俺の始まり
「エゾさん。本日の換金結果です。」
受付嬢のエリザさんから渡された210エダー。
この世界を創ったとされる女神エダーポース様から名前をとった貨幣だ。
「…ありがとう。」
「…エゾさん…本当に冒険者を止めないのですか?今日だってその傷の数は…。」
「大丈夫ですよ。こうして生きていくことが出来ていますから。」
「…そう…ですか。」
彼女は俺が初めてこのリクダル村のリクダルギルドに冒険者になりに来た時から世話になっている人。
エリザさんは悲しそうな顔をしているが俺は笑って話しかける。
「それでは失礼します。」
一つ礼をしてギルドを出る。
「…エゾさん…。」
ギルドを出て町外れに向かう。
一日2食付きで一泊200エダー。
激安の宿、ガルザド亭。
だが不人気だ。
理由を少しあげるとすると食事は固い黒パン。
モンスターも時々出現して倒すために出なければならないし周囲に灯りがない。
「ガルザドさん。今日の200エダーです。」
カウンターに出てきた人は…
「あら!今日も元気ね!エゾちゃん!」
主人のガルザド。
彼は…彼女は?オカマと言う者で不人気の理由の一番の理由だ。
「本当にエゾちゃんの筋肉最高よね!」
彼女は筋肉マニアで筋肉がある人は彼女に餌食。
毎日毎日帰ってくる旅に触られる。
ガルザドさんは水からも鍛え上げているらしく女性物の薄い服を着てそしてその筋肉を見せびらかす。
いつもの黒パンを受け取りいつもの部屋に向かう。
そして一日の反省をする。
俺はダンジョンを攻略する冒険者。
15歳に女神から授かる職を確認して家を出てギルドに加入したダンジョンを攻略することを目指す冒険者の一人になった。
俺の職は誰もが忌避する職、召喚師。
その理由は召喚する際のコスト。
召喚をするには魔力を使う。
だが人が持つ魔力は普通の大人なら約200。
魔法使いなど魔法に特化した職ならば500。
歴史上では10000。
だが、召喚する際のコストは20000。
こんな職になったら、誰もが絶望する。
一人でどうにかできる魔力量じゃない。
だが俺は一つの希望を宿してここにいる。
代々俺の家系は宝石魔法を会得している。
宝石魔法は宝石に魔力を宿すことが出きる魔法。
戦闘には魔力を貯めた宝石から魔力を引き出して魔法攻撃する方法がとれる。
一番魔力が馴染み蓄えられるとされる宝石をはダイヤモンド。
俺は毎日ダンジョン前と寝る前にここで魔力が全回復した時に全てつぎ込む。
魔力を全て消費した人は回復するまでステータスが10分の1位まで下がる。
だが回復すると最大値が増える。
魔力量を増やす一番効率の良い方法でもある。
今の俺の魔力量は850。
ダイアモンドに溜め込まれた魔力は19505。
つまり。
今日の魔力で召喚を一回出きると言うこと。
ここは町外れ。
客も俺以外おらずここに居る人は口が固いガルザドさんのみ。
よし、やろう。
騒ぐ心を抑えてガルザド亭の庭に出る。
草木が生い茂り手入れは出来ておらずに見えにくい場所。
ここで魔力を蓄えたダイヤモンドを取り出す。
俺は特殊スキルがあり職業スキル以外にもスキルがある珍しいスキル持ち。
それは亜空間。
そこから取り出したダイヤモンドは俺が今まで貯めた強力な魔力を内包する証の虹の光を放っていた。
ダイアモンドを握りしめ、職業スキル、召喚を発動する。
俺とダイヤモンドから魔力が引き出され足元から魔力の光が陣を地面に描いていく。
そして、光が立ち上った。
その光に居たのは…
「ド…ドラゴン…!?」
世界の最強種といわれる龍種、通称ドラゴン。
引き込まれそうな黒く、鈍く光る鱗。
二つに分かれた日本の角。
4つの赤黒い翼膜がめを引く翼。
長くそして頑丈そうな尾。
四つ足のドラゴン、龍種。
因みに龍種と竜種の違いは足の数である。
「我を呼び出したのはソナタか?」
「は、はい。召喚師のスキルで召喚しました。」
「!召喚師!グハハハハハハハ!!!まさか人族が召喚する日が来ようとは!魔力が足りなかっただろう?見る限り若いが。」
「宝石魔法で何とか貯めてきました。」
「ほう…あの宝石魔法で?ク、クハハハハハ!面白い考えを思い付いた者よ!」
「召喚師として、この世に存在して何も意味がないだなんて、そんなことはないはずだから。俺が出来ることをやってきた。」
「よかろう。人族に召喚されるとは思わんかったが中々に面白い。我の名はバハムート。好きに呼ぶが良い。」
バハムート…!?
「神龍バハムートか!?」
神龍教の唯一神バハムート。
その龍は息で嵐を創り涙で雨を降らし羽ばたきで風を起こしその爪で大地を掘り起こしたとされる!?」
「真実と虚実が混ざっておるな。」
「って何で俺の考えを!?」
「声に出ておるぞ?」
「うっ。」
「クフフ、真実は己の眼で確かめると良い。我はお主の一生を共にするからな。ところで、名前はなんだ?」
「エゾ。宜しくな。」
「うむ!エゾよ!楽しませてもらおうではないか!グハハハハハハハ!!」
「バハムート、小さくなれたりで来ませんか?人が驚いてしまうので。」
「うむ?確かにそうだな。よかろう。」
そう言うと黒い光に包まれたかと思うとだんだん小さくなり俺と同じ…少し大きなサイズになったかと思うと…そこには綺麗な女性が居た。
「バ、バハムート…!?」
「うむ。人化の魔法だ。これならば問題あるまい?」
バハムートの姿は男の俺よりも見上げる身長で瞳孔が縦に割れた赤い瞳、大きな胸、腰まで届く光によって赤にも見える黒髪、誰もが振り向くような美人で胸元の開いた黒と赤のドレスを身に纏っていた。
「バハムートって女性だったのか…!?」
「む?解らなかったのか?」
「分からないよ…。というか違う意味で目立ってしまうな、これは。取り敢えず俺が泊まっている宿に帰ろう。」
「うむ。」
ガルザド亭に戻るとガルザドがカウンターに居て、ニマニマしながらからかってきた。
「あら~うふふ~何時もはここから出ないのに…やっぱり女だったのね!本当にお綺麗な人じゃない!良いわ~!それよりも私のことはお遊びだったのね~!うふふ~まぁ良いわ~。今日は、サービスしてあ・げ・る!」
「あ、ありがとう。」
「良いわよー。けど、明日からはちゃんと払ってよね?」
「ああ。」
明日からはちゃんと稼げるからな。
いや、やっぱりまた貯めて二体目を召喚しようか?
バハムートに相談しようか。
部屋に戻りバハムートに聞いた。
「バハムート、新しい仲間は居た方がいいか?」
「ふむ、エゾ、お主の目標はあるのか?」
「目標。…あるさ。…兄さんを止めたいんだ。その為に力が欲しいんだ。こんな職業でも、止めたいんだ!」
「そうか、なれば新たな仲間を集めると良い。力仕事などは我に任せよ。」
「ありがとうな。宜しく頼む。」
「それと、空を飛ぶのであれば我に任せるが良いぞ!我は空の女王なのだからな!」
「それは是非宜しく頼む!」