」


「うん、でもさ」


 少し考えてから言葉を選ぶ。


「今度、ゆなにも何か贈るよ。

 金あんまりないから安物だけど」


 その瞬間、

 ゆなの肩がぴくっと動いた。


「……約束ですよ?」


 ちらっとこっちを見る。


「約束」


 そう言うと、

 ようやくふくれっつらが緩んだ。


 ――やれやれ。


 空気が落ち着いたところで、

 本題に戻る。


「じゃあ、検証な」


 俺は立ち上がり、

 いつものように一度外へ出た。


 少し時間を置いて戻る。


「どう?」


「……見えてます」


 ゆなが言う。


 しずかも、そこにいた。


「よし」


 安易な考えだったが、

 結果オーライだ。


「じゃあ次。

 俺、もうちょい外に出るから、

 しずか、物に触れるか試してみて」


 今度は少し長めに外へ。


 戻ってくると――


「触れた」


 しずかが、

 テーブルの上の皿を指差す。


「私にも、見えてました」


 ゆなが言う。


 理屈は相変わらずわからない。


 だが――


「まあ、いいか」


 俺は肩をすくめた。


「少しでも、

 俺がいない間に退屈しなくなるなら」


 しずかに向かって言うと、

 相変わらず表情は薄いが、

 どこか嬉しそうに見えた。


 その後、

 寝るまでの間に三人で相談もしたが、


「この家でできることって、

 まだよくわかりませんよね」


 と、ゆなが首を傾げる。


「じゃあ、私が友達とか、

 お店のおばさんに聞いてみます!」


 そんな感じで、

 その日は終わった。


 翌日。


 いつも通り仕事をこなし、

 さて帰ろうかと思ったところで――


「おつかれー!」


「おつかれぃ」


 やけにテンションの高い声。


 振り向くと、

 ルナとコウヘイだった。


「……なに?」


「また出たらしいぞ!」


 ルナがにやっと笑う。


「何が?」


「だからそれだけじゃわからないでしょ」


 コウヘイが呆れたように突っ込む。


「珍しい魔物だよ!

 今度こそ一緒に狩りに行くぞ!」


「行こうぜ!」


 ……ああ、あれか。


 前に褒賞金を貰った、

 あの手のやつ。


 正直、

 よくわからず倒しただけだし、

 この二人のノリも面倒だ。


 ふと思い出して聞いてみる。


「そういえばさ。

 お前、王女様に金貰ってただろ?」


「貰ってるぞ!」


 ルナは即答。


「じゃあ、まだ必要なのか?」


 家庭が大変なのは知っているが、

 あの感じだと、

 何度も情報料を受け取っているはずだ。


「必要かどうかじゃない!」


 ルナは胸を張る。


「張り出されてる魔物を、

 一度ちゃんと狩ってみたかったんだ!」


「金も貰えるなら最高だろ?」


 ……やっぱり。


(この女、

 王女と同じ匂いがする)


 ちらっとコウヘイを見ると、

 完全に乗り気だ。


 ルナに視線を向けて、

 嬉しそうにしている。


 断れそうにない。


(まあ、一度やればいいか)


 それで約束果たしたってことで、

 終わりにしよう。


「……わかった」


 俺がそう言うと、


「よっしゃ!」


「決まりだな!」


 二人は満足そうに笑った。


 ――また、

 面倒ごとの匂いがしてきた。


 そんな予感を抱えながら、

 俺は家路についた。

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