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騎馬民族の街へ ― 2 ~目で吸ってる~

 ――第二陣。


 北方語を話せるフラン達を連れて、本格的な交易の取っ掛かりを作りに行くという訳で、俺達を含めた馬車で向かうのだ。


 今度は件の羊皮紙地図の赤いバツ印の場所を通る。

 馬車が落ちた崖の上には道が有ってその道はカラベルに続いている。

 その道の途中に、あの地図ではバツ印が書いて有ったのだが、その場所には仕掛けが隠されていた。


 少し前にそこをワイバーンで下見をしたところ、林で数十mが隠れて解らないようになっていたのだが、その林を通り抜けた先には、なんと山脈をショートカットできる抜け道が見つかった。

 林も諜報員達が使えるように、馬車がギリギリ通れるように木々が間引きされており、人通りが無いことで道になっていないが、動線が通っていた。

 これなら山を迂回するよりもかなり近道が出来る。



 ※ 地図

挿絵(By みてみん)



 あの馬車の持ち主の諜報員達について、少しずつ揃うピースに、推測を改める。

 あのナイフの紋章から、彼ら、馬車に乗っていた人達を「カラベルの者」と仮定すると、彼ら諜報部隊はそこを通って騎馬民族国家を経由、その後カラベル国に逃げ帰る算段だったのだろう。

 エズネスの追っ手を撒き、第三国を経由する事で追跡を妨害でき、ヌダガジャンを通ることで、ある程度国家権力を使った人探しも躱せるという算段なのだろう。


 エズネスとヌダガジャンは往年の敵国同士なのだから、外交チャネルを使って交渉するにも、権力で強引な人探しを依頼するのは難しい。

 中々によく考えられた逃走経路に、プロの仕事を垣間見る。


 ペーター、

 フラン、

 アストリッド、

 エニス、

 デニス、

 フィン、

 エストリック、

 俺、で馬車に乗る。

 カロとドラコさんはワイバーンで道案内する計画だ。


 皆もカロやドラコさんの話を訊くうちに楽しみになったようで、今か今かと待ち望む。


 エマちゃんがとても行きたがったが、「まだ危ない」ということで今回はお留守番だ。

 お兄ちゃんばかりいつもズルイと膨れるのがとても可愛い。

 交流ができて熟れてから連れて行くというと、とても不満そうに頷いた。


 先行してワイバーンの二人、カロとドラコさんに街に入っていてもらう。


 さて、何かあったときの撤退プランは重要だ。

 ここで触れておく。


 何かあったら、街か山の麓の森でワイバーン含めた全員で一度合流し、馬車を捨てて馬で逃げる。

 なので人数分の馬を引いていく。


 逃げる途中、山道の細い部位で回頭し、

 ワイバーンで両横から追手を挟撃を掛け、殿(しんがり)する。


 最悪、予備隊としてニールス、ウィル、村の自警団達であの地図のバツの林の場所まで来て、伏せていて貰う。

 伏兵だ。

 退く際には、ニールスもウィルも、ワイバーンに乗ることが出来る。


 ニールスが試行錯誤しながらワイバーンと仲良くなり、ワイバーンも言う事を聞くようになっている。

 立派な戦力に見えるのだが、正式な調教ではない為、実戦で使うには不安はある。

 だが、この場合はアテ(・・)にさせて貰う。


 実際演習してみたが、挙動に不安は無い。


 で、そういう場合にニールス、ウィルに来てもらう合図も規定済みだ。

 狼煙を使う、黄色い煙の出る煙玉と、空中で爆発する火魔法で合図することで決まっている。

 爆発音を拡張する為に、俺も風魔法で参加する予定だ。


 数キロ以上、音を通すのだ、責任重大だ。

 もちろん、予め実験も訓練もしてある。


 一応馬車に食料と蜂蜜酒を売れるほど積んだ。

 売れるか分からないが、共産主義になっていない場所なら、ウルよりももっと高く売れると期待できる。



 ◆ ◇ ◆ ◇



 初めての異民族の都市だ。

 想像していたものと全く違う、美しい街だった。


 崖を通るのに、大体丸1日を要した。

 ウルへの行程の2.5倍程の道程は、山を抜けたその後は草原が続いており、馬の飼葉に困る事もない。

 はむはむと草を食う馬を撫で、数時間おきに休憩し、馬車を引く馬を入れ替え、何人かは馬で先導する。


 任意の時間に休憩を取り、水瓶の水を飲ませた。

 草原がかなり広く、全部で3日の旅程だった。


 また、夜も動けるよう持っていく、先日買った魔道ランプが保険になる。

 夜も安定して進めるのは高位貴族の持てる魔道具を持っている者だけなのだという。

 大抵の事が有っても何とかなるだろうと思いたいが、相手は騎馬民族だ。


「馬では敵わない可能性も考えておいたほうが良い。」


 と考え、その場合の備えに、ワイバーンで上空から追跡を妨害する訓練も何度か済ませている。


 大分掛かりつつも、もう草原を抜けた先はヴォインの街が見える。

 草原の緑に白茶色の土と石の外壁が見え、その入り口の門の脇にバリスタを備えた高い塔が見える。

 時折ワイバーンがその塔の上に降り立ち、遠くを観察しているのが見え、警戒の厳を伺わせる。


 カロとドラコさんは門の手前で降り、一緒に手続きをする。

 一度入った関係で、俺達は「連れ」としてにこやかに迎えられた。

 カロとドラコさんは『冒険者証』を身分証として出しており、ランクはDと書いてある。


「身分証を作っておいたほうが良いわね。 身元不明者となると審査も厳しくなるから。

 今回は前に来たときと同じ人だったから簡単に通してくれたけど次からはわからないわよ。」


 と、教えてくれる。

 子供という事、売るために荷物を持ってきている事等を鑑み、簡単な検査と尋問の後、街の中へ通された。


 街の中はウルと同様、石畳が続き、紺色のシート屋根の店の軒下を抜けて進んでいく。

 ところどころに女の人が目玉が飛び出るような恰好をして歩いている。


 薄手布のノーブラミニスカワンピースの人が多いのだ。

 そして、白人特有の巨乳が多く、歩くとパインパイン左右不規則に揺れるのだ。

 辛うじて乳首が隠れているミニスカワンピでピュアスマイルの活発少女達は物珍しそ言うに俺達を眺め、此方もスマイルで返す。


 ペーターが目を皿の様にして歩いている。

 吸い付かんばかりのかぶりつきだ。

 いや、もう、あれは……


 ――目で吸ってる。


 ああ恥ずかしい。 しかし、あの格好はこの国では大丈夫なのだろうか?


 ――少し屈んだらおこぼれ(・・・・)しないか?


 そんなのを見ながら歩く。

 ペーターは早くも前屈みを繰り返し、うわ言の様に、ありがとうありがとう、と言っていた。


 10分位、ゆっくりと歩いた。


 少し離れた辺りにガラの悪い一角がある。


「あれはなんでしょうね?」

「探索隊の組合? と書いてあるわ。」


 たまたま俺が覚えてなかった単語で、フランが片言の北方語でフォローする。

 これは、アレだろう。

 『冒険者ギルド』だろう。


 いろいろギルドがあるんだろう。

 ウルにも有ったらしいが、あまり考えたことが無かった。

 そういえば、年齢的な問題も有り、今まで関わらなかったなぁという感じだ。


 ――どうしよう、登録するか?


 カロ、ドラコさんはDランクだったが、ニールス兄なんかはどのくらいの強さに当たるんだろう?

 俄に湧いた関心に、俄然興味が湧く。


 異民族、戦力を知っとくのも大きなメリットがある。

 それに、門の所でのチェックにも身分証は有ったほうが良いとさっき言われたばかりだ。

 後でカロたちと合流してから相談だ。


 まずは宿屋に馬車を預けたい。



 ◆ ◇ ◆ ◇



 宿屋は普通よりも奥まったところにあった。

 門から50mくらいの場所を曲がり、数件目だ。

 普通は門から入って程近くの、メインストリート沿いだろう。


 宿の目の前に警邏隊の詰め所があり、治安が期待できる。

 警邏隊を見ることで、相手の武装も見れるのも、我々には都合が良い。


 カロとドラコさんが降り立つところを見つける。

 ワイバーンは宿の隣の建物の屋上から入れ、屋根の付いた部屋に止まり木とハーネス受けがあり、そこに括り付けるとのこと。

 そこでも入国管理官がいて、手続きできるそうだ。

 初回時、門番に教えて貰ったらしい。


 ワイバーンを受け入れるとなると、こういう場所になるかもなぁとぼんやり考え、

 二つ考えていた話題を出す。


「商業許可の要否は判りますかね? あと、冒険者ギルドがあるようですけど、知ってます?」


 カロが


「行商でも、商業ギルドに届けるのが普通ね。

 昔はウルの商人も商業ギルドで管理されていたのよ。

 冒険者ギルドはウルにもまだあるわよ。

 どうなっているかは判らないから行かないけど。」


 この町で、騎馬民族のランクを知っておくことを提案する。


「一理あるな。 ウチの村の連中は結構イケると思うよ。

 なにせ魔物の巣窟にあそこ迄近い村、そう無い。」

「そうね、あの村の辺りは良い訓練場だし、良い狩り場よ。

 引退後にもヒヤっとした経験をするなんて思ってなかったわ。

 あの辺はイノシシも大きいし。」


 なるほど。

 この国の戦力を推し量り、ウチの戦力も把握しておきたい。


「登録して、少し仕事してみるのはどうでしょう?

 他国の情勢を知れるのは冒険者のメリットでしょうね、この情勢では農民をしているからといって安定を望めるか微妙です。」


 ニュースでお馴染みの北朝鮮みたいにならないとも限らない。

 考えただけで恐ろしい。


「どうかしらね。 心配でついていきそうだわ。」

「ウチはヴェルナー君と一緒なら行っても構わないと思ってる。

 外の世界は見た方が良い。 一か所にとどまって搾り取られるだけなら、一花咲かせて死ぬのも良いかという考え方もある。

 ただ、馬鹿らしいことで、犬死はして欲しくない。

 ヴェル君がいれば、その可能性はかなり下がると思ってる。」


 ドラコさんが続けた。


「危険な罠には近づかないこと。 これを守れるなら、俺は良いかな。」


 見破れると期待してくれるのだろう。


「登録だけでもしてきますか。 引退した騎士なんかも居るなら、参考になるはずです。」

「いいわ。 でも、生きてね。」


 いろいろな行動に同行させている子供は、俺の兄弟が多い。

 信頼できるし、精神年齢が高いというのがある。

 それと、俺は、厳しい経験は生存確率を伸ばすと考えている。


「判りました。 そして、生きれるように経験してきます。」


 無言で頷く二人に、俺達、ベースの子達が目礼で倣う。

 カロたちには、商業ギルドでの登録をお願いする。

 できれば上客を見つけたりもできたら重畳だ。


 自他の戦力水準を探り、今後の行動を決める為にも、俺たちは冒険者ギルドへ向かった。

こんなにとっつきにくい作品なのに読んで頂き、誠にありがとうございます。

できましたらブクマ、いいね、評価、感想等、宜しくお願い致します。


誤字報告大歓迎です。 いつも有難うございます。 (*^^*)

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