神奈川チョーコーのサイと士官・桜井 その7
「チョーコーとチョッパリたちの戦いを終わらせるため。サカンの奴とも手を組む。それが同じ在日同胞たちを守ることにつながる・・・・・・。確かにサイヒョンニムの考えは一理あります」
チャンは、メガネのブリッジ部分に手をやり、汗で少し下に下がった自分のメガネを直した。
「ですが、それがヒョンニムの考えといえど、俺は納得できません。サカンの連中に俺たちソンベ達は、卑怯な手で散々やられてきましたから」
チャンは、そこまで喧嘩は強くない(弱い方)だが、結構喧嘩っ早く、性格は非常に頑固であった。
だからと言って、チョーコー内で、神である3年生に、平民である2年がこんな生意気な口を利くなど、チョーコー内では絶対に考えられず、そんな口を利いた瞬間、いつものチョーコーなら鉄拳が顔面に飛んでくる・・・・・・はずなのだが、サイは、そのチャンの意見に黙って腕を組んで聞いていた。
チャンは、実は2年生でありながら、飛び級できるほどの頭脳を持っているインテリで、神奈川チョーコー内でトップクラスの学業成績を誇る生徒であった為、サイ・ガンチョルは、そんな自分とは真逆の存在であるフベ(後輩)のチャンを一目置いていたのであった。
「聞き捨てならねぇなぁ・・・・・・」
チャンの言葉に、桜井が反応した。
「卑怯者呼ばわりかどうか拳で確かめてみてもいいぞ、ええ~っと」
「チャンだ。サカンは、名前も覚えられないのか」
鼻で笑うチャン。
席に着く前に、各々自己紹介は済ませていて。
名前だけは把握していたから、その程度も覚えられないのかという偏差値が低い国士館へのチャンの皮肉であった。
「なんだと!?」
桜井がムキになる。
少し身を乗り出す。
「まぁ、桜井くん。落ち着いて」
サイが、身を乗り出そうとする桜井を静止した。
「すまない桜井くん。チャンも少し血の気が荒いのでね。チャン、言い過ぎだ。桜井くんに謝れ」
「いいえ。俺は謝りません。本当のことを言ったまでです」
頑固なチャンは、サイの言葉に反発した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
5人の間に重苦しい空気が流れる。
そんな中だった・・・・・・。
「ヒョンニム。あっち見てください」
「ん?なんだ?」
パク・ヨンスが、サイに向かって、自分たちから数メートル離れた席にいる5人組の男たちの方へ目くばせした。
パクが目くばせした方向は、サイの背後。
右後ろ斜めの席。
そこの席にいる5人組の男たちは、サイたち5人組をじっと睨みつけていた。
パクの目くばせした方を見るサイ。
サイは、見た瞬間、その男たちがカタギではない事を確信した。




