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姫様の既成事実作戦と、まともな人が誰もいない部屋

気がついた時、俺はベッドの上にいた。


しかも――


「……なんで縛られてるんだ?」


手も足も縄で縛られている。

身動きが取れない。


その目の前で、アスタナがやたら真剣な顔をしていた。


白銀のセミロングの髪が揺れ、整った顔立ちの美少女。

普通なら見惚れる状況なのだろうが――


今の彼女の目は、完全に血走っている。


「たけるさん!」


ぐっと顔を近づけてきた。


「私……結婚させられそうなのです!」


「……はあ」


まずは落ち着かせないといけない。


「事情を説明して下さい。まずはそこから――」


「そんな話どうでもいいのです!」


即座に(さえぎ)られた。


そしてアスタナは胸を張る。


「私とたけるさんが既成事実を作ってしまえば解決ですから!」


そう言って、俺のズボンに手をかけた。


「ちょっと待って!」


俺は慌てて止める。


だがアスタナの手は止まらない。


「こう……でしょうか?」


ものすごく丁寧にズボンを下ろそうとしているが――


全然脱がせられていない。


どうやら構造がよく分かっていないらしい。


もたもたしていたアスタナは、ついに諦めた。


「クレア!」


すぐ横で静かに立っていた侍女を呼ぶ。


「すぐに脱がせて下さい!」


茶色に近い金髪をきっちりまとめた侍女――クレアが一歩前に出た。


「承知致しました」


そう言って素早く近づき――


なぜか。


アスタナの服を脱がし始めた。


「きゃっ!?」


アスタナが驚く。


「何をしているのですか!?

私ではなくたけるさんの服を脱がして下さい!」


クレアは無表情で答えた。


「既成事実を作る為にはアスタナ様も脱ぐ必要があります」


淡々と言う。


「まずアスタナ様を脱がし、たける様をその気にさせましょう」


アスタナは少し考えた。


「……そういうものですか?」


「それは常識です」


「……わかりました!」


アスタナは拳を握る。


「たけるさんをその気にさせましょう!」


……こいつら何を言ってるんだ?


俺は完全に冷めた目でその会話を見ていた。


クレアはただアスタナを脱がしたいだけだし、

アスタナは普通に頭がおかしい。


アスタナはベッドから降りる。


そしてクレアに丁寧に服を脱がされていく。


「もう少し優しく……」


「はい、アスタナ様」


着替えのように脱がされていく姫。


……雰囲気ゼロだな。


このあとどうなるんだろうなーとぼんやり考えていると――


アスタナが下着姿になったところで。


ドアが開いた。


「アスタナ」


聞き覚えのある声。


金色の豪奢な髪をカールさせた小柄な少女――

第一王女ガラテアだった。


「お父様がたけるの事を呼んでいますわ」


部屋に入ってきたガラテアは、目の前の光景を見て止まった。


下着姿のアスタナ。


ベッドに縛られている俺。


沈黙。


そして――


「……何をしておりますの?」


完全に呆れた声だった。


アスタナは慌てて振り返る。


「お姉さま!これは……既成事実を作る為の準備です!」


胸を張って宣言した。


「邪魔をしないで下さい!」


ガラテアは深くため息をついた。


「……はぁ」


「どうせ婚約の件で焦って、そのような愚策に乗り出したのでしょう?」


「結果は変わりません」


「無駄な抵抗はやめなさい」


だがアスタナは首を振った。


「いやです!」


そして叫ぶ。


「私はたけるさんと結婚します!」


顔を歪める。


「あのような方と結婚するなんて我慢できません!」


どうやら相当嫌らしい。


ガラテアとアスタナの視線がぶつかる。


部屋に沈黙が落ちた。


その時。


「何を騒いでいるのかしら?」


柔らかい声が響いた。


扉から現れたのは――


白銀の長い髪を持つ美しい女性。


王妃ユリアナだった。


ニコニコと笑っている。


だが。


なぜか圧がある。


「お母様!」


アスタナとガラテアが同時に声を上げる。


だがユリアナは軽く手を振った。


「城の中で面倒ごとを起こさないようにと言いましたよね?」


にこり。


その笑顔に、二人は同時に


「うっ……」


と声を漏らした。


「たけるさんには用があります」


ユリアナは静かに言う。


「すぐに縄をほどきなさい」


「畏まりました」


クレアはすぐに俺の縄を解いた。


さっきまで楽しそうに服を脱がしていた顔は消え、

完全に無表情の侍女に戻っている。


「それでは」


ユリアナは微笑む。


「たけるさんは借りていきますね」


そしてアスタナを見る。


「アスタナ?」


「早く着替えなさい」


その言葉で、アスタナは自分が下着姿だった事を思い出した。


「きゃっ!?」


「クレア!」


「隠して下さい!」


クレアは静かに頷く。


「畏まりました」


こうして俺はユリアナに連れられ、部屋を後にした。

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