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烏山工業vsチョーコー

1976年 5月 京王線電車内 夕方


東京都立烏山工業高等学校、通称烏高。

東京都世田谷区北烏山に存在する、京王線沿いで最もワルな不良学校である。

そんな、京王線沿い一のワルの集団5人組が、隣の車両のチマチョゴリを着た5人組をニヤニヤしながら眺めていた。


チマチョゴリを着た5人組は、チョーコーの女学生であり、朝鮮高校の女子生徒たちは、年中チマチョゴリを来てウリハッキョ(朝鮮学校)へ通学している。

(もちろん、冬はチマチョゴリの上にブレザーを着て寒さ対策をしているが)

東京チュンゴ(中高)へは、埼玉から通う者や、千葉から通ってくる生徒もおり、その居住地は様々だ。

そのため、東京の京王線を使っている生徒も多数いた。

なので、烏高とチョーコーが京王線でバッチングする事も多々あり、その場で喧嘩なども日常茶飯事であった。

都内の不良たちにとって天敵と言えるチョーコー生だったが、チマチョゴリを着たチョーコー女子生徒たちも都内の不良たちにとっては、メンドクサイ相手でもあり高嶺の花でもあった。

チョーコー女学生には美人が多く、東京中の不良だけでなく、一般の学生たちも何かのきっかけでお近づきになりたい!と内心恋焦がれる。そんな高嶺の花的存在なのであった。

(ちなみに、朝鮮学校では年に1回、学内美人コンテストが行われていたりする)

そんなイルボンサラム(日本人)たちの恋慕は、絶対不可能・叶わぬ恋であった。

なんていっても、チョーコー女学生たちのバックには、天下の泣く子も黙るチョーコー生たちが控えているのだ。

イルボンサラム学生がチョーコー女学生に声をかけようとしたものなら、即座にチョーコー生たちが現れ、そいつを袋叩き。

そのイルボンサラム学生は、顔をパンパンに腫らした姿で登下校することになるだろう。

そんな、お近づきになりたいけど絶対に叶わぬ存在であるチョーコー女学生のチマチョゴリたち。

それゆえに、振られたり高嶺の存在故のやっかみから、日本人学生たちからのチョーコー女学生への嫌がらせは時折起こったりしていた。

(日本人学生や社会人のおっさん達が、チョーコー生が周りにいない時を見計らい、単身のチマチョゴリ姿の女生徒へ嫌がらせをしてくる。日本人は、そういう卑怯者集団なのだ)


というのが、当時のチョーコー女学生たちの通学等の状況である。


ホン・ギドク・東京チョーコー1年生。

身長は低く、153cmしかない。

まだ立川チョーチュー時代の坊主頭の名残が残っている坊主から少し伸びたまんまにしているその髪型が京王線の電車の振動で細かく揺れている。

ホンは、烏高とチョーコー女学生たちとは又違う車両の座席に座って、帰りの書店で買った漫画雑誌を読んでいた。

日本語と日本文化禁止のウリハッキョで、日本の漫画雑誌を読んでいようものなら、鉄拳と金属バットによるケツバット100回が待っているが、ここは都内の電車内。

東京チュンゴ(中高)のソンセンニム(先生)の監視も当然届かないので、チョーコー生ならびにホン・ギドクなどは、自由気ままに日本文化の代表である漫画を楽しんだりするのだ。


「チョッパリケーセッキ!オジマ!(日本人のいぬ野郎!近寄るな!)」


漫画雑誌を読みながらくっくっくと笑っていたホンの耳に、聞きなれた女性のウリマル(朝鮮語)が聞こえてきた。

それも強い口調の大声でだ。

ホンは、声のした車両を見ると、隣の車両からチマチョゴリのチョーコー生らしき女性1人がホンのいた車両に勢いよく入ってきた。




「お前らのそのなんたらチョゴリってキムチで出来てんのか?」

「ぎゃはははは!」

「ヤッチボジマ!(舐めんなよ!)」

「あ?キムチ語で言われてもわかんね~よ。日本語しゃべれ。ここは日本ですよ~」


東京チョーコー女生徒4人組に絡み続ける烏高の不良5人組。

チマチョゴリ姿の4人組は明らかに困っていた。

周囲の乗客は、我関せずを貫いていた。


「キダリョラ!(待て!)」


そんな時、若干幼い感じの男の声が、5人組の烏高生に向けられ飛んできた。


「あぁ~ん!?」


烏高生の1人、内藤が声のした方向を見た。


「・・・・・・」


声がした方向。

電車の連結部分のドア前。

そこには、まだ高校生になり切れない感じが見え見えのチビの学生が立っていた。

その後ろには、自分たちがからかっている女生徒と同じ制服。

チマチョゴリを着ている女がこちらを睨んでいた。


「何て言ったんだ?」

「さぁ」


烏高生たちは、お互いの顔を見ながら、先ほどあそこにいるチビが何て言ったか確認しあっていた。


「!!」

「どうした!?」

「あいつ、チョンコーだ!見ろ、あのバッヂ」

「まじか・・・・・・。あいつらと揉めると厄介だぞ」


烏高生たちは、少し離れた場所でメンチを切ってきてるチビの学生がチョーコー生だと気づいて、内心動揺していた。


「でも、あのチビ。そんな強そうには見えねえぞ」

「5人で一気にやっちまえば・・・・・・」


バァッサァ!


そんなチョンコーに対して作戦会議をしていた内藤の顔に、漫画雑誌が飛んできて思い切りよくぶつかった。


ドサ!


漫画雑誌が床に落ちる。

チビの学生・ホン・ギドクが、持っていた漫画雑誌を内藤めがけて投げつけたのだ。


「ニヤァ」


投げつけたホンは、烏高5人組を挑発するようにニヤケていた。


「てめぇ!チョンコラァー!」


それが合図の様に、5人組の烏高生がホンに飛び掛かった。




京王線 武蔵野台駅 ホーム ベンチ


「てめぇー!チョッパリ!殺したるぞ!」


ホンが、大声をあげながら上半身を起こした。


「わっ!」


東京チョーコー1年・ソン・ミョンジャは、失神したホンを武蔵野台駅のベンチで自身の膝にのせて介抱していたが、ホンが急に大声をあげながら目を覚ましたので驚いた。

ホンの顔は、殴られ蹴られまくった結果、ひどく腫れあがっていた。

他の4人のチマチョゴリ姿のチョーコー女学生たちも、周りで心配そうな顔をして立っていた。

5人組の烏高生は、既に走ってどこかに逃げていって姿が見えなくなっていた。


「クェンチャナ?(大丈夫?)」


ミョンジャは、ホンに問いかけた。


「まあ、大丈夫。痛くないよ」


ホンは、明るく言った。


「今は、アドレナリンが出て興奮状態だから痛くないだけよ!私の家が府中にあるの。そんなケガした状態じゃ危ないから、寄ってってよ」

「アドレナリン?難しい言葉知ってるな・・・・・・」

「ヌナ(姉さん)が看護師なのよ。そんな事はどうでもいいわ。顔ボコボコよ。ええ~と」

「ホン。ホン・ギドク」

「あたしの名前は、ソン。ソン・ミョンジャ」


後にチョーコー内で隠れて交際する事になるこの2人。

ホン・ギドクとソン・ミョンジャ。

ミョンジャの府中の実家で介抱され、急速に仲良くなっていったのだった。


後日、この乱闘をミョンジャ達から報告された2・3年のソンベ達は烈火の如く怒り。

猛烈な烏高狩りが行われたとか・・・・・・。

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