ハマの地獄族vs神奈川チョーコー part8
キムの誘いに陸男と貞利は、一瞬逡巡したが彼らについていくことにした。
明らかに彼らに関わればややこしい事になるのは分かっていたが、先ほどまでのキム・ヨンジンによる懐柔策(陸男と貞利は気づいているのかいないのか)に丸め込まれていた2人は、手打ちにしてもらった恩もあり、地獄族との出入りに付き合うことを決めた。
なにより、キム・ヨンジンを通して、在日という民族に興味が湧いてきたのが大きかった。
キム・ヨンジンによると、現在神奈川チョーコーは、地獄族という横浜で有名な暴走族と抗争中という事だった。
理由は、今月初めに東京チョーコーの金三兄弟(キム三兄弟)が横浜遠征したことであり、地獄族にとってそれは、朝鮮高校にシマ荒らしをされたに等しく、ハマを仕切ってると自負する地獄族としては看過できない重大問題であった。
その、金三兄弟の横浜遠征以降、地獄族は神奈川チョーコーに宣戦布告。
それ以降、横浜各地で神奈川チョーコーと地獄族の小競り合いが頻発していたのだった。
キム・ヨンジンから地獄族との抗争に誘われて以降、陸男と貞利は、神奈川チョーコーと行動を共にするようになる。
そうして神奈川チョーコー対地獄族の抗争は、横浜の各地で小競り合いを合わせて頻繁に衝突していく・・・・・・。
そして、その抗争が続いていったまま年を跨いだ1974年1月。
神奈川チョーコー生1年2名が地獄族に襲撃され、横浜市・海の公園の海岸に埋められる事件が起きる。
これで、神奈川チョーコーは、完全に激怒。
50名で、地獄族による日限山で行われていた集会を強襲。
陸男と貞利も、木刀を持ってチョーコー勢に加勢。
100人近くいた地獄族も、神奈川チョーコーが大挙しての強襲に完全にパニックを起こし、半数ほどがバイクで逃走。
残り半数で神奈川チョーコーに対応せざるを得ず、形勢はチョーコー勢に有利に働いた・・・・・・。
(仲間が完全にパニック起こしてやがる。これじゃあ、戦えるもんも戦えん)
地獄族総長・山根昌盛は、神奈川チョーコーに劣勢になっている状況を焦りながらもそう分析した。
また、突然の神奈川チョーコーによる集団襲撃に、地獄族の指揮系統も混乱。
子分たちをうまく統率できなくなっていた。
街灯も少ない日限山。
さらに視界の悪い深夜の暗闇の上、チョーコー側がバイクとバイクのヘッドライトを悉く破壊。
敵である地獄族の視界と足を奪って戦況を有利に展開していった。
(木刀を持っていく必要もなかったな)
貞利は、神奈川チョーコーによる一方的展開に、加勢用として自宅から持ってきた木刀が手持ち無沙汰となり、木刀を持った右手をブラブラ左右に揺らしながら、チョーコーの襲撃を眺めていた。
(これはダメだ・・・・・・。どうにか態勢を・・・・・・)
地獄族総長・山根昌盛は、神奈川チョーコーの襲撃による自陣の混乱の中、必死にない頭をフル回転させていた。
神奈川チョーコーによる地獄族強襲から、数十分が経った。
言うまでもないが、完全に形勢は神奈川チョーコーに分があり、地獄族は防戦一方であった。
その戦いも、数十分という時間と共に両陣営落ち着きはじめ、それぞれ両陣営、向かい合う形でお互い相手の陣営を睨み合う様相に移行していた。
神奈川チョーコーは、長蛇の陣のような陣形で並び。
地獄族は、混乱がまだ続いているのか、おしくらまんじゅうのようにお互い身を寄せ合い、神奈川チョーコーの攻撃を凌ごうとしているのか怯えているのかという態勢・状態になっていた。
ピカッ!
ピカッ!
神奈川チョーコーが、地獄族のバイクを奪い、そのバイクのヘッドライトで地獄族集団を照らす。
照らされた地獄族側は、ヘッドライトの光で神奈川チョーコー勢がよく見えない状況になってしまった。
そんな時、神奈川チョーコーを代表するかのように、サイ・ガンチョルが単身、地獄族側に歩みよってきた。




