昼の宴
朝の三の刻、出発した。
メイド3人は村でも目立つ美人でも有り、魔術師向けの厳しい拘束に、変な気を起こす村人が一人居たら人生が狂う。
そう考え、鹵獲した馬車の一台に乗せ、同行させる事とした。
暗器は全て奪っており、マジックバッグも此方の手の内だ。
同行する馬車の中、時折様子見がてら話し掛けると、ゆっくりとだが打ち解けていく事が出来た。
命令書を見た事を話し、今後の要望と身の上話を訊く。
話す様な話題も特段有るわけでもなく、気まずい沈黙を避ける意識分だけ口が軽くなった様だ。
ノイエア、ミアン、メグ、其々ヴォインの貴族学院の卒業生で、ヴォインの貴族社会を少しだけだが知ることが出来、収穫として上々だ。
学校の話を訊くと、フィンが興味深そうに質問する。
錬金術基礎等もやっていたようで、小学校の理科レベルの実験の話を聞きつつ聞き流す。
因みに、彼女らはヴォインの腐敗の被害者でもあるようで、特に「子爵家」に対して思うところが有るように聞こえる言い回しが数度見られ、元々村を預かる領主だったノイエアの家は、孤立無援の中半年間も嘆願を放置され、領主に話しが伝わらない中ひっそりと没落したらしい。
二人はそこの侍女だったらしく、ミアンは乳母兄弟として長く付き従っているという。
ヴォインには3つの子爵家がそれぞれ違う領域で幅を利かせており、領の予算審議や軍の救援の決済審議に話しを上げるかどうかはその3子爵家が全て関わっており、3子爵家から不興や猜疑心、邪魔と思われると永くないらしい。
――これはかなり有意義な情報だ。
その話しにアストリッドが食いつき、「バームズ子爵家はそのままお咎め無しなの?」「離散した家の兄弟達はどうなったの?」と、息も荒く聞いていく。
貴族同士の政治的やり取りは基本的に公開の「会議の場」というより、1対1での密室で行われる事が多く、その分権限者がやりたい放題できる。
他の人はどんな嘆願があり、審議への取捨選択の判断が妥当かどうかを考える機会さえ得られない。
随分と人命を弄ぶもんだ。
巻き添えに遭った村人達は、そのまま魔物達の餌食となるしか無かったという話しに拳に熱が籠もる。
冒険者への依頼に関してもその「3子爵家」が握り潰せるらしく、そいつ等の都合で領主の耳に入るか入らないか決まるらしい。
然しながら、皆、北方語の上達が早い。
基礎的な単語を覚えてからの実践が効果的であることを如実に示す実例と言えた。
ヌム村からエレノアさんの元へ連れて行く面識があると言っていた女の子は、アイシャちゃんという名前だった。
背中に傷を負っていたが、とても可愛らしい子で、魔物に襲われた時にエレノアに助けられ、それ以来彼女に毎年お礼の品を届けたり、時々会いに行っているらしい。
エレノアさんの方も時々村に来るようになり、村の守り神の様に魔物から守っているという話しだった。
最初は牙人族もエレノアさんの敵だった。
しかし、数年前から完全に平定され、今では牙人族からは神の如く崇められているらしい。
アイシャちゃんは13歳、俺の一つ上だ。
年も近く、フィンと直ぐに意気投合した。
「フィンさんはとても愛らしい笑顔で笑うのね、……羨ましいわ。」
それを面と向かって言うという……なんという豪胆。
それを聞いて誇らしげなミランダ。
フィンは狼狽する程照れている。
「あお、……うん、そう?……ハハ、ありがとう。」
ニンマリ、と言う感じのはにかんだ笑みを作って笑うスッキリとした声がとても爽やかで、俺としては弄らないわけには行かない。
「フィンよぉ。 お前可愛いぜぇ~。 俺の女になんねぇかぁ?」
と、俺も悪ノリしてからかう。
俺を真剣に観察しているポプランのつぶらな視線が痛い。
後でちゃんとフィンは男であることを言っといた方が良いかも知れん。
「うっわ、キんモッ!」
エニスに後ろからスパンと叩かれ、俺も「アイタ!」「エニスゥ、俺はお前の事も待ってるぜぇ。」と、返し、その場を和ませる。
フィンは黙って両手の爪を見つめていた。
「今爪伸びてないからまた今度にする。」
「嫌ぁねぇ。」
と、アイシャちゃんと共に冷ややかに返される。
エニスを見ると、既にデニス達と会話が始まり、笑いが聞こえる。
隣の馬車が静かなのが印象的だが、保護観察官のカロがペーターを監視している状況が目に浮かぶ。
――まあ、こういうやり取りも楽しいんだけどな。
俺は水瓶から水を出し、竹コップで一気に飲み込んだ。
エミーナさんの腕輪がまたピリピリした。
痛いというより、こそばゆい感じ……だ。
……
森を進む。
辛うじて馬車が通れる道がある。
案内のままに進むと、所々で鳥系の魔物、狼、大きな甲虫や蛾の魔物が現れる。
フィンとペーターを中心に牽制し、迫って来るものだけを相手にする。
俺とアストリッドで殆の敵を狩り、一部をフィンとドラコさんが相手の死角を突いて斃した。
甲虫の足や甲を剥ぎ取る等数分、進む馬車はそれ程穂を緩めることなしに進む。
途中から俺達だけ馬に直接騎乗し、先行護衛の形で進む。
ほえ~という顔のポプランの視線や、ノイエア、メグさん達の視線が心地よい。
ミアンさんはペーターとは別の馬車ということに安心し、小声で周囲との会話を楽しんでいる。
1度休憩を入れ、沢の水に気持ちを醒ます。
靴で蒸れた足や、虫除けに濡れた腕を布で拭き、体を伸ばして水を飲む。
地図を片手に案内と打ち合わせ、コースのズレを修正する。
ポプランを俺の腰の前に座らせ、周囲を警戒してみろと教えながら進む。
始めての騎乗に、体が強張りガチガチだ。
茂みが深いが、木々の間が広く、馬車であれば難なく進める。
しかし、警戒した牙人族に奇襲されないか若干怖い。
御者席に、俺とフィンだけでなく、アイシャちゃんとその父親にも座って貰っている。
面識の有る者が居ることが解れば、敵対行動を予防できるハズとの申し出からだ。
◆ ◇ ◆ ◇
木々に、独特な印のような傷がついている場所が続いている。
Φのような印だ。
「縄張りに入ったようですね。 そろそろです。」
木の傷でマーキングするという訳か。
村に帰ったらそういうのを取り入れても良いかもと、中二病が顔を出す。
木漏れ日も少なくなり、森が深まったことを嫌が応にも認知すること数十分。
…………………
不意にフィイイイイイイィィィイ と、笛が響く……
ズザザッ! と、木の上から飛び降りる影が数人……まさに犬のような外見の二足歩行の牙人族たちが近付いて来る。
囲むような突然の遭遇に、ポプランが服の裾を強く握る。
――顔立ちは、テリア系の、とても賢そうな顔をしている。
「エレノアさんに会いに来ました。 此方をどうぞ。」
すかさず用意していた蜂蜜酒を差し出す。
「あなた方には此方を。」
と、買ってきた魚の漬物と干物を出す。
一つふたを開けて見せると香気が風に舞うのが解る。
それを嗅いだ数人が、上昇気流が発生するくらい尻尾を振っている。
――この光景は顔が綻ぶ。
尻尾だけでなく、顔も表情豊かで、にこにこが伝わる。
ただ、隊長と思しき牙人族の男は此方を油断なく此方を見ている。
にこやかだが、冷ややかな光が目に宿り、アイシャちゃんを見やると警戒の色が数段下がる。
だが、その冷静な表情から、目端が利くのが判る。
「エレノア様は今少しお休みですが、案内します、どうぞ後ろに続き下さい。」
会話ができた事に安心する。
声帯が違うから、と心配していたのだ。
フリーパスで信用してくれたのは、アイシャちゃんが居るからだろう。
数人のが牙人族が素早く奥の方へ走るのが見える。
先触れとしての報せを里に持ち帰るのだろうか。
◆ ◇ ◆ ◇
進むと、緑の家が沢山建っている円形の集落が見える。
広場では肉が焼かれ、テーブルに沢山の葉っぱが置かれ、その上にまた野菜の様な葉や、果物が置かれている。
穏やかな空気だ。
牧歌的で、楽しそうにも見える。
集落の真ん中にある広場の台の上で、牙人族の一人がみんな見てみろと壺を一つ開ける。
おお、という感じで先頭の3人がのけぞった。
みな尻尾を振っている。
壺の中からは泡が出ており、シュワシュワいっている。
のけぞった3人はまた顔を近づけ、またのけぞった。 尻尾が忙しい。 尻尾の近くの葉が舞う。
「これは良いものを!」
牙人族たちは機嫌が良くなっている。
匂いだけでも楽しめている様だ。
暫くこのままがいいだろうか。
アイシャちゃんにもう一つ壺を渡す。
とことこと机の上に置いて、どうぞ、とやって戻ってきた。
おお、と、またざわめいている。
何度も顔を近づけては、その度に仰け反っている。
道の脇には小川が流れ、暖かい森の空気を涼しげに冷やし、細かく分かれた水路は家々に続いていくのが見える。
俺達の前には果物が並び、彼らには魚が分けられる。
焼かれた肉が運ばれ、また葉の上の彩りが増えていく。
そして、小屋の一つからなにやら別の声が聞こえてきた。
「臭い!」
細身ながらスラリとした長身に、裾が長い白銀の錦で作られた綺麗なチャイナドレス。
ボトムスにはゆったりとして裾がきゅっと締まっている、上下同色のズボンを着た、色黒、黒髪の細身の女性。 長髪のストレートがしっとりと美しい。
キリリとした眉の下から覗くまつげの長い大きな瞳が忙しなく俺達を観察し、フィンを見ると口がホゥと動く。
ズイと出るペーターからは目を逸らし、俺を見、フラン、アストリッドを見、ドラコさんを見た。
一目で解った。
この人がエレノアさんだろう。
エレノアさんは「う」という顔で机から距離を取っている。
牙人族達の耳がひたっと一斉に寝た。
尻尾も下がっている。
俺が一旦匂いを飛ばす。 俺の風魔法の少ない活躍チャンスだ。
エレノアさんは少し楽になったようで、フルーツを手に取った。
ひと際大きなフルーツの山があったが、エレノアさんの為のものだった。
「匂い、感謝する。」
と言いながら、二日酔いのおじいちゃんが良くするような感じで……口の両側を思いっきり下げて下を見る表情でゲップをしてから席に着いた。
牙人族達はいそいそと魚類を移動し始める。
スパスパと行動が早い。
魚の漬物たちは少し遠目の小屋の中に消えていった。
「失礼。 いや、昨日軽く飲んでしまってな。」
リンゴのような果物を齧りながら喋り始めた。
パキリ、と、気持ちの良い音と爽やかな香気が広がる。
「どうした? アイシャまで連れて。 斥候の者達からの報告では要件までは聞いてない、とな。」
予め決めていた通り、カロが話始める。
何となくだが、元女性軍人同士、恐らく相性は良いだろうと思ったのだ。
「南方のウルの街の守備隊、元中隊長、カロリナ・フォン・ライプニッツと申します。
お初にお目にかかります。
この度の経緯と、今回お伺いした目的をお話ししますが、先に目的を簡単に言います。
貴方とお近づきになりたいと思っております。」
アストリッドが翻訳する。
ふむ、と息を吐きながら。
「そういう者は多いが、ウチのものに良くしてくれた様だ。 話位は聞こう。
それに、蜂蜜酒か。 有難く戴こう。 私はこれに目が無くてねぇ。
この世捨て人に、何を期待するか、まあ、まずは聞こうか。」
キリっとした表情が和らぎ、ふんわりとした笑顔になった。
「では、経緯から。」
アイシャの父親が替わる。
「昨日の夜、村が賊に襲われ、その背後にはヴォインの貴族が居る様です。
一味をこの方たちと捕え、一部を連れてきております。
それと、冒険者ギルドからこのような依頼が出ていると、この方たちが知らせてくれました。」
エレノアさんは、ん? と、目を見開き、「牙人族に襲われている村の救援依頼」のギルドの依頼書を見る。
「へぇ~、陰謀? こういうのって直接偉いのに聞くのが早いよね。」
ちょっとカロが口を閉じた、続く言葉を言いあぐねているのか。
俺も逡巡する。
俺達が立ち会わない状況での直接対話は……
直接領主と話されると領主の話術、仕掛けや交渉でどう転ぶか微妙な気もする。
彼らとて無策で事を始めてもいないだろうし、アホでも無いだろう。
切り札と思しき偽村長は抑えたが、他にも札は持っているだろう。
独立自治権を公式に認める、周辺村を無税にし、好きに取り立てて良い、爵位を与える、等。
この沈黙の間に、俺がフォローに入る。
「話がそこで終わるならそうですね。 ですが、今回の話は色々と経緯があります。」
オリヴァーの罪状を書いた木札を出す。
冒険者ギルドで婦女暴行、誘拐、暴行、殺人未遂、家名を喚き散らして股間を晒しながら大暴れ……の奴だ。
「これがあったのが10日ほど前です。」
そして、伯爵家のサイン入りの直筆の罪状書き、謝罪文に3人分の署名付きのものを出す。
エレノアさんはプッと吹いた。
で、最後に、「牙人族に襲われている村の救援依頼」の正式署名付きの依頼書を差し出す。
エレノアさんは、ああなるほどという顔になり、
次の瞬間呆れて溜息を付き、
最後に顎を撫でる。
「へぇ~。 随分だねぇ。 まさしくお貴族様だねぇ~。
冒険者同士で潰し合えってか。 領主は此処に来る途中でも何か仕掛けて来そうな場面だが。」
「ええ、アイシャちゃん達とは襲撃を受けたその村で。」
と、驚きつつ呆れつつ、どうしようか考えている様だ。
「以前に色々あったと聞きました。
貴族がエレノアさんを捕獲する計画を立てて、村長が協力を拒んだと、そういう話が有ったと聞いています。」
それを聞き、大きく息を吐いて上を見る。
間を置いて、
「ほう、聞いてなかったが……そんなことが有ったのか。
その他にも色々あるぞ、街に行く度に士官がどうとか、取り立ててやるとか。
私が元々何処の出かも考えていないと見える。」
エレノアさんは、もともと仕えていた国を騎馬民族に滅ぼされている訳で、偉そうに「士官させてやる」という言動は、正直俺も理解が出来ない。
言われた本人は、実際に大切な人達も失った訳だ。
腹が立たないほうがおかしいだろう。
「昨日我々を歓待したのはこれから連れてくる偽村長でした。
まあ、出されたのは毒入りの生野菜でしたけど。」
「偽村長、か。 まあ、この依頼自体潰し合うように仕向ける為の物だろう。
君等も災難だな。 S級。 まだ成人前でS級ってのも凄いが、その歳で貴族に命を狙われるのも凄いな。
で、村長だが、本物はヴォインに行っている?」
「はい。 家族ごとです。 村には全員いませんでした。」
「で、その村長は前に私を庇い、貴族と揉めた、と。」
エレノアさんが此方の言わんとすることを言った。
後ろの小屋からは牙人族のウウェ~イが聞こえた。
小屋で魚を楽しんでいる様だ。
間が良いのか悪いのか。
カロが口を挟んだ。
「速く動きたいと思っています。 村長は今、安全な状況とは言い難いです。
同行戴けますか? 影での協力でも良いですが。」
それを聞いたエレノアさんの気が高まる。
スッと立ち、葉で口を拭った。
「見くびらないで戴こう。 急ぐぞ。 同行する。」
意外な事に、シンプルに同行の話になったのは僥倖だった。
色々考え、命令書やS級になった経緯なんかも出そうとしていたが一旦不要と見て良いだろう。
時間が有れば馬車の中で見せれば良い。
◆ ◇ ◆ ◇
少し待つと、エレノアさんは身を清め、鎧に着替えて現れる。
侍従と思しき、独特の衣装を身に着けた人間の男女数名が馬を引き、剣等の装備を運ぶ。
綺麗な白に銀縁の革に金属の補強覆っている鎧を身に着けた出で立ちは凛々しく、とても良く似合う。
関節も守られているデザインで、軽く、動きやすそうだ。
ランスで突かれても体を捻れば無傷で切り抜けられる、そんな設計思想が外見からも伝わる。
――対騎馬民族用の鎧だろうか。
そして、引き締めた顔は、美丈夫だった。
先ほど迄の酔っぱらいのオヤジの風格は消えていた。
「街の様子を見てきますわね。」
カロとドラコさんはワイバーンで偵察する。
予てよりの打ち合わせで一旦森の入口で待ち合わせる事となっている。
それを伝えると、ヴォインと周辺を見次第、軍が動いているなら牙人族も出す、という申し出に俺達も少なからず拳を固くする。
――戦争?
突然のリアリティの無い話しに胸が高鳴る……が、村で既に襲われているわけだ。
もう既に後戻りなど出来る状況でも無く、覚悟を決める他無いのは容易に理解できる。
想像以上にエレノアさんの気が強い事や荒事に慣れている事、領主にも手が出せない存在で有ることを感じ取り、エストリックが憧れの表情をし出す。
村長の状況が見えるかは微妙だが、本格的な戦いになるかは街の外から物資隊の列等を見れば判るだろう。
逆に、今動いていないなら我々の方が軍が動くよりも先に領主邸に辿り着ける事になる。
そうなればそのまま話し合いをすれば良い。
最悪の場合でも、剣を突きつけ合うだけだ。
最初にアイシャちゃんの村の守りの話をする。
無事な者の安全確保は割と優先事項だ。
「経緯から、アイシャちゃんの村が襲われる可能性があります。
我々にはそのこ守備の補助までは手が回りませんが……。」
エレノアさんは事も無げだ。
「ああ、そんなことか。 牙達がやってくれる、任せるが良い。」
「50人程ならすぐ出せる。 行きましょう。」
牙人族の若手達が胸を張る。
細めの竹や、細い木を尖らせただけの棒を数十本担いで走る様だ。
束で背中に持っている。
一撃離脱スタイルを思わせる軽装と牙人族の身軽な動きに、敵対したなら相当に難敵だろうと俺達も唸る。
近隣村の後顧の憂いは目途が立った。
続きは馬車の中で詰める。
捕虜たちと入れ替わりにエレノアさんも俺達の馬車に入った。
積載量の都合だ。
メイド達以外の捕虜達は「ひい」、と言って小屋に連れて行かれている。
丈夫そうな枷を持った牙人族が後に続く。
……ああ、これから奴隷にされるな、と、何となく察した。
彼らも察したのか、使い込まれた枷を見て、目が死んだ。
この村で牙人族に囲まれていれば少なくとも害は無いだろう。
そこに並行し、エレノアさんの馬も馬車に繋がれ引かれていく――
「君らも戦えると思っていいな?
オリヴァーとかいう領主の息子を軽く捻ったんだろ?
それに、村でも立ち回ったのだ。 お前は器用そうだしな。」
風魔法を褒められたのか。
悪い気はしない。
「いつも必死です。 敵に遅れは取らないかと思いますが。」
アイシャさんの父親から、いいや、大したものでしたよと説明が入る。
「謙遜はいい。 続きを話そうか。」
街を見に行った二人のワイバーンの戻りを、森の出口で待ち合わせる旨を伝える。
領主側の軍の動きの見所勘所を話し合いつつ合意を得、進む。
大群を集めるとなると、ヴォインから放射状に早馬やワイバーンが飛ぶらしい。
その有無を最優先、陣を形成しているなら領都潜入作戦に切り替える方策……
――普段から色々考えてる人のアイデアじゃね?
囲まれた場合、狭い場所での挟撃の場合、密室を此方が襲う場合……
其々、俺達の戦い方の大枠を話す。
唸りつつ、合せ方を考え、対応策をイメージするエレノアさんも、楽しそうな表情で話しを促す。
こうされたらどうする? の問答をフィンやアストリッド、ペーターを交えて盛り上がる。
連なり、馬車は進んでいく。
遠くで獣が鳴き声を上げ、ガサガサと音を立てて去っていく。
先行する牙人族達が時折振り返り、道の安全を知らせる。
行軍はスムーズに進んでいった。
こんなにとっつきにくい作品なのに読んで頂き、誠にありがとうございます。
面白い、続きが気になると思っていただけましたら
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