ウィリアムの、開墾日和
「父さん、喉乾いたでしょう。」
畑仕事の途中、木陰で居眠りした時だった。
ヴェルナーが、俺の為に水を持ってきた。
花瓶の一回り大きい位の、1リットル弱くらいか?
そのくらいの水が入る水瓶をよいしょと背負って時々来るのだ。
「おぉぉぉぉおお?!」
丁度喉が渇いていたのだ。
思わず顔がにやける。
こんな気の利く子供を持ったのは俺の近くではあんまり聞かない。
賢い子だ。
しかも、なにか……人の役に立ちたいという気持ちが感じ取れる表情をしている。
ちょっと日陰で居眠りしていたが、俺は開墾の途中だった。
ヴェルナーは近づいて俺の動きを眺めている。
よっこらせ、と腰を起こし、水を少し貰う。
「ああ~~~~!」
良い「ほっ」が出る。
よし、頑張るか!と、気合を入れなおす、ヴェルナーは可愛い子だ!
頭を撫でてやる。
直ぐ帰るかと思えば、開墾の続きにもちょこちょこ付いて来た。
俺は鍬を振るう。
脇のヴェルナーを見ると、なにやら考える顔をしている。
「父さん、肥は使ってみたんですか?」
うちの子が、先日から家畜の糞を畑に使えと言い出したのだ。
「ああ、畑に混ぜたんだが、ハエの幼虫の様なのが沢山出て来たぞ。」
苗の下から湧いて来たのだ。
凄い数だった。
ヴェルナーは、「本当ですか?」 と言い、近付いて、「ひぃ!」 と言って逃げた。
「凄いぞ、でも土が柔らかくなったな。
柔らかい土の方が、根菜なんかは良く育つんだよ。
使い方をちょっと工夫すれば凄く良くなるかもな!」
ポンと肩を叩く。
ちょっとしょげてるな、可愛いもんだ。
「いや、そのままじゃなくて、熟させないと……。」
何か不満そうだ。
そうか、こっちだと堆肥の熟成の考え方、いや、そもそも堆肥自体使った事が無いのか……
と、ぶつぶつ言っている。
ショックだったのかもしれない。
褒めておくか。
「でも、お前の歳で親の手伝いをちゃんとやるなんて、いい子なんだぞ?」
ヴェルナーの表情がパっと明るくなる。
「もっとうまくいくはずだったんですよ……
来年、またやりましょう、ここもきっと良い土になりますよ!」
と言い、暫く眺めたと思ったら何処かに歩いて行ってしまった。
――また来るかな?
そう思いながら、日が落ちるまでの開墾をもうひと踏ん張り頑張る。
水平線に、太陽が溶けるように沈むところだった。
デニスがヴェルナーを呼んでいる声が聞こえる。
「ヴェルナー、果物の木の苗はこんな感じで良いのか?」
と、木の実拾いの子供たちと遊んでいる様だ。
「暗くなるから早く帰れよ~!」
大声で言うと、はぁ~いと元気に聞こえてくる。
長閑で良いなぁ、と、家路につく頃の時間に、思いを馳せた。
クタクタになるまで今日も頑張ろう!
◆ ◇ ◆ ◇
帰り道に、ひらめいた。
――ひょっとしたら、開墾にも糞を撒けば土が柔らかくなって鍬入れが楽になるか?
筋で掘って、掘った底に糞を撒き、硬い土をそのまま被せる。
いや、硬い土を集めて糞の上に被せる大きな穴を作るのもアリか?
そうやって柔らかくなるなら鍬入れを少なくしても良くなるかもしれないな!
うん、明日試してみよう。
こんなにとっつきにくい作品なのに読んで頂き、誠にありがとうございます。
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