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ペーターの縮地

 メイド達の中に魔術師が居る可能性がほぼ確定になった訳で――


 魔法を使えない様にする縛り方に変える事にする。


 ――魔術は、通常掌、又は杖等の媒介からしか発動出来ない。


 両手を合せた形に組ませ、指を外せないように縛ることで、発動元となる手を封じる。

 それだけでは片手を破壊することで縄抜け出来るので、掌はヘソの下にぴったりと密着させて縛るのだ。


 そうすると、魔法を使った瞬間に丹田が破壊され、苦しみ抜いた末に死ぬ事になる。


 藁で作った縄では縄抜けの心配が有る為、蔓を使ってガッチリと幾重にも縛る。

 面倒な縛り方だが、魔導具等も無い今、農村に伝わる方法で凌ぐしか無い。

 そのうえで、両肘を首経由で繋ぐ事で、肘を振るように藻掻くと首が締まるようにする。


 こうしておくと早くは走れなく出来る。 無理に走るとバランスを崩し、直ぐに転ぶ。


 ひとまず話を進める為、話を聞きに村人たちに向き合う。


 村長は突然呼び出されてヴォインの街に行っており、代わりに来ていた偽の村長について、村民は知らされていなかった。

 屯っていたのは庭師か何かだと思っていたようで、実際彼らは木を数本植えていたらしい。

 俺たちはギルドの冒険者証と依頼書を見せ、依頼内容を伝えた。


 村人が4人程集まってきている。

 最初の男が他の3人に状況と経緯を伝えた。

 その瞬間、傍目に分かる位空気が変わった。


「エレノアさんを? 牙族が襲ってきただと? この村に?」


 村人は混乱している、エレノアさんには何度も村を救って貰っている、どういうことだと。


 偽村長にカマを掛けたのも、その後の判断も正解だったようだ。

 他の3人が信じておらず、俺は冒険者証とギルドの依頼書を見せた。


「本当、なのだな。」

「村長が不在の時に、タイミングよくこんな依頼が来るもんなんだな。」


 俺が経緯について補足する。


「村長は不在ですか。 先ほど村長を名乗る男に案内されたのですが。

 言動がおかしかったので捕縛してあります。 見てください。」


 できるだけ平たい言葉で言う。

 村長の家の一画で座り込んで下を向く偽村長。

 もうほぼ取り乱している、ぶつぶつ独り言を言いながら汗でびっしょりだ。


 そこへ入っていく、ドラコさんと村人達。


 ……偽村長とメイド達の長い夜は、まだ始まったばかりだった。



 ◆ ◇ ◆ ◇



 ドラコさん達が偽村長の方に行っている間に俺達は俺達の事をしようと動く。

 俺、フィン、ペーター、エストリックでメイド達を閉じ込めた小屋に入る。

 フランには、「魔術師向けの縛り方に変えるから」という名目で壁を開けて貰い、その奥のドアに入る。


 ドアを開けながら、エストリックが血走った目で俺を見ると、意味ありげに大きく頷いた。

 手には縛る為の蔓が握られている。

 横顔から、フィンの深い怒りが伝わってきた。 どうなることやら、暴走が少し怖い……



 ……



 メイド3人達にスカートをたくし上げさせると、暗器の入れ物が太ももとふくらはぎに付けられていた。

 3人共暗器の鞘が内股と尻下にあり、吹き矢と短剣が入っていた。

 ふくらはぎの暗器は、其々違い、投げナイフ、華を象ったストロー、長針、吹き矢、と、得意な物を選んでセットしている様だ。


「僕らは貴方方の国の為に、正式な依頼の為に村を救いに来たはずなんですが。

 なのに、なぜこんなに何度も殺されかけないといけないのでしょう?」


 と、フィンが怒りの籠もった声で言い、

 眼の前でマジックバッグから取り出したオークの頭を水爆破で爆発させてからと言うもの、メイド達は完全に戦意を削がれ、抵抗の兆しも消えた。

 因みに、オークの脳みそは珍味で知られ、熱烈な愛好家が居る。 ぶっちゃけ勿体ない。


 ――水爆破…… フィンは、北斗神拳風の技が使える。


 俺の訓練に付き合い、結構な分量のオーバーワークを続けた結果なのだが……

 魔力制御を高めた、いや、高めすぎた結果、生物の体内の水分を魔力で過感応させ、爆発させることが出来るようになったのだ。

 直接触れなくてはならないという、魔術師としては重過ぎる制約があるが、触って敵の体内で直接発動させるので、当然、防御不能だ。


 その結果、フィンがその気になれば触られた箇所は秘孔風に爆発する。

 つまり、敵対者は、フィンに触られた時点で部位欠損が確定する。

 服、厚さ数mm程の薄い鎧程度であれば貫通可能であるのも恐ろしい。


 まあ、刃物を振り回す相手に直接手で触れるのは、剣や槍での斬撃、刺突の数十倍難しいので、そこまで強敵を簡単に潰せるような技ではないし、拳銃より強い物では全く無いのだが。


 ペーターがズイと、前に出る。


「パンティとスカートを、お脱ぎなサイ!」


 たくし上げさせたスカートをそのまま脱ぐように言うと、おずおずと脱ぎ始める。

 目を瞑り、顔を背けながら内股で脱ぐ様は中々にエロい。

 其々の表情と仕草からは、ある程度の育ちの良さが漂う。


 黒いスカートと、白い布達が足元にファサリと落ちる。

 脱ぎ終わると2人が両手で顔を覆い、一人は呆然と下を見、股間を隠す。


「次は、上半身。 前をはだけなサイ!」

「う……うう……」

「ひっ……」


 おずおず……顔を背け、ボタンを外す。

 白いシャツの前が少しづつはだけていき、胸の止め布が露わになっていく。

 街の一般人とは違い、彼女らは柔らかそうな布のスポーツブラで胸を隠しているが、脇の下の暗器を吊るす為の物だったらしい。


 脇の下に吊られた箱はタバコ入れ程のサイズで、左側の箱には吹き矢、右側には投擲用の小型ナイフで、その脇に小さな試験管の様な磁器で作られた壷が4つ入っている。

 毒と解毒剤だろうか。

 毒を使う場合、味方同士の事故の可能性がある為、マトモな組織であれば大抵解毒剤もセットで携帯する。


「何方が毒だ? もう片方は解毒剤か? 答えないならお前らで試すが?」


 と、ペーターがキメ声で言う。

 腹からのスッキリした声は、それだけならイケメンだ。


「どうせ、殺すんでしょう?」


 ジト目の子が上目遣いに訊く。

 涙を滲ませた瞳はペーターの一挙手一投足を観察し、感情を読み取ろうと必死に動く。


「必要がなければ、殺さない。 それだけでなく、金儲けが出来るようにしてもいい。

 我々の拠点は食料が余っている。

 ……本音を言うと、敵対等したくない。

 爆発なんてさせないで、我々にとって無害で有る事を示して欲しかった。」


 少し間を置き、続ける。


「そもそも私達が悪人では無いことは解っているでしょう?

 領主から受けた正式な依頼で動いているに過ぎません。

 此方のほうが聞きたいことだらけです。

 なぜ何度も殺されそうにならなくてはならないのでしょう?」


 と、俺が言いながら爆発した部屋の鞄の破片を出し、視線で指す。

 メイドは昏い顔をしながら逡巡し、


「黒い蓋のものが毒で、白蓋の方が解毒剤です。

 毒は遅効性で、翌朝から体調を崩し、3日目に肺が破壊され、個人差がありますがその後1ヶ月以内に死にます。 1週間以内に解毒剤を飲まないと回復しません。」


「さっきの軽食に入れたのは?」


「また別の睡眠薬です。 1日の間、数発殴った程度では起きません。

 死刑囚が焼きごてを当てられてやっと起きたと聞いております。」


 スゲーな、おい。

 なんだその睡眠薬。


「赤いのは、幻覚剤で、風に飛ばして使うものです。 吸うと30分程幻覚が出ます。

 人によって違いますが……視覚にモヤが掛かり、鼻が効かなくなり、相手が早く見え、思考が鈍ります。

 2~3日後遺症で鼻が効かず、知能が低下しますがその後は何もせずとも回復します。」


 なるほど。

 戦術的に使える毒か。

 黒が二本、白が一本、赤が一本入っていた。

 それが人数分あるとなると、上手く使えば役に立ちそうだ。


 先ほどから左端の一人のメイドが説明しているが、説明する口調は淀み無い。

 その子は3人の中で一番口調がはっきりしており、目つきにも知性が濃い。


「此方も……命令で……いえ、あの、隊長のバッグの中に、命令書が入っています。

 執事風の男が隊長でした。 見れば解るはずです。 私達も同じ境遇だったと。」


 という弁明に、ペーターが眉を顰ませ鷹揚にゆっくりと首を左右に振る。

 神父が「ああ、なんと愚かなのでしょう?」と、言うときの表情だ。


「残念だが、やったことの責は受けて貰う。」


 と、キメ声を最後に、ペーターが豹変する。


 ……結論から言うと、俺の知らない一面の発露。

 ペーターは、がっつり目の変態だった。


「身に付けていたァァ! 布ぉぉぉぉぉーーーー!」


 シュバッと着ていた服を脱ぐと、メイド達が着ていたスカートを頭から被り、マントの様に羽織った状態で興奮している。


 本来ウエストのベルトの部位が、ペーターの首にスポりと。

 黒い長目のプリーツスカートが、ペーターの上半身を腰まですっぽりと覆う。


 当然、その中は全裸だ。

 ガッチガチの股間の隆起がヘソに食い込む。


 誇るように腕を組む仁王立ち。

 浅黒い巨根はまだ若々しい。


 それを見ているメイド達は真っ青な顔で見上げる。


「いやぁぁぁあぁぁ!」

「殺してーーー!!」

「くっ……。」


 一人だけ何やら「仕方がないな」という感じを醸し出しているが、なんとも言い難い表情だ。

 一番左側の、さっきから説明していた子だ。


「処女チェーーーック! 全員広げなさーーーーい!

 逆らう人は全員、魚ジジイ行きデーーーース!! 臭いですよぉぉぉ!」


 と、鼻を膨らませたり縮こませたりを繰り返しながら言う。

 ふわぁ~っと広がった後にキュッっと引き締まるのがちょっと面白い。


「広げるのが一番遅かった人は、村人全員を相手にして貰いマーーーーース!!

 その後魚ジジイ行きデーーース!! 当然一生出て来れまセーーーン!! 今日で太陽見納めデーーース!」


 と、言うが早いか3人共がほぼ同時にクパぁした。

 顔を逸らす二人、ジト目でやや無表情、逸らす目元がなんだか恍惚? が一人。


「処女は護らせてアゲマーーーース! 処女は守りなサーーーイ!」


 と言うと、3人共が「え?」という顔をし、一人だけ、暫く考えた顔をした後、遅れて「くぅっ!」と、反応が違う。


「メイドさんA、貴方は、処女ですね?」


 と、一人だけ反応が違う、左端の子の前で言う。


 金髪セミロングで、左の耳元を細い三つ編み、それを纏める薄い紫の細いリボンが首元に垂れている。 金髪によく合う色で、シンプルな出で立ちに華を添えている。

 瞳が綺麗な翠の一番の美人で、どうやら平民では無さそうな雰囲気を纏っている。


 引き締まったスレンダーな体つきは若々しく、間違いなく10代の瑞々しさを至るところに散りばめる。

 真っ赤な顔は、落ち着かず、賢そうなジト目はキョロキョロと泳ぎながら動揺を俺達に見せる。

 ……この状況を、ある程度想定して覚悟していたかのような落ち着きも、その物腰から見て取れた。


 胸のサイズはEカップと言ったところか。

 この国の民族特有の体系では、標準といったところだろうか。


「は……い。」


 と、悔しそうな顔だが、膝を震わせ、真っ赤になった顔をぶんぶんと乱暴に横に振る。

 まっすぐに引き絞られた真一文字の口元に、清楚さが滲む。


「名前をいいなサーーーイ!」


「ノイエア……です。」


 名前を言う瞬間、くぱぁする手の力が入った様に、少し大きめに開いていた。

 どういう訳か、この子、少し……というか、かなり濡れ、肛門に迄汁が垂れている。

 文学少女が妄想で先走っているかのような趣に、不覚にも俺の股間が応えてしまう。


「はぁい、アリガトゥーーー!」


 と、2番目のメイドに向き合う。

 それを見ると、ノイエアちゃんは涙目になりつつも呼吸を荒げ、安心したかの様な表情で脱力する。


 金髪ショートの真面目そうな子で、前髪が綺麗に揃ったショートボブが良く似合う、メガネを外したメガネっ子という感じの子で、青い丸い目がクリクリして泣きそうだ。

 この子も、ペーターとそう違わない歳であることは間違いない。

 痩せ型だが、筋肉がしっかりと付いている。


 胸のサイズはやや小ぶりで、C~Dカップ程だろう。


「貴方はァ、処女じゃないですね?」


「う……処女じゃないとどうなるんですか?」


 縋るような目で見上げる双眸は、涙に濡れ始めて光る。


「それを先に言うと思うんですかぁ? 正直に応えなサーーーーイ!

 あなた達は許されないことをしましターーーー! 償わなくてはなりまセーーーーン!」


 と、メイドさんBの足元からパンティを拾い上げて首に巻く。

 両脇で結ぶタイプの、所謂紐パンがこの国の標準のようだ。


 その行動をフィンが興味深げに見つめ、ゴクリと喉を鳴らした。


「トレビアンヌ! 暖かいデーーース!

 名前ェ!」


「ミアンです…… いっ…… すみません、すみません、ごめんなさい、ごめんなさい! 顔近づけないでぇ!」


 名前を言う瞬間縮地で踏み込んだペーターの顔が股間に近付き、鼻息が掛かる距離に、腰が引ける。


 ――縮地…… それは武技の特殊な踏み込みで、一瞬のうちに間合いを詰める歩法だ。


 両手は開いたまま、奥側の肉の襞を見つめるペーターの目は真剣だ。


「しょ……処女です……。」


 その瞬間、ペーターがクリトリスを摘み上げ、暫く眺めた後、秘部舌を差し込むように触れさせた。

「ん?」という顔をした後一心不乱に舐める。

 それに合わせてミアンちゃんはンフッ、あっ、んぁ……と、息を弾ませる。


 ひとしきり確認したペーターが顔を離すとニタリと笑う。


「アタナ嘘吐きましターーーーーーー! 魚ジジイ確定デーーーース!」


「ああ……あ……」(涙目)


 その一連のやり取りを見たフィンは「?」という佇まいだが、メイド達に対して優位に話を進めるペーターを頼もしげに見つめているのが気になる。


「ですが、もう一度だけチャンスを上げマーーーース! 正直に答えなサーーーーイ!」


「……処女じゃないです。」(唇紫)


 ペーターの手が俺をの方を指し示す。


「よく出来ました。 貴方はヴェルの相手デーーース。 私の方が良ければ、言って下サーーーーイ!」


「あ……ああ……有難うございます!」


 あうあうの状態で言う「有難う御座います」の震え声が、ミアンちゃんの心の声である事は見て取れた。

 涙声に、俺の胸がむず痒い。

 ……喜んで良いんだよな?


 3人目だ。

 向き合う前に薄く涙が頬を伝っている。


「次デーーース。 メイドさんCのアナタ! 名前を言いナサーーーイ!」


「メグ……です……う……うう……。」(涙目)


 濃いめの、茶髪に近い金髪で、綺麗な緑色の瞳をしている。

 一番スレンダーで体の線が美しい人だ。

 繊細そうな目が、今は限界まで見開かれている。


 髪型は肩口迄のボブカットで、頬に髪の毛がまとわりつき、艶めかしい。

 歳にして、俺の少し上位の歳……15歳位だろうか? だが、独特の色気がある。

 胸はデカい。 Fの上を行く、メロンの様な牛パイだ。 爆乳だ。


「アナタ、処女ですね?」


「いやぁぁぁ……。」(頬を伝う涙)


 何かを予感しているのか、絶望の表情で小声が漏れる。


「処女ですね?」


「処女……です。」


 そして、ペーターがバッと、勢い良くターンし此方に向き合う。

 首に装着された腰まで隠す長目のスカートが、ふわぁっとはためき、乳首まで露わになるのが見苦しい。


「フィン君、どっちが良い? 処女が二人居るけど。」


「え? ……え?!」


 フィンは状況も意味も飲み込めていないようだ。

 さっきから、「こういうものなの?」という感じで俺の横で流れを見守っていただけの感じだった。


 この場の空気の中、凛とした無垢の一輪の野花。

 その尊い一輪が……今、風前の灯火だ。


「選んで良いよ。 アタクシ、君の事、好きだから。」


 フィンは2つの意味で飲み込めない。


「え? んあ……え?」


 この異常な空間と、起きてる事、その両方を飲み込めていないフィンには酷な質問だった。


「あー……今日はやめとく? じゃあ、そうだな。 エストリック、アナルで良いよな?」


「……良いです。」


 即答だった。


 と、言った所で外で様子を伺っていたカロが入ってきた。

 ペーターの出で立ちに絶句している。


「……。」


 部屋の気温が10度位下がった気がした。


 この夜のことを、カロリナはその後10年悪夢として思い出す事となり、ヴェルナーに「変な夢を見た」と度々語るようになる。

 人は、現実と夢とを厳密に区別することは、実は、出来なかったりするのだ。

こんなにとっつきにくい作品なのに読んで頂き、誠にありがとうございます。

面白い、続きが気になると思っていただけましたら

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