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ギャルメイドの告白と、空を駆ける黒翼

正式な契約という形で話をまとめようとしていたが、俺には一つ不安があった。


「……あの、俺が勝手に話を進めていいのか分からないんです」


ゼファーとリリイがこちらを見る。


「一応、王様からの紹介なので……一度報告してからになると思います」


ゼファーはあっさり頷いた。


「もちろん構わないよ。契約というものは本来そういうものだからね」


了承してくれたが、俺は別のことが気になっていた。


「……ところで、さっきの給金の話って?」


貴族なのに給料の話が出てくるのは少し不思議だった。


するとゼファーが少しだけ気まずそうな顔をした。


リリイが代わりに答える。


「あー、それ? この人さ、鳥に金使いすぎなんだよね」


「……」


「親から預かってる金、ほとんど鳥の餌とか世話に使ってるから」


ゼファーは咳払いした。


「彼女たちの健康のためだからね」


「だから貧乏なんだって」


なるほど。


それでリリイがここまで遠慮なく話すのか。


一応納得はしたが、本当にそれだけか?という疑問は少し残った。


そんな俺の様子をよそに、ゼファーが言う。


「それで今日はどうするんだい?」


金色の瞳が楽しそうに細められる。


「滅多に人が来ないからね。泊まっていっても構わないよ」


だがすぐにリリイが止めた。


「いや、急に泊まりとか食材足りないし」


「食材ならその辺で調達すればいいじゃないか」


「私もあんたも戦えないからいつも食材カツカツじゃん」


「……そうだったかな?」


(この人ポンコツだ)


俺は確信した。


そこで提案する。


御者(ぎょしゃ)の人には帰ってもらったんですけど、もしこのカラスを貸してもらえるなら帰れそうなんですよ」


まだ軽く飛んだだけだ。


長距離の試運転もしておきたい。


ゼファーは少し考えた。


「それなら、こうするのはどうかな」


黒い巨翼へ目を向ける。


「リリイを連れて街へ行き、食材を買って戻る」


リリイが眉を上げた。


「私?」


「君が帰れるかどうか確認する意味もある」


なるほど。


つまり試運転だ。


俺は頷いた。


再び風の荷台を作る。


椅子付きの結界付き荷台。


エンデがまたカラスの前へ歩いていく。


しばらく沈黙。


そして尻尾を揺らす。


……乗れ、という合図だ。


「彼女も利口だね」


ゼファーが興味深そうにエンデを見る。


「少し興味が湧いたよ」


そこへリリイ。


「それで食材のお金は?」


ゼファーはスッと目を逸らした。


「彼女を貸し出す費用として、たけるくんが出してくれるよ。ね?」


完全に金がない。


「……はい」


俺は頷いた。


空へ。


黒翼が羽ばたく。


ぐいん、と空を駆ける。


結界のおかげで風も衝撃もない。


「速っ……!」


半日かかる距離。


それが一時間もかからず街が見えてきた。


城へ行こうとも思ったが、思ったより時間が遅い。


今日は買い物だけにする。


ちなみにこのカラスの名前は――


「あしん」


ゼファーが名付けたらしい。


街で買い物をしながら、俺はリリイに聞いた。


「なんでこの仕事してるんだ?」


リリイは肩をすくめる。


金髪サイドテールが揺れ、青と茶色のオッドアイがいたずらっぽく光る。


「金持ってる男と知り合えそうじゃん?」


軽い。


「あとメイドの仕事嫌いじゃないし」


「なるほど」


俺も自分の事情を少し話した。


するとリリイが急に言った。


「えっ、優良物件じゃん」


「は?」


「付き合おうよ」


……軽い。


軽すぎる。


「いや、会ったばっかりだし」


遠回しに断る。


だがリリイは気にしない。


「なんで? 一回付き合ってダメなら別れればいいじゃん」


ぐいぐい来る。


ノリが良すぎる。


(それもありか……?)


一瞬思ったが。


――ビシッ


横から視線。


しずかだ。


かなり冷たい。


「……」


「……」


俺は即座に言った。


「いややっぱ無理」


屋敷へ戻る。


夕食の準備を手伝う。


リリイは万能だ。


掃除も洗濯も完璧。


だが料理だけは――


この世界基準だった。


俺が少しアレンジすると、皆よく食べてくれた。


風呂を済ませ、夜。


ゼファーが笑顔で言う。


「今宵は一緒に寝ようか」


「断ります」


即答した。


「残念だ。次こそ共に夜を明かそう」


(泊まりにならないよう気をつけよう)


心に刻む。


客間は一つしかないらしい。


鳥の部屋が多いのだ。


俺、しずか、エンデで使うことになった。


リリイが言う。


「一緒でいいの?」


しずかが答える。


「……いつも一緒に寝てる」


「ふーん」


その瞬間。


しずかとリリイの視線がぶつかった気がした。


……気のせいだろうか。


今日はベッドが一つしかない。


三人で寝ることになる。


「おやすみ」


目を閉じる。


するとすぐに、しずかがくっついてきた。


まあ一つのベッドだしな。


そう思っていると――


ドスッ


横腹を突かれた。


「……?」


「しずか?」


返事はない。


よく分からないまま。


しずかの体温を感じながら、俺は眠りについた。

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