天啓の少女
皆さんこんにちは。ブルングです。
SF小説はこれで二作目となります。楽しんでいってもらえると嬉しいです。
「こちら司令部です!お二人とも聞こえますか?」
緊迫した声の松崎が通信を飛ばしてくる。
「こちらジェシカです。聞こえます」
「えぇ。私も聞こえるわ……何かあったの?」
「緊急です。情報解析チームからの要請で、太平洋艦隊による核攻撃が決定されました」
「あら、まだ私たち残っているんだけど?」
「核攻撃の開始時刻は13:00きっかりです。それまでに任務を達成し、帰投してください。タイマースタート」
松崎の声と共に、私たちは手元のタイマーをスタートさせる。これがゼロになった時、私たちは死ぬ。
「2時間しかないわね。人使いが荒いわぁ」
ユナが小言を言う。しかし、それに付き合う間もなく司令部からの通信は途切れる。向こうは大忙しのようだ。
「あっあと……向かう方向は東です!それではっ!」
松崎から大急ぎでもう一度通信が入り、そしてブツっと通信を切られる。
向かう場所を伝え忘れるとは、彼女は本当にオペレーターなのか。甚だ疑問である。
「ねぇ!あなたたち!まだトラックは治らないのかしら?」
ユナが大声で秋元たちへ問う。
「もう少しっす!この配線を結べば!!」
谷のその言葉の直後、トラックから大きな音がする。
それは規則的なエンジンの音で、トラックが走行可能であることを意味していた。
「よし!出発するぞ。君たちも乗ってくれ!」
秋元が私たちに声をかける。私たちが乗り込んだのを確認すると、トラックが動き出した。
荷台の中央には、1m×1mほどのケースが固定してある。おそらくこれが核弾頭だろう。
荷台の椅子に私たちは腰掛ける。
荷台に座っているのは、私とユナ。そして鈴音と、私たちに銃口を向けてきた少女。
この4人だけだった。谷と秋元は運転席にいる。
少女の方を見てみる。顔はハーフ顔で、なんだか親近感が湧く見た目だ。頑なに名前を言おうとしないのが難点だが。
「ねぇそこのあなた。名前くらい教えてくれてもいいんじゃないかしら?」
ユナが少女に向かって声をかける。その声に少女は少し反応するが、答えることなく俯いてしまう。
「はぁ……じゃあそこのあなた。この子の名前くらい知ってるでしょ?」
今度は鈴音に聞く。しかし鈴音は首を横に振るだけだった。
「もう!これから脱出まで一緒にいるのに……名前くらい教えてくれてもいいじゃない!」
ユナが両手を上げて叫ぶ。
「本当にこの子を連れて行ってもいいんですか?ただの少女ですよ。避難させるべきでは…」
鈴音が私たちに聞いてくる。もっともな意見だ。
それを聞いて、私は説明しだす。
「私たちの任務は、高エネルギー反応のあった場所の破壊です。そのためにはあなた方の支援が必要です」
「また、あなた方だけでの撤退は不可能です。後方にも怪物が大量にいます」
「そのため、私たちについてくることが最も安全です。怪物を単体で撃破できる戦力は私たちしかいませんから。目標地点付近に輸送機が到着する予定です。それに賭けましょう」
この言葉を聞いても、鈴音は納得できていないようだった。
エンジン音だけが響く。私たちには沈黙だけがあった。そんな中、今まで一言も喋らなかった少女が口を開く。
「実は私ね……未来が見えるんだ。そして、その…ごめんなさい」
「ごめんなさいってどういうことよ。言ったでしょう?あなたの銃じゃそもそも傷すらつかな……」
ユナが言い終わる前に、食い気味に少女が声を出す。
「違う。暗い感じがするの。冷たくて……暗い……。多分、私といたらそうなっちゃう……」
「あと……名前は分からないの。もやがかかった感じで、思い出せない……」
「ふーん。まぁ、"思い出したら"でいいわ。あとひとつだけ、あなたを見捨てたりしないわよ」
その言葉が少女に届くと同時に、少女の絶望の目に、少し光が灯った。
ユナの頼もしさが、少女の未来を照らしたのかもしれない。
皆さん初めまして、ブルングです。これで二作目となりますが、もしかしたら読みにくかったりするかもしれません。
誤字脱字等ありましたら、コメントで指摘していただくと嬉しいです。(他にも、ここが読みにくい などのコメントもお待ちしています)
読んでくれてありがとう!!!