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触れられる理由と、王女の命令

ゆなとしずかが同じ部屋で寝ることになった、その翌朝。


 目を覚まして居間へ出ると、二人はすでに椅子に座っていた。

 だが、ゆなの表情が――やけに複雑だ。


「……どうした?」


 声をかけると、ゆなは一瞬ためらってから口を開いた。


「その……昨日の夜、少し試してみたんです」


「試した?」


「物の受け渡しは、普通にできたんです。

 でも……」


 ゆなはちらりと、しずかを見る。


「しずかさんの身体には、触れられませんでした」


「……すり抜けた?」


「はい」


 しずかは静かに頷いた。


「……触れられなかった」


 ゆなは少し肩を落とす。


 どうやら、内心では――

 薄幸美人で、少しだけふくよかなしずかの胸の感触など、

 ほんのり気になっていたらしい。


 寝る前にそんなことを考えてしまった分、

 余計にショックだったようだ。


「……なるほどな」


 俺は頭をかきながら言う。


「俺は、風呂で一回だけ腕を触ったけど、

 それ以降は触ってない」


「じゃあ……」


 俺は提案する。


「今、もう一回試してみる?」


 ゆながしずかにそっと手を伸ばす。

 ――すり抜けた。


「……やっぱり、ダメです」


「じゃあ、俺もいい?」


 そう声をかけると、しずかは小さく頷いた。


 今度は、前に触ったのとは逆の腕に手を伸ばす。


 ――普通に、触れた。


「……触れるな」


 その瞬間、しずかが何を思ったのか、手を差し出してきた。


「?」


 反射的に、俺はその手を握る。


 やっぱり、普通に触れる。


 原因は分からない。

 だが、仕事の時間だ。


「まあ、今後も一緒にいるんだしさ」


 俺は立ち上がる。


「少しずつ、分かっていけばいいだろ」


 二人は頷き、俺は仕事へ向かった。


 ――――


 いつも通り現場で働き、昼休憩に入った時だった。


「おーい!」


 やけにうきうきした声。


 ルナだ。


「最近、引っ越したらしいな。

 遊びに行ってもいいか?」


「だめ」


 即答だった。


 コウヘイとは違う。

 明確な拒絶。


 ルナは一瞬きょとんとしたが、


「……そうか」


 あっさり引き下がった。


 だが、すぐに続けて言う。


「今日は会ってほしい人物がいる」


 嫌な予感しかしない。


「これは命令でもある。

 時間になったら呼びに行く」


「現場の長には話を通してある。

 後でな!」


 そう言い残し、去っていった。


 昼休憩後、働いていると現場の長が来る。


「たける」


 短く呼ばれた。


「ルナから聞いてると思うが、今日は上がっていい」


「金は時間通り働いた時と同じだ。

 気にするな」


 それだけ言って、去っていく。


(……これか)


 帰り支度をしていると、案の定ルナが現れた。


「それじゃあ、行こうか!」


 渋々ついていくと、

 貴族街を抜け、王城へ向かっていく。


 嫌な予感は、どんどん強くなる。


 そして理解する。


(……命令、ってそういう意味か)


 引き返すこともできず、

 俺は王城の一室へ案内された。


 そこにいたのは――


「待っていました!

 たけるさん!」


 白銀のセミロングの髪を揺らし、

 華奢で小柄な身体。

 顔立ちは整っていて、どう見ても美少女。


 第二王女、アスタナだった。


 横には、渋い護衛のおじさんが二人。

 思わず、そちらに目が行く。


 だが、一応ということで、

 姫に対する形式的な挨拶をする。


「そんなに堅くならなくて大丈夫ですよ」


 アスタナはにこにこしながら言った。


「そうだ!

 彼女に、いつものを渡してあげてください」


 侍女のような女性が袋をルナに渡す。


「また、いつでも声をかけてくれ!」


 ルナは生意気にそう言い、部屋を出ていった。


 ……嫌な予感しかしない。


「たけるさん」


 アスタナは、急に真面目な声になる。


「今日は、とても大事なことを調べさせてもらうために、

 あなたを呼びました」


「国にとっても重要なことです。

 協力してもらえますね?」


 この女は頭がおかしいが、

 国のためと言われれば断れない。


「……分かりました」


 渋々了承すると――


「それでは!」


 アスタナは、飛び切りの笑顔で言った。


「服を、全部脱いでください!」


(……やっぱり、こいつは頭がおかしい)


 不敬極まりない感想が、

 俺の胸をよぎった。


 だが、

 ここからが本番だということだけは、

 嫌というほど分かっていた。

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