ハマの地獄族vs神奈川チョーコー part14
ワァ! !
隅田が飛び掛かった事で、地獄族の集団から声が上がる。
「勝ったでぇ!どんな威勢がいい野郎でも隅田さんに組み付かれたら子犬みたいなもんだ!」
続けて地獄族の集団の1人が叫んだ。
過去の喧嘩から、隅田の柔道殺法で何人も泣きを見てきた人間を見てきたからこその勝ちを確信する叫びだった。
ドガッ!
双方のぶつかり合う音が響いた。
隅田の踏み込んだ時に地面から発せられた音に、隅田の両手が貞利の両襟を掴んだ際に隅田の両手が貞利の両胸付近にぶつかった後。
など、複合的な肉体の衝突音が衝撃音として響いたのだった。
「そのまま投げたれぇ!」
地獄族の久保田直也が叫んだ。
「おらぁ!チョンコーどうした!掴まれて何もできねぇかぁ!!」
地獄族たちの勢いが上がる。
完全に勝利を確信していた。
「・・・・・・」
そんな地獄族のメンバーたちの威勢は、突如として列をなしたかのように途切れた。
「・・・・・・あれ?」
「どうしたよ?」
「隅田さんの様子何かおかしくないっすか?」
地獄族メンバー・上嶋幸三が、隅田が何かおかしい事にいち早く気づいて、隣の井浦寛太郎に小さい声で話しかけた。
話しかけられた井浦は、上嶋の言葉に何かを感じ、暗い中、バイクのライトと街灯で何とか見える状態の中央タイマン中の2人の様子見を改めて注視し始めた。
ザワザワ・・・・・・。
隅田の様子が何かおかしいと、上嶋だけでなく、地獄族のメンバーの数人も気づきはじめてザワザワし始めていた。
「ガッ・・・・・・」
地獄族メンバーたちに不安感が蔓延し始めていた時、隅田は、貞利の両襟を掴んだまま動かなくなっていた。
いや、動けずにいた。
一言、声にならない声を発するのがやっとの状態であった。
(手に力が入らねぇ・・・・・・)
両手で、貞利の襟を掴んだ隅田は、そのまま背負い投げの形で投げ飛ばそうと考えていた。
だが、その目論見はまんまと失敗に終わった。
貞利の左手が、隅田の口の左右、両頬を思いっきり掴んでいたのであった。
「ぐぐ・・・・・・」
隅田は、両頬を左手で思いっきり掴まれているために、口はあんぐり状態で開き、口を閉じる事ができず、顔は貞利の左手の力で上を向かされ、隅田は貞利を正しく直視する事ができずにいた。
隅田は、目線を下にすることで、なんとか相手を視認していた。
「何やってんだァ!隅田ァ!」
「さっさと投げちまえェ!」
地獄族側から怒号が飛ぶ。
「地獄族の連中は、ああ言ってますが。あんな状態で掴まれては、投げるための力は発揮できません」
「何故なんです?」
キム・ヨンジンの言葉に、神奈川チョーコー2年のチャン・ドゥヒョンが反応した。
「チャン。力の源はどこから来ると思う?」
「え?そ、それは・・・・・・足からですか?」
「違う」
「?」
「口。正確にはアゴ。そこが肉体の力の源なんだ。足や丹田なんかじゃない」
「くち・・・・・・」
チャンは、視線をキム・ヨンジンから貞利へと向けた。
「投げちまえばそいつはコンクリで一発や!さっさと投げぇ!」
組んだ状態のまま動かずにいる隅田に地獄族からのヤジが飛ぶ。
(そんなこたぁー分かってんだよ!くそっ!こいつのこの左手が邪魔なんだ!)
「歯を食いしばる事で、顎の関節が固定されて体の軸が安定する。それが全身の集中と瞬間的な力の開放につながるんです。だが、貞利さんは、左手で隅田の口をガッシリ掴むことでそれを防いだ」
身体を反った状態で、無理やり投げようとする隅田。
それを簡単に耐える貞利。
離れたところから見ていると、何か細かく二人が踊ってるかのように見える。
(こんな状態じゃ投げられねぇ!この手をどかす!)
隅田は、自身の両頬を掴んでいた貞利の左手を掴んで引き離そうと、相手の両襟を掴んでいた両手を離し、貞利の左手へ自身の両手を伸ばそうとした。
その時。
(今だ!)
貞利は、その隅田の動きを好機と捉え、自身の右腕を大きく後ろにそらした。
右手は貫手の形に変化させていた。
グサァ!!
「ぎゃあああああああ!!!」
隅田が悲鳴を上げながら、貞利から背を向け、身体を縮こませて小刻みに踊ってるかのように蠢いていた。
左目を両手で抑えながら。
「な、なんだ!?」
「隅田さん!?」
地獄族のメンバーたちは、隅田に何が起こったのか分からなかった。
「はぁはぁ・・・・・・」
肩で息をする貞利。
貞利の右手の人差し指と中指には、血が付着していた。
貞利による、隅田への貫手による左目への目突きが完璧に成功したのである。




