異常の鱗片
ラガマフィン入り口。
普段とは少しはやめに来たがやはりちらほらと冒険者が居た。
「それでは入りましょうか。」
「うむ。」
第一階層。
出現するモンスターは最弱と呼ばれるスライムとコボルト。
あまり群れておらず精々三体群れるのが第一階層では最高だ。
そういった理性の無いモンスター達は本能に従うらしくダンジョンに入って半分した所でも全く現れることがなかった。
バハムートの強さに本能で危険だ、敵わないと知り近付いてこないようだ。
「何も近付いてこないな。」
「当たり前だろう。我は龍種であるぞ?そこらの小者が死ぬと本能で理解し怯え近付かぬ。」
「さ、さすがですね…。」
こうして何も現れぬまま次の層に行った。
が、同じく何も現れずすぐに第十階層に到達した。
ギルドでは一日でいける限界層と言われている所だ。
勿論行き帰り含めて。
ここまでモンスターの姿形は見えずダンジョンの岩肌くらいしか見えなかった。
「確か第十階層からはオーガが出てくるはずなのに…オーガもオークも見当たらない…本来の俺で一人でやっとたどり着ける場所にこうもあっさりとたどり着いてしまうとは…。」
普通は複数人のパーティーで攻略しに来るはずなんだがな…
「ほれ、早く行くぞ。」
バハムートは俺の反応を楽しんでいるみたいだったが現れるモンスターがいないせいでつまらなそうだ。
急かすバハムートに了承して次への階段を探そうとしたその時。
「「キャーーー!!!」」
誰かの悲鳴が聞こえた。
「バハムート!」
「うむ。それと、バルファと呼んだ方がよいのではないか?」
「そうだな!急ごう!」
「うむ!」
声の場所にたどり着くと青色のオーガが女性冒険者二人を襲っていた。
こんなところで二人だけなのは珍しい。
「ブルーオーガ!?」
ここ、ラガマフィンでは現れるはずがない魔物。
もっと上のダンジョンや現れるような魔物でここに出るとしても未確認の階層に出現するであろう魔物だ。
よく見ると目の部分がおかしい。
普通は白い目の部分が黒くなって血走っていた。
「バルファ!頼む!」
「よかろう!」
バルファは両手に白い炎を出現させて纏わせたかと思うとブルーオーガに向かって飛んでいき一瞬で焼き付くした。
そのブルーオーガは頭だけ無事で後は消し炭になった。
「お前ら、無事か!?」
「え、ええ…あ、ありがとう。」
「た、助かったわ…って貴方、最弱召喚師!」
「う…そうだけど。」
召喚師として悪目立ちしているから知っているんだろう。
普段は魔力を使えなくなってステータス縛りしているから本当に弱いし…
「と、とりあえず無事でよかった。けど、此処には普通のオーガが現れるはずだよな?ブルーオーガなんて此処に出るはず無いよな?」
「ええ。例え未探索の場所でももっと深くの場所でしょう。こんな浅い所に現れるはずが無いわ。」
このダンジョンを攻略した最高階層は第47層だ。
「あの、ありがとうございます。私キャリナ・レフウォークと言います。賢者です。」
「私はアフェテ・レトラーヴァよ。戦乙女よ!」
「え、確か伯爵家の!?なぜ貴族の方々が!?」
「あら、知ってたのね?私はパパが、私のことを弱いって馬鹿にしてきたのよ。だがら見返してやるために来たの。」
「ええと…私は婚約者が…その、最低な方で…逃げ出してきちゃいました。そして友人のアフェテに着いてきたの。」
「そうなのか。先ずは今すぐ戻ろう。怪我が酷い。」
「それはそうね。というかあんた達よくそんな軽装でここまで来れたわね…。」
「ここまで来る予定じゃなかったんだけど…彼女の強さで魔物が襲ってこなくて…いつの間にかここまで着いちゃった。あ、彼女はバルファだよ。」
「そう、バルファさん。助けてくれてありがとうございます。で、あなたはバルファさんに引っ付いてパワーレベリングでもしてるの?」
「ぐ…そう、なっちゃってるんだよなぁ…。」
「弱くて仕方ないから強いヤツに引っ付いてるだなんてサイテー。1人で潜っているって聞いていた時の方がまだマシだったわ。上に戻ったらもう近ずかないで。」
「分かったよ。」
「アフェテ、言い過ぎですよ。」
「私は弱いやつが嫌いなの。…自分も、何もかも…。」
「まず話は帰ってからにしろ。また襲われるかもしれんぞ。」
「そうだな。」
「わかったわ、バルファさん。」
「はい!」
帰りは何にも会うことなくダンジョンを脱出することが出来た。
確かレトラーヴァ家は代々戦争で活躍してきた戦士職の家系だったか。
強さにこだわる家で弱いものは人と認識されないと聞いたことがある。
彼女は普通に強いと思うんだがな…
レフウォーク家は賢者の家系だった。
その美貌もそうだし強さも申し分ないだろうしアレな人と婚約が決まって我慢できなかったのか。
大人しそうな言葉使いなのに行動力がある人だな。
因みにブルーオーガの頭はバルファの物となっている。
倒したのバルファだしな。
まぁ獲物も無しに帰るよりマシだな。
いつもはゴブリン等にヒーヒー行って帰ってるのに。
こんなことになるとは…
膨大な魔力を使うのに見合う強さ…いや、それ以上の強さを持つ彼女を仲間にできた。
本当に、今までの努力が現実に現れた。
正直、今も夢なのかと思う時がある。
けど、バハムートの顔を見て、夢だとは思えない。
第1歩を踏み出すことができたんだ。