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カフェデート

「お嬢様、本当に良いのですか?」


「ええ、もちろんよ」


私は王都の町でも可愛いと有名なカフェがよく見える、街看板の裏におります。

ここからカフェの様子をうかがっているのです。


「そろそろ三十分よ。頃合いね。ベルナール様にキャンセルの連絡を伝えて来てちょうだい」


「はぁ、しかし可哀そうではありませんか?あの様な場所で一人、三十分も待たせて――」


「これは仕方ない事なのよ。さあ!伝えて来てね」


王都で人気の可愛いカフェ。無論女性客ばかりです。

この店でのデートの約束を取り付けた私は、計画通りベルナール様をカフェに一人で長らく待たせ、追い打ちを与えるかのようにドタキャンを伝えます。さすがの彼も怒りで冷静さを欠くでしょうし、周りには美しいベルナール様を狙うハイエナ女子がウジャウジャしております。そうなると⋯⋯⋯⋯ふふふ

正に猛獣達の檻の中のウサギ。


「ふふふNTRカウントダウンかしら?」


今日念願が叶うかもしれませんね。


「あ、アグネスがベルナール様にドタキャンを伝えているわ!」


ふふふどんな反応するかしら?怒りに任せて、先ほどからベルナール様を血走った目でロックオンしている隣の女性と連れ込み宿へ向かうかもしれないわ~今日は歩きやすい靴を履いてきて正解だったわね。


「さてさてどうなるかしらね?あれ?胸を押さえて俯いてしまったわ」


ベルナール様はお怒りになるとこのポーズなのかしら?俯いて怒りに震えているみたいに見えるわね。少し申し訳ない気もするけれど、私の欲のために頑張ってくださいませ!!


「あ、ハイエナ女子一号出撃だわ!ベルナール様に話しかけてる~」


やっぱり先人は隣の席の方でしたね。驚くほどの狩猟力です。獲物の感情変化の空きを逃しません。


「あら?断ったのかしら?」


一号は席に戻ってしまいました。彼女はベルナール様の趣味ではなかったようです。


ベルナール様はしばらく俯いて、店を後にしました。


「あれ?おかしいわね。NTR失敗だわ」


「お嬢様は一体何をされたいのですか?婚約は家同士の契約でもあるのですよ?それを⋯⋯」


「大丈夫よアグネス。私は確かに酷いですが、彼はこれから約二十年間、肉食獣に何度も狩られて浮気を繰り返してしまうのですから」


「?少々理解に苦しみますね」


でも今回も失敗のようです。次こそは頑張りますわ。


――ベルナール――


「ベルナール様、婚約者のニナ様からお手紙が届いております」


「ありがとう」


初体験であった膀胱攻めお茶会から数日後、婚約者のニナ嬢からデートのお誘いを受けた。場所は最近女子に大人気だと言うメルヘンチックなカフェだ。


「午後三時に待ち合わせ。席は予約済みか」


人気のカフェでなおかつ予約済。そこから読み解けるのは⋯⋯


「どうしょう?!何か計画的にご褒美が用意されてるのか?!」


今度は何されちゃうのだろう?!わからない。私は沸き立つ興奮をM根性で抑えてデートの日まで過ごした。


――デート当日――


「いらっしゃいませ~キャ!かっこいい!」


はぁ、全く人気店の店員が聞いて呆れるな。ここは――


「いらっしゃいませ~→(おい誰が豚の入室許可した?)


キャ!かっこいい!(キメェ!下種家畜!)」


なのだがな。


私は予約席に案内される。案内された席は通り沿いの可愛らしい席だった。当然だが周りは若い女性客だらけで、彼女らがずっと私を見つめている。


私を見つめる時は蔑みを含めるべきなのに分かってない。私は俯きため息を吐く。


そして顔を上げた瞬間に反対側の通りの看板の陰から私を観察する目を見つけた。


「ニナ嬢?」


あそこから私を観察しているようだ。えー?何だ?何だ?!予想外だぞ?


私は待ったを言われた犬のように微動だにせず座り続ける。え~?どうしょう?何されちゃうんだろう?!こんな体験初めてだぞ?


座り続ける事三十分。彼女の侍女が私の元に伝言を伝えにやって来た。


「ベルナール様、大変申し訳ありませんが、ニナお嬢様は本日こちらに来られないとの事です」


「え?!そうですか。うぅぅぅ」


あそこからお互いを意識し合ってのデートだったのか?!何この距離?!放置プレイかと思いきや、観察されてるこの時間⋯⋯⋯⋯


「あぁぁ~こんなの動物園の動物になったみたいじゃないか~!!」


胸をわし掴みにされたような切なさを感じ、胸を押さえながら俯く。


「あの~どうされましたかぁ?よかったらぁ私とぉお茶しませんかぁ?」


「済まぬが私は今、新しい界隈と言う激情と戦闘中だ。そっとしておいてくれ」


「え?そ、そうですか」




ふとニナ嬢を見ると、ニヤニヤと笑いながら私を鑑賞している!男の私に似合わないメルヘンチックな女性空間という檻に私を詰め込み、逐一私を観察して笑っていたのだ。


なんという才能だよ。私は彼女との将来に期待しか持てない。


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