決着の時です!
「今!先頭集団が第四コーナーにさしかかります!後続の差はまだ十分にありますが長い直線が待っている!このままで終わることはないでしょう!」
「ええ、ここからです」
ほぼ全ての馬が直線に入りラストスパートの態勢をとる中で、二頭だけが未だにコーナーを曲がっている。
ソロンとダークペガサスだ。
二頭は体を合わせながら同じペースを刻んでいる。
外をソロン、内をダークペガサス。
その二頭が直線を迎えた瞬間。
ガチン!
何か硬いものがぶつかる音がした。
それは溜めに溜めていた力を出し切るためのサイン。
ソロンとダークペガサスは同時に口を嚙みしめたのだ。
そして鞍上の二人もそれを素早く察知した。
「いい勝負勘だ!出し惜しみできねぇもんな!」
「いくぞ!ソロン!」
二人の騎士は風の抵抗を少しでも受けないように頭を低くする。
そこからは一瞬のことだった。
「先頭はいまだにドレッドノートですがジェネシス、ワンダー、アルマゲドン、ヘブンズゲートがすぐ隣にいます!どの馬が抜け出すのでしょうか!」
「……来ました」
「はい?」
「大外を回って、二頭が来ました」
「あぁぁぁ!?外のソロン!内のダークペガサスが物凄い脚で前を捉えにかかっています!」
「これはあっという間ですね……」
「並ぶ暇すら与えない!前で争う馬が止まっているかのように抜きさっていったぁぁぁ!」
「あとは、自分の隣にいる存在だけです」
二頭の追い比べはそのまま続き、ゴールを迎えるのかと思われた。
だが、
「ソロンはやや苦しいか!?ダークペガサスが均衡を破り先頭に立ちました!」
ソロンはダークペガサスに少しづつだが、確実に離されていく。
「ふん、ここまでだな。思いのほか粘ったが最後は力の差ということだ」
ウザックは勝ち誇ったようにワインを飲み、笑う。
「まだ、だと思うよ?」
「なに?」
「まだ、諦めてない」
「……なんだと?」
「いや!これ以上は離されない!それどころか追い上げていきます!」
「……驚きですね。勝負あったと思ったのですが……」
「残りはあとわずか!内か!?外か!?勝負の行方はまだ分からない!」
ぼっちゃん。
楽しいですね……レースってやつは。
速い奴と競うことができるのは心躍るってもんです。
だけど……俺が一番好きなのは、ぼっちゃんを乗せて走っていた、あの日々……
また……乗ってくださいよ……
「ソロン!」
おや?ぼっちゃん?
何をそんなに慌てた声で呼ぶんですかい?
もう少しですからね。
待っててくださいよ……
「並んだままだ!並んだまま!意地と意地のぶつかり合いは最後の最後まで決着がつかず!ともに差をつけることはできずに今ゴールイン!」
「「「……」」」
観客たちが理解するのに時間を要し、その静寂の後、
「「「うぉぉぉぉぉぉ!?」」」」
大きな歓声に包まれていくのだった。




