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挿絵(By みてみん)

 深夜、一の刻頃、黒づくめの、あからさまに怪しい密偵が来た。

 村人達で村長の家で野営する算段で今夜の警戒に当たっていた。

 村長の家に入っていく人影にその中の何人かが反応し、羽交い絞めにした。


 草原の中程、俺、ペーター、エストリックが詰めていたところに馬で知らせが来、呼ばれて俺だけで駆け付ける。

 斥候所に一人だけはまずいという判断だ、連絡が入れば誰も居ない場面は困る。


 俺達は草原を隔てた500m程森側で、馬車を中心に野営している。

 ワイバーンが馬車の上で羽を休め、周囲を気怠気に警戒している。

 村人達が走り回る松明の明りの方が気になるようで、時折興味深気に楽しそうな表情で目を向けて口をモグモグしている。


 ウチに住み着いたワイバーンからすると、「火=美味しい」的な、楽しいイメージなのかも知れない。


 細身の身のこなしが良い男が後ろ手に縛られ、俺達に向き合う。


「エンリケに会わせろ、爆発した様だがどうなっている?」


 なるほど。


 偽村長の名前はエンリケだった。

 領主側の隠密部隊の斥候か連絡員といったところだろう。

 このまま口八丁で無力化するのが一番楽だ。


「本日雇い主が来ているので、館内は捕縛した状態で動いて下さい。

 エンリケと会わせますので、一旦捕縛します。」

「ふっ」


 男は大人しく捕縛されているが、余裕が気になるので、念の為魔法使い向けの縛りをする。

 両膝もがっちり固め、早く動けないように固定する。

 マジックバッグを受け取ろうと手を出すと、それにも素直に応じる。


 首と腰を繋いだ縄で引き、エンリケの場所まで連れて行く。

 そして、ご対面の場面。

 小屋の片隅で縛られているエンリケを見て、密偵の男は唖然としている。


「ま、まさか、捕まっていたのか? 軽食は出さなかったのか?」


 密偵を見て、偽村長も更にがっくりと項垂れる。


「全部やりましたよ。 ……全部対策されました。

 爆発させるしかありませんでしたよ――」

「おま、おまっ、おまっ……ええ?! どうっ!? ええ? あっ、ええ?!」


「全滅ですよ全滅――」

「ええ? ああ! ええ? う……うう……あがぁぁああ! 貴様ぁ!」


 と、藻掻いた瞬間首が締まる。


「あああああああぁぁぁぁあああああ”あ”!」


 絶対的な優位だと確信していたんだろうな。


 これ程の人数を掛けているところから察するに、多分伯爵だけがいろいろ綿密に画策して、末端が

「いやいや、ぽっと出の新人冒険者にそこまでやんないで良いですよ」

 なノリでやってるんだろう。


 大体判った。


 しかし、俺達の背格好や顔も知らされてなかったのか?

 俺自由に歩いてるぞ?


 しかし、深夜の村への侵入者に、村人達のテンションが一気に上がった。

 何かあったら偽村長の腹を切り裂いて意識あるままはらわたを獣に食わせる、とか物騒なことを言っているのが聞こえる。

 血の気の多い村の様だ。


 魔物の森に、頼もしい。



 ◆ ◇ ◆ ◇



 その1時間後、「村人の一人が松明の明かりをヴォインの方角で見た」との報告が入る。


 眠い頭に目を凝らす……馬車が8台程、もう大分近い。

 1台の馬車が止まり、中からなにやら降りてきているのがシルエットで見える。


 午前4時~5時といった頃の黒青い光の中……薄っすらと見える人影……

 1台の馬車から降りてくるのは大体6人程。


 ――50人程居るってことか……


 青く白み始めている空の下、村人は身を引くして櫓の影に槍を構える。


「ほ……本当に来やがった……。」


 武者震いをする伝令の見開く目には、ランランと恐怖の光が宿る。

 相手の強さが解らない状況なのだ、ある程度恐怖を感じて当然と言える。


「盗賊狩りみたいなものだ! そうだろう?! ウチは連戦全勝だ!」


 俺達も居た中間連絡地点に詰めていた村側の代表、あの最初に会った恰幅の良い村人が軽く拳を前に出す。

 それに士気を取り戻し、落ち着いた表情で子細を説明する。


 村から500m程の距離のこの場所では、風に乗る村の声が聞こえてくる。

 口々に、エレノアさん、牙族、と言っている。

 大恩を思い出しているのだろう。



 ◆ ◇ ◆ ◇



 急ぎ、身を低くしたまま村と馬車の中間地点から、皆が野営する馬車へ戻り、馬車近くの皆を起こす。


 俺達が滞在している馬車は村の外の森手前の草原。

 襲撃者達の中心にある馬車は、街道を少し外れた森寄り。


 丁度襲撃者が村に向かう途中の横っ腹を俺達が突ける位置関係だが……


「敵が村に進む脇迄近付いておいて、一旦やり過ごす。

 その後、そいつらの背後を突く。 馬車も逃さず、ワイバーンで足止めして、鹵獲しよう。」


 ――村人達と、挟撃する作戦だ。


 ヴォインへの伝令を防ぐのだ。

 そうすれば以降は此方への追撃を諦めると踏んだ。

 エレノアさんと合流したあとの俺達への攻撃は、ヴォインとしても避けたいハズ。


 意図を汲んだドラコさんとカロが早々とワイバーンに乗ると、空気を察したワイバーンの目付きが締まる。

 ドラコさんにも「お願いします」と頭を下げ、馬車から武器を手繰り寄せる。

 夜のうちに馬車は遠目には見えぬように繁み脇に隠してある。


 馬達は草を食ませ、繁み脇を満喫させる。

 孤児達3人が真剣な顔で俺達を見送る。

 騒動の最中、言いつけ通り3人は馬車の中に走り、息を潜めて待っていた。

 今回も心配させるが仕方ない。


 ポプランが泣きそうな目で短剣とクロスボウを馬車に持ち込む。

 アリーヤちゃんが受け取ると、毛布の中に隠した。

 ミランダちゃんが、御者席の近くに隠れるのが見える。

 念の為、と、もう一つ追加でクロスボウを渡すと、大事そうに抱き、泣きそうな目でしっかりと外を見つめていた。


 村に置いてきたフランとアストリッドは、戦況に合わせて戦うように言ってある。

 櫓を防衛戦に、抜かれたら馬車に戻るように馬も渡した。

 今頃は小屋脇で様子を伺っているはずだ。


 俺たちの戦い方はいつもの通り……


  卑怯な作戦で相手の目鼻を潰す。

  その後、心をへし折る。

  最後に足を潰す。


 ――ワーグナーが似合うような戦い方だとは言わないさ。


 ワイバーン組は一旦森の上に飛び立ち、山に紛れて移動する。

 薄暗い中ではこの辺の山の深い緑に、ワイバーンが溶け込んで見えない。

 敵方の位置を考え、山をバックに空中を忍び寄る。


 ストレッチ代わりに肩をぐるぐる回し、皆、籠手のクロスボウを準備する。

 馬を馬車から外し、一人一人跨る。

 暗闇に紛れ、伏撃位置迄草原を音もなく進んで行く……

こんなにとっつきにくい作品なのに読んで頂き、誠にありがとうございます。

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