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同い年の女の子と出会いました

「ていうか、親父さんはどういったお方で?」


お父さんは謝りつつも、なんとか話をごまかそうとする。


「お、おお!そうじゃったの!何を隠そうわしは馬好きで愉快な紳士こと!」


「さっさと隠居して遊びまわっている道楽爺のダヴィル。その妻のオクリスと申し上げます。よろしくお願いいたしますね」


「こ、これはご丁寧に、ありがとうございます……」


「ボクはディクトって言います!よろしくお願いいたします!」


「爺はひどくないかのぉ……まだまだ若いつもりなんじゃが……」


「なら当主に戻れますね?あまりに早く当主にさせられた長男が泣いて喜びますよ?」


「うっ!もう歳かもしれん……ゲホゲホ……」


おじいさんの態度はコロッと変わり、いかにも体調が悪そうにしている。


「……親父さんも大変な奥様をお持ちですな」

「……分かるかね?」

「そりゃあもううちのも綺麗な顔して怖いのなんの……」

「お互い苦労するのぉ……」


お父さんは体を気遣うように背を撫でながら、こそこそと話かけていたのだけど。


「あら、聞こえていますわよ?」


しっかりと釘を刺すかのように、にっこりと微笑むオクリスさん。


「手紙に追加してあげよう。奥さんを怖がっているようなので優しくしてあげてください、と」


「「本当にすいませんでした!許してください!」」


また二人が深々と謝罪をしていると、ボクと同じくらいの女の子が話しかけてきた。


「おばあ様?おじい様は見つかりましたか?」


執事さんに連れられたその女の子は、オクリスさんとお揃いの白い帽子をかぶり、花の刺繍が入ったワンピース、その上にピンクのカーディガンを着ていた。

帽子の裾からのぞく長い髪は絹のようにサラサラで、銀色の眩しい輝きを見せている。


「月のお姫様みたいだ……」


「えっ……?」


ボクが呟いた言葉が聞こえたようで、恥ずかしそうにうつむいてしまう。


一方その頃。

ディクトの牧場がある街、ホードスでは。


「はっ!?なんだかものすごく嫌な気配を感じたわ!」


何かに目覚めたようにローゼリアは椅子から立ち上がっていた。


「いいから大人しく縫いなさい!あんたが破いた服やらズボンは自分で直すの!いつもボロボロにしてくるんだから!」


「ご、ごめんなさいぃぃぃ!」


ちくちくちく。

まあディクトは女の子に興味ないから大丈夫だよね!

絶対そのうちに振り向かせるんだから!


気合を入れなおし、慣れた手つきで裁縫を進めていく。


「裁縫だけは、上手くなったんだから皮肉な話よねぇ……」


「う、うるさいなぁ!」


ため息をつく母親に、顔を赤くして怒っていたのだった。



「ははは!坊やは口説き文句も一流だのう!」


「いたたっ!?」


ボクはダヴィルさんに背中を叩かれつつ笑われている。

その際に女の子はオクリスさんの後ろに隠れてしまう。

ボクはなんだか悪いことをしたような気持ちになり、彼女に向けて頭を下げた。


「ごめんなさい。とてもかわいくて綺麗だなって思ったから……決して冗談で言ったんじゃないよ」


そう謝ると、なぜかもっと隠れてしまった。


「……坊やは将来、女性関係で苦労するかもしれんな」


「お孫さんはどうしたんですかい?ああ人見知りなわけですか!」


「そっか……いきなり話しかけたらからいけなかったんだね」


「いやそうではないだろう。親子そろってレディの気持ちが分からんようだな」


「えっ!?ボク、お父さんと一緒なの!?」


「おい……どう意味だ?」


お父さんよりはお母さんやおばあちゃん、それに妹のティルのことは分かっているつもりだったのに……


「ほら、あなたも恥ずかしがっているばかりではいけませんよ?ちゃんとご挨拶なさい?」


オクリスさんに促され、後ろに隠れている女の子がおずおずと現れた。


「……リティアです」


しかし、そういうとまた隠れてしまう。


「あらあら……よほど坊や、いえディクト君に言われたことが心にきたのかしら」


「……そんなこと、ありません」


「ほっほっほっ!ところでディクト君や?君はどんな女の子が好みなんじゃ?」


ニヤニヤ笑いながら、ダヴィルさんが聞いてきた。


「えっ……そ、そうですね」


いきなりの問いにびっくりしたけど何とか答えられそうだ。


「サラサラの銀色の髪で」


「ほう」


ぴくっ。

リティアの耳が動く。


「性格は大人しくて白い肌で」


「ほほう!」


ぴくぴくっ!


「シッポで甘えてくる子が好きですね」


「……?」


あれ……?

お父さん以外の人が固まってしまった。


「すみませんね……こいつの中で好きな女の子と言ったら馬のことなんですよ。小さい頃から一緒に育ったせいか、馬への興味が高すぎるようでして……」


「なるほどのう。それで馬を見る目が育ったのじゃな」


「どうやら相当に手強いようですよ?」


「……知りません」



クスクスと笑うオクリスと不機嫌そうにつぶやくリディア。

その二人の様子に気づかないディクトは、周囲の反応を不思議に思ったようでキョロキョロと見渡すのだった。

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