神奈川チョーコーのサイと士官・桜井 その5
夜 横浜市 野毛町 居酒屋グリーン
ワイワイ、ガヤガヤ
夜20時ごろという事もあって、店内は人でごった返していた。
客は、労働者にサラリーマン。
仲には香水臭そうなOL2人組がバカ話に花を咲かせているのであろう、大笑いしていた。
そんな和気あいあいとした雰囲気が流れる店の中で、明らかに高校生。
普通ではない空気を醸し出す、制服を着た5人組が、同じテーブルを囲みながら木製の椅子に座っていた。
「サイヒョンニム(兄さん)」
サイと桜井が2人並んで座り、その対面にサイと同じ、白シャツに黒の長ズボン。
胸のポケット部分にサンペンが付いた制服を着た3人の学生・神奈川チョーコー生たちが座り、その1人、サイから見て右端に座っている、短髪の学生が口を開いた。
「なんだ?」
ヒョンニム(兄さん)と呼ばれたサイ・ガンチョルが、野太い声で答える。
ちなみに、チョーコー内では、目上の者を呼ぶときは、ソンベの他にヒョンニムと名前の後につけて呼んだりする。
「今日、合わせたい奴がいるっていうんで来てみたら。まさかサカンの奴とは!」
語気を強めて非難めいた声を発したのは、神奈川チョーコー2年生のチャン・ドゥヒョン。
細身の男で、視力が悪いので、常時メガネをかけていた。
(ムッ)
その言葉に、少しムッとなった桜井だったが、それに反論するのは控えた。
「こいつらサカンは、俺たち在日に何をしたか忘れたんですか!?」
続けざまに、畳みかけるチャン。
「忘れちゃいない」
腕を組むサイ。
「サカンとは犬猿の仲だが、だからと言ってこの抗争をいつまで続けるつもりだ?」
「いつまでって・・・・・・それは・・・・・・」
サイの反論に、口ごもるチャン。
チャンの隣の2人の神奈川チョーコー2年生、パク・ヨンスとチョ・ジウォンは、この2人の会話を黙って聞いていた。
「キムはまだか?」
「イェ(はい)、用事で遅れるそうです」
サイは、パクに聞いた。
キムは、神奈川チョーコー3年で、フルネームは、キム・テウという。
サイの同級生である。
サイは、同級生のキムがまだ居酒屋に到着していないのを確認しつつ、話を続けることにした。
「東京チュンゴ(中高)のキム・ブントクとジュンキ。そして、キム・エイジの三兄弟は、都内だけじゃなくここ横浜でも過去の植民地がどーたらで日本人不良狩りを行ってるが、もう戦後30年も経つ。サカンだけじゃない、ハマの日本人不良たちとのぶつかり合いも年々激しくなってる。俺は、その流れを止めたいと思ってる」
東京チョーコーのキム・ブントクとキム・ジュンキ。
そして、まだ作品内で触れていない、金三兄弟の最後の1人、キム・エイジ。
この男たち、金三兄弟が、都内と横浜で日本人不良狩りを行っている様子は、またの機会に・・・・・・。
話を戻す。
サイは、目の前3人のチョーコー生たちに目をやる。
そして、話を続けた。




