魔石暴走!?そして王からの褒美
「では、次はお前だ」
研究者風の老人に促され、俺の前に同じ装置が運ばれてきた。
しずかが魔力を込めたものは、魔法師団の者が数人がかりで蓄えていた補助付きらしい。
対して俺の前の装置は――完全に空。
(いやいやいや、一回見ただけで出来るかよ!)
内心全力でツッコミを入れたが、目の前には王カエサル。
逃げ場はない。
「……やります」
とりあえず、しずかと同じように魔石へ手をかざす。
意識を向けた瞬間、自分の内側から何かが“流れる”感覚があった。
じわり、と赤い魔石が光る。
「……!」
ざわ、と周囲がどよめいた。
(あ、これ出来てるやつだ)
しかも――
しずかの時より光が強い、気がする。
「おお……!」
歓声が上がる。
なんだこの異世界イベント感。
テンションが上がる。
(もっといけるんじゃね?)
調子に乗った俺は、さらに魔力を流し込む。
ぐぐぐ、と流れが太くなる感覚。
楽しい。
なんか楽しい。
「もういい! もう十分だ!」
背後から慌てた声。
「あ、終わり?」
手を離そうとした瞬間――
カチ。
という音と同時に、
ブシャァァァァァッ!!!
装置から勢いよく水が噴き出した。
真正面にいた魔法師団の女性とアスタナに、豪快に直撃。
「きゃあっ!?」
周囲が一瞬で凍りつく。
水は容赦なく降り注ぎ、アスタナの服はぴたりと身体に張り付いた。
……あ、やばい。
侍女たちが一斉に駆け寄り、姫様!と布で囲む。
アブソルが慌ててスイッチを押し、水は止まった。
俺は固まる。
(俺、悪くないよな? 事故だよな?)
その時、低い声が背後から落ちた。
「たけるよ」
ゆっくり振り返り、膝をつく。
「は、はい」
「今回の件、感謝はしておる」
「いえ、お役に立てたなら……」
「だが」
空気が重くなる。
「公衆の面前で娘をこのような姿にするとは思っておらなんだ。さて……どうしたものか」
圧。
心の中では全力で叫んでいる。
(いや事故だろ!? 水だぞ!?)
だが顔は上げられない。
その時だった。
「王よ」
ベーカー子爵が一歩前に出た。
「この装置が完成した事、領民にとって何よりの救いでございます。出来れば早急に持ち帰りたいのですが……」
話題が逸れた。
(助かった……!)
その後は運搬方法や必要人員の話へと移る。
俺はするりとしずかの隣へ移動。
「俺、悪くないよな?」
「……」
無言。
呆れた視線。
「事故だろ?」
「たけるはやっぱりえっち」
不本意な本日二度目のこの発言。はぁとため息が零れた。
「たけるよ。少し話がある」
王に呼ばれ、別室へ案内される。
「しずか殿も一緒でよい」
大きな部屋。
対面のソファに腰掛ける。
茶が出される。
カエサルは静かに口を開いた。
「今回の件、改めて礼を言う」
「いえ」
「よって、褒美を出そう。何が欲しい?」
褒美。
正直、金はもうそれなりにもらっている。
欲しいもの……。
「特には……」
「遠慮は無用だ」
少し考え、俺は口を開く。
「鳥、いませんか?」
「鳥?」
「結界と、俺の風の荷台を組み合わせて、空を移動できる仕組みを考えてまして」
これまでの経緯と、構想中の“空輸システム”を説明する。
王は腕を組み、ふむ、と唸る。
「面白い」
「ただ、問題は鳥です」
しばし沈黙。
「ああ、そういえば……鳥を研究しておる変わり者がおったな」
「え?」
「ある貴族の息子だ。半日ほどの場所に家を建て、鳥の研究をしておる」
「紹介してもらえますか?」
「よかろう」
王は筆を取り、紹介状を書いた。
「進展があれば報告せよ」
「はい」
こうして――
干ばつの地を救う魔石の暴走事件は幕を閉じ、
代わりに、空を目指す計画が始まった。




