判定の結果は!?
「ど、どっちが先だった!?ディクトは視力いいだろ!なぁ!?」
「わ、わかんないよ!」
呆然としていたボクたちの中でお父さんが一番に気が付き、ガクガクとボクの体を揺らしてきた。
「完全に同時だったと見えたのじゃが……」
「ええ、私にもそう見えました」
ダヴィルさんもトナシさんも小さな声で話している。
「こ、この場合はどうなるのですか?」
オロオロとしたリディアがトナシさんへと質問すると、
「ゴールの瞬間を間近で確認した四人の判定員が審査します。手前からの二人、奥からの二人が判定しその中での多数決により勝者が決まるとなっています」
「ちゃんと公平に審査してくれるのか!?」
「当たり前だ。判定員というのは誰にでもなれるものではない。専門の学園で学び、成績だけではなく人格から生活態度までを評価付けされて、晴れて判定員になる。そうして学んできた彼らは自分の判断に誇りを持って裁定を下している。疑うことがすでに不敬だ」
「すまん……」
「い、いつ教えてくれるの!?」
「いずれ発表があるのを待つしかない」
ボクは待ちきれない気持ちを抑えてコース内を見下ろすと、ソロンは芝の上を歩いていた。
ユウガさんはソロンから降り、手綱を引きながら首筋を撫でている。
ソロンは疲れ切った表情を浮かべながらも、ベロベロとユウガさんを舐め始めた。
「ソロン、お疲れさま……」
ボクはいつもと変わらないソロンを見て、小さく声をかけて笑ったんだ。
するとソロンがこちらを見上げてきた。
さすがにボクの言葉が届いたわけがないと思ったんだけど、嬉しくて今度は大きな声で言うことにした。
「ソロン!お疲れさま!よく頑張ったね!」
ボクの言葉にみんなも続いていく。
「最高のレースじゃったぞぉぉぉ!」
「今度帰ってきたときは最高のニンジン用意しておくからなぁぁぁ!」
「見事だ。よくやったな」
「いっぱい美味しい物用意してあげるからね!」
「安心しな!ソロンの勝ちに決まってるから!……でございます!」
「とってもかっこよかったです!ソロンさん!」
みんなからの応援を聞いたソロンは照れくさそうに、ニマッと笑った。
「興奮冷めやらぬ場内ですが、判定にはまだ時間がかかりそうですね」
「いえ、もう出たようですよ」
「ほ、本当です!判定完了の旗である馬と剣の旗が高々と上げられました!今から発表されるようです!」
「今回のレース結果ですが、我々四人の判定は満場一致となりました。その結果は……」
その瞬間、場内は静まり返った。
多くの人がいるとは思えないほどの静寂さだ。
「同着とし、二頭の優駿を称えるものとします」
ボクたちも黙って判定員さんの言葉を聞いていたのだけど、同着ってなに?
「お父さん!どっちが勝ったの!?」
「……うぉぉぉぉぉぉぉ!」
そう聞いてみたものの、お父さんは滝のように涙を流していて答えてくれそうにない。
「同着とは全く差がなく同時にゴールしたと判定されたということでのう。つまりソロンもダークペガサスも勝ったということじゃ。おめでとう!ディクト君!」
「や、やったぁぁぁぁぁぁ!」
ボクはダヴィルさんの言葉でやっと理解することができた。
「やれやれ、突き放したと思ったんだがな?」
「私も負けたと思いましたよ。だけどソロンが頑張ってくれました」
二人は握手をかわし、お互いの愛馬をたたえ合う。
「これで一流騎士の仲間入りだな?ルーキー、いやユウガ」
「へっ……?誰がですか?」
「お前に決まってんだろ?」
「めめめめめめ滅相もない!ボクなんかただの新米騎士ですから!」
「……魔法が解けちまったように情けなくなったな」
慌てて否定するユウガと苦笑するサイドマ。
その隣ではソロンとダークペガサスが何かを話しているかのように見つめ合っている。
楽しかったよ!また走ろうね!
おう!今度ははっきりと決着つけてやるからな!
うん!
「負けはせんかったが……勝ったとも言えんな」
ウザックは少々不服な表情を浮かべ、ソファへと腰を落とす。
「……お父さん」
「なんだ?」
「レースってすごいんだね!」
きらきらと目を輝かせるライハーツの真っ直ぐな言葉が、ウザックを父へと変えていく。
「ふふふ……そうだろう?」
優しく息子の頭を撫で、微笑んだ。
様々な想いを胸に秘め、表彰式へと舞台は移っていく。




