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女性パーティー結成のお茶会

 午前のギルドは、すでに人のざわめきで満ちていた。

 受付前には商人たちの列ができ、奥のテーブルでは数人の冒険者が地図を広げて打ち合わせをしている。木の床を踏む足音と鎧の擦れる音が絶え間なく重なり、油に混じる紙とインクの匂いが鼻をかすめた。


 リアとルゴルは掲示板の前に立ち、並んだ依頼書に目を走らせていた。討伐、護衛、荷物運び――見慣れた内容の中で、一枚だけ異彩を放つ紙がある。


「……女性限定の依頼?」

 リアが首を傾げ、その紙を少し引き寄せる。

 内容は「修道院周辺の魔物討伐」。備考欄には「敷地内は女子のみ入場可」とある。


「修道院か。男子禁制ってことだな」

 ルゴルも紙を見ながら呟く。


 その時、軽やかな声が後ろからかかった。

「やっぱり気になった?」


 振り返ると、レネアが立っていた。竜人らしい涼やかな瞳と肩にかけた剣の柄がよく似合う。彼女は依頼書を覗き込みながら、にっと笑った。


「どうする? 一緒に行かない? こういうの、ちょっと面白そうじゃない?」


 リアは一瞬目を丸くしたあと、ふっと笑う。

「奇遇だね。私もレネアを誘おうと思ってたんだ」


「へぇ、考えることは同じか」

 レネアは楽しげに笑い、依頼書を軽く指で叩いた。

「でも、三人は必要だよな? あと一人、どうする?」


 リアは少し考え、口の端を緩める。

「……アテはある、かも」


 依頼書から視線を外さないまま、ルゴルが短く尋ねる。

「誰だ?」


「ノエルに声かけてみようかなって」

 リアの言葉に、ルゴルは小さく頷いた。

「ああ、ノエルか」


 レネアが小首を傾げる。

「ノエル?」


「うん。私の友達で、魔導士なんだ。魔法の腕は確かだし、いい子だよ。……ただ、冒険はあまり慣れてないかもしれないけど」

 リアが肩をすくめると、レネアは興味深げに顎に手をやり、依頼書をとんとんと叩いた。


「じゃあ、そのノエルに会ってみたいな。三人でやるなら、まずは顔合わせからだろ?」


 リアはぱっと笑みを浮かべる。

「じゃあ、時間を作ってみるよ」


---


 町の宿屋の一角。昼下がりの食堂は、冒険者たちが出払った後でほどよく空いていた。窓から入る晩夏の光が木の卓をやわらかく照らし、外から吹き込む風がわずかにハーブの香りを運んでくる。遠くの席では旅人らしい一団が賑やかに笑っており、その声がざわめきとなって溶け込んでいた。


 丸い卓を囲むのは、リア、レネア、そしてノエルの三人。


「……初めまして、かな。私はレネア。剣を使ってる」

 レネアが軽く背筋を伸ばし、礼を添えるように言う。


「私はノエル。魔法を少し……。よろしくね」

 ノエルも穏やかに微笑み、ふんわりとした声で応じた。


 挨拶は交わしたが、どちらも自然に距離を測っているようだった。臆することはないものの、初対面ならではの探り合いの静けさが卓に漂う。


 その空気をやわらげたのは、給仕が運んできた湯気立つハーブティーだった。カップが卓に置かれると、立ち上る香りに三人とも目を細める。


「いい匂いだな。落ち着く」

 リアが深く息を吸い込みながら呟くと、ノエルがくすっと笑った。


「リアって、よくそうやって素直に言うよね。なんだか気持ちがほぐれる」


「分かる」

 レネアも軽く頷き、唇の端を上げる。

「肩の力が抜けるっていうか……おかげでこっちまで楽になるよ」


 卓の上に、柔らかな笑いが連鎖して広がっていく。


 ノエルはカップを両手で包み、ふと視線を上げる。

「それにしても、個人で受ける依頼って新鮮かも。普段は協会の仕事ばかりだから、三人で仕事するの……ちょっと楽しみになってきた」


 レネアも同じようにカップを傾け、軽く笑った。

「私も。三人でどう動けるか、試してみたいな」


 まだ探り合いの気配は残っていたが、言葉の端々に期待と親しみの色が滲み始めていた。


戦える女性メンバーが3人になったので、女性パーティーを組むことになりました。

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