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いつも通りの夜

※性的な表現があります。

「起きてるか?」

 そう声をかけながら、リアが部屋の扉を軽くノックする。


「ああ」

 ルゴルの返事に、リアがそっとドアを開けた。


「茶、淹れてきた。いる?」

 片手に掲げたマグを軽く振ると、机に向かっていたルゴルがペンを置き、無言で受け取る。


「そっちはどうだった? 男性三人組」

 茶に息を吹きかけながらリアが訊くと、ルゴルは少し首をかしげ、思い出すように視線を巡らせてから答えた。

「悪くなかった」


「カルドが合う人、エルカ以外にいたんだ!?」

 リアが目を丸くすると、ルゴルは落ち着いた声で言葉を重ねる。


「前衛が一人なら回るんだろうな。後衛から見て、動きが読めないタイプじゃない。ノースも俺も、噛み合ったんだと思う」

 そう言って茶を一口飲み、続ける。

「お前とは……動線が被るな。以前の動きから見ても、戦い方が近すぎる。どちらも引かないしな」


「それはカルドが……って言いたいとこだけど、まあ、そうだな? 確かに最後は、どっちも引かなかったな」

 リアは苦笑しながら頷いた。

「こっちは、"チームワーク"って感じだった。皆が合わせにいくんだよね。それでいて、譲り合いじゃなくてちゃんと決めて動ける」


 リアはマグを揺らしながら、今回の遠征を思い返す。

「ノエルは後衛だから全体見て調整してくれるし、レネアも連係がうまい。前衛なのに、サポートっぽさがあるっていうか……自分が決めたがるんじゃなくて、譲ってくれるような……余白っていうのかな?」


 ふとルゴルを見て、にっと笑う。

「なんか、レネアと組んでると、お前をちょっと思い出すんだよね。違うと言えば違うんだけど……一緒にいて、やりやすいっていうかさ」


 ルゴルは目元を少し緩めて、マグを掲げた。

「それは光栄だな」


 リアがマグを合わせると、カツンと音が鳴った。

 ふたりの笑いが、部屋の中で自然にこぼれる。


 そのまま視線が交わった。

 一度、また一度。


 合図のように、どちらともなく身体が寄る。


「なあ、ルゴル。あのさ……」


 言いかけた言葉を、ルゴルが舌先で奪う。

 くすぐったくて性急な動きに、リアはつい笑ってしまう。

「突然何だよ」


 くつくつと笑うリアを抱き寄せるルゴルの手は、不意をつくほど優しい。

「突然か?」


 ルゴルの髪を撫でながら、「突然だろ」と返すリア。小さく笑ってキスを返す。

 軽く触れた唇を、ルゴルが深く引き寄せる。

 リアの手がルゴルの肩に触れ、抵抗するように見せかけて、首へ回される。


「なんか、こういう時って、ベッドが遠く感じないか?」

 リアが小さく笑うと、ルゴルは苦笑まじりに答える。

「お前の足なら三歩だろ」


 リアは愉快そうに笑ってから、「折角だから、このまま連れてってくれよ」と手を深く回し、軽く体を寄せた。


「飲んだの、酒じゃなかったよな」

 ルゴルがため息混じりに呟き、リアを抱き上げた。

 脚をぶらぶらさせながら、リアが機嫌よく笑う。

「お前、やっぱり力あるよな〜」


 ベッドに降ろされたリアがごろりと横になると、隣に腰を下ろしたルゴルがシャツを脱ぎながら問いかける。

「で、次は服も脱がすのか?」

「お、いいね。脱がしてくれるのか?」


 リアが両手を差し出すと、ルゴルは呆れたように鼻で笑い、手を伸ばす。素早く、けれど丁寧にシャツを脱がされながら、リアがぼそっと呟いた。

「……情緒ないな〜」


 だがその声には、どこか楽しげな色が混じっていた。


「……お前は、もう少し静かにしろ」


 残された服を足から引き抜きながら、ルゴルの顔には、どこか戯れめいた優しさが混じっていた。


 肌が触れる。

 それだけで、どこかほっとする空気が流れた。知っている体温。互いを預け合える感覚。


「……じゃあ、黙らせてみろよ」


 リアが顎を上げる。

 ルゴルが口づけを落とすと、リアは小さく笑いながら目を閉じた。


リアはカルドに合わせますが、譲らない方が合理的だと判断すれば譲らないので、基本的にはぶつかりやすい相性なのだろうと思います。普段は、仕事後に酒を飲みに行くことも含めて結構ルゴルが譲っていますからね。仕事着で入り難そうな小洒落た料理店や晩秋の遠征など、結構色々なところで押し切られているなと思います。リアは無神経ではありませんが、「押せるところ」は押していくタイプですね。

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