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第14話:はじめてのオトモダチ

 私たちは明日の魔法訓練開始に向けて休養するように言われた。なのでセイラさんの授業以外にやることはない。


 いつも通りセイラさんとの授業を終えた私は魔獣小屋へと向かった。


「こんちは〜」


 魔獣小屋の奥、私のテイムモンスターであるアイダファミリーのみんながいる扉に入った。みんなは私が入ってきても特に気にすることもなく自由気ままに過ごしているようだった。

 出迎えてくれたのは檻に入っていないヘイルとブーンだけだった。ブーンは私の周りをぐるぐると回って出迎えてくれた。虫ってそんなに好きでもないんだけどこうして懐いてくれていると可愛いもんだね。


(おう、おめぇか)


 入口に近い檻にいるオルクが気怠そうに顔を見せた。みんなの檻を順番に開けて私は小屋の中にあった椅子に着いた。


 この間テイムした猫の魔獣が私にすり寄ってきている。可愛いが、そのサイズは秋田犬以上に大きい。でもその大きさも好き♡

 ボルドは相変わらずセレストにビビっているようで私の膝の上にいるセレストをチラチラと見ては自分の檻の中にひこんでいってしまった。巨体の割にビビリって……萌えちゃうなぁ


 猫の魔獣を撫でながらみんなに変わったことがないかを聞いてみる。


(変わったもなにもねーな)


(前よりみんなと仲良くなったわよ)


(雰囲気は良くなったんじゃない?)


 みんなが口々に近況報告をしていく。私という共通の主が出来たことで仲間意識が湧いてきたのか前よりも仲良くなったみたいだ。周りを見ると獣同士で毛づくろいをしている子もいて、家族仲が良くなったとは嬉しい限りだ。


「わふん!」(ユミのおかげだ!)


 コマは自慢げに胸を張って尻尾をブンブンと振っていた。


「あはは…私はきっかけを与えただけだよ」


(そんなに卑屈にならないのっ)


(僕らは割と感謝してるんだべ?)


 本当にこの子達は危険とされていた子たちなのか?という程に私に優しく接してくれている。そんな可愛い可愛い我が子達を順番に撫でながら感謝を伝える。


ガチャン


 ふと扉の方から音がしてそちらを振り向くと一人の女の子がガクガクと震え、膝から崩れ落ちているところだった。その子のアホ毛もブルブルと震えていて庇護欲をそそられる。


「ま、魔獣が…」


「?」


 その子はワナワナと震える指で我が子達を指さした。


「魔獣が檻から脱走しよるっ!」






 一度魔獣たちに檻の中に戻ってもらい、その女の子をなんとか落ち着かせて椅子に座らせる。その子はどうやらここの飼育係のようでこの子たちの食事を持ってきたところだったようだ。


「ご、ごめんね。でも一応この子達はあなたに危害を加えるようなことはないと思うから安心してほしいな」


「い、いえ!魔王様から人間がここの魔獣をテイムしたとは聞いてたので…」


 その子は『まぁ、まさか檻を全部開けてるとは思いませんでしたけどね…』とつぶやいて、深呼吸した。本当にごめんね……。


「あ、改めまして…ウチはアルマと申します!は、羽は結構小さいんやけど、一応鳥人やね…」


 アルマは呼吸を整えて顔をあげ、自己紹介した。アルマとはおそらく同年代くらいなのか身長は私より高いが、若々しく元気だ。短い栗色の髪をおさげにしており、動く度に跳ねるおさげとアホ毛が可愛らしい。全体的に雀のような印象で少し訛っている様子がまた可愛い。


「私は相田由美です。ね、お互いタメで話さない?」


「は、はい!…じゃなくて、うん!」


 アルマは『友達や…!』と静かにはしゃいでおり、私もこっちに来て初めてのちゃんとした友達に喜ばしい限りだ。今までは友達といって良いのか怪しい人たちばかりだったからね…。


「あのね、アルマ。この子たち、ちょっと癖アリではあるんだけどいい子たちなんだよ」


 アルマには変な誤解をされたくはないので誤解を解くためにもアルマに魔獣たちの印象を変えてもらおうと説得してみる。


「ま、魔獣たちは……唸ったりしてやっぱり怖いやん…」


「大丈夫だよ。少なくとも私がテイムしてるわけだし、私の友達をこの子達が襲うわけがないよ」


「う、うぅ…そうかもじゃけど」


「ほら!行動しなきゃ変わんないよっ!」


 そう言って私はアルマを立たせて、背中を押した。アルマの背中には小さな羽が生えていてピコピコと動いているのがまた可愛らしい。


 先程まで私の足もとにいた猫の魔獣の檻を開け、そこの中にアルマを押し入れる。アルマはドでかい猫にビビり散らかしているようで小刻みに震えている。猫ちゃんも完全にアルマのことを下に見てるし、舐められ過ぎじゃない?


「や、やっぱり無理やぁ!」


 アルマはついに我慢できなくなったのか、私に抱きついてガクブルと震え、離れなくなった。


 無理させ過ぎはよろしくない。アルマのメンタルのことも考えてここは中断しよう。


 ビビって動けなくなったアルマをなだめつつ、檻の外に出て再び席についた。


「よしよし、頑張ったね〜」


「うぅ……まじゅうこわい…」


 魔獣克服にはとてつもなく時間がかかりそうだなぁ……。

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