ベルナール観察
「ねえラオル、殿方が失望する女性ってどんな人?」
「失望?よく状況がわからないけど、やっぱり浮気じゃないかな?」
「そうよね。それに浮気されれば浮気したくもなるわよね」
日々色々試してみても全く浮気の兆候を見せないベルナール様。ドタキャンしても気色悪い蕪を送っても怒らないし、婚約者同士のお茶会に野獣を同席させても苦情の一つ、NTR一つも起きないなんて予想外ですわ。
「ラオルちょっとお願いがあるの」
「えーやだな⋯⋯⋯⋯」
「ねぇ聞いた?あのガスパード様が浮気してるそうよ」
「本当?ベルナール様可哀そう!」
そんな噂を流してみたらものの見事に一瞬で広まりました。どれだけ噂好きなのでしょうか。
「なぁベルナール、お前の婚約者大丈夫なのか?浮気してるんだろ?」
「うーんどうなのかな?」
この数日間ニナ嬢の浮気の噂で持ち切りだ。
「相手誰なんだろうな。この学校のヤツだなんて噂だけどな」
「ははは」
それは無いと思う。だって彼女はいつも下種豚の死角から家畜の生態観察をしているのだから。もちろんその瞳には恋心は無く、実験用モルモットを見るような好奇心で輝いている。
下種豚を観察して何をするつもりだろう?豚の失敗や失態を探して懲罰をするのかな?
だが常に見られていると思うと興奮するな。完全無視の放置プレイも悪くはないが、逆に随時見られていると思うとグッとクるものがある。
「はぁ~~~もうこの際チョっと変な事しちゃおうかな?そしたらお仕置きされちゃうかもしれないし」
「どうしたベルナール?」
「いや、なんでも」
イカン心の声が漏れた。高位貴族である侯爵家嫡男が下種豚なのがバレたらまずい。ニナ嬢にはバレていたが、それでも婚約者になってくれたのだ。彼女は相当なドSに違いない。
もう結婚したら毎日どうなっちゃうんだ?!⋯⋯マズイぞ!考えただけで興奮してきたー!今授業中なのに!教師よ、今私に質問して立たせないでくれよ?すでに起立しているからな。何この後がないピンチの状況?余計興奮するじゃないかぁ!
「うーん浮気の噂を聞いて軽蔑するか浮気に走ると思ったのですけれど」
「お嬢様ベルナール様よりお手紙と送り物でございます」
「今度は何かしらね?」
「何々?普通の挨拶文から始まって、『観察はいかがでしたか?素敵なオペラグラスを見つけましたのでお送りさせていただきます』だって」
⋯⋯⋯⋯もしかすると私がNTRの進行状況を観察していたのがバレていたのかしら。
それにオペラグラスまで用意して、私に浮気がバレない自信がおありのようね。
「売られた喧嘩は買わせていただきますわ!最早浮気を隠せない程に発情させてやる!!」
「ベルナール様、本日もニナ様から送り物が届いておりますよ」
「そうか。それは楽しみだ」
私は先日ニナ嬢にオペラグラスを送った。これで遠くからでも下種豚の失態がよく見えるだろうと思っての事だ。きっとSな彼女はすぐにでも下種豚に躾を施したくなるはずだ。
「何かな?⋯⋯⋯⋯え?えぇぇ」
中身はゴージャスな女性物の下着だった。
「このスケスケおパンティーは腰のサイドで縛るのか⋯⋯上もしかり」
すべて紐で調節できる。即ちサイズフリーではないか!
「ま、まさかこの私にこれを纏えと?はっ!そのためのオペラグラスか?!この下着を纏った私を遠くから観察したいのだな!」
どうしよう~恥ずかしい。でもオペラグラス送ったのは私だしなぁ。もしかしてコレを催促したと思われたのかなぁ?そ、そんなつもりじゃなかったんだけどな~
「自分で蒔いた種だ!侯爵家嫡男としてこの難問をクリアする!!」
「ふっふふ。今日はNTR日和だわ」
昨日私は町でエロいと人気の下着屋さんで一番エロい下着を購入してきたわ。どんな浮気相手にも対応できるように紐でサイズをアジャストできるタイプにしておいたから、巨乳にも細身の女性にも対応可能よ。今頃ベルナール様の脳内は誰にアレを纏わせるか大会議をしてるはず。
「それとあの下着に町で買った怪しい媚薬を染み込ませておいたの。これで理性も爆発よ。よもやNTRもゴール寸前ね」
私は先日頂いた高性能のオペラグラス片手に講義をサボリ、ベルナール様がよく見える反対側の空き講義室から彼を観察いたします。
「ふふふ今日は何故だかソワソワしているわ!これは期待できるわね」
「おはようベルナール」
「お、おはよう」
「どうした?何か変だぞ?」
「いや、大丈夫。少し落ち着かないだけだよ」
今日私は例のおパンティーセットを身に着け、学園へと登校した。だがとにかく落ち着かない。服さえ脱がなければ見つかる事なはいと思うのだが、安心できない。
椅子に座るとおパンティーのレースを尻に感じて自分はなんて卑猥な豚なのかと実感する。そして今日もニナ嬢は反対側の空き講義室から、私が送ったオペラグラスで私の痴態を観察している。
もし今私が貧血などで倒れたりしたらこのシャツのボタンを外されて⋯⋯⋯⋯
あぁ絶対に駄目だ。こんな下着を身に着けて登校しているのがバレたら私は終わりだ。そう思うと緊張が拡張する。主に股間で。
まずいぞ、臨戦態勢は駄目だ!薄いスケスケおパンツはガード力が皆無だ!
何故だかこの下着を身に纏った瞬間から息子が第一反抗期のごとく我が儘になっている。私は私が想像していた以上に女性の下着を着用するのが好きなのかもしれない。
私は頭の中で物理学と父親の怒った顔を想像する。ふーっ冷静になれた。
私は深呼吸をしながらニナ嬢をチラ見する。ニナ嬢はオペラグラスで私の葛藤を楽しんでいるみたいだ⋯⋯⋯⋯え?
「ニナ嬢だめだ、今それは駄目だ」
ニナ嬢は私の観察に夢中でスカートが乱れている。白い太ももが見えてチョっとほんのちょっとおパンティーが見えた気がする⋯⋯⋯⋯
「うぅぅぅぅ-――」
「おい?どうしたベルナール?体調悪いのか??」
「あぁぁ少しだけそっとしておいてくれ⋯⋯⋯⋯」
「貧血か?わかった。保健室行きたければすぐ言えよ?」
「うー」
なんてこった。私を振り回して楽しむニナ嬢は怒Sだった。最恐だった⋯⋯⋯⋯
私の体力と威厳は今後も保てるだろうか?!最早空前の灯だ。