贈り物です!
「いよいよ第三コーナーを迎え、後半戦に突入します!注目のダークペガサスは現在最後方を走っております!先頭とはおよそ10馬身ほど!この距離を差し切れるのでしょうか!?」
「先頭のペースは平均ほどです。長い直線があるとはいえ前の馬たちも脚を温存していますので、なんとも言えません。ですが、自信はあるのでしょう。サイドマ君は一流の騎士ですから」
ちらっ、ちらっ。
ダークペガサスが隣のソロンを気にしながら走っていると、
「ん?なんだ?」
「す、すいません!すいません!」
ソロンとバッチリ目が合ってしまった。
ダークペガサスはすぐさま謝り、視線を前に向ける。
「別に気にしちゃいないけどよ。ところでお前さん、なんでそんなにオドオドしてるんだ?」
「……えっ?」
「走ること楽しくないのか?」
「……」
どうだったんだろ……?
もう、覚えてないや……
大牧場で生産されたダークペガサスは、偉大な父と母の能力を受け継ぎ、幼いころから身体能力は抜群だった。
だが、良いことばかりではない。
「一緒に走ろうよ!」
「やだよ……お前、速過ぎるもん……」
「俺たちとは違うんだから一人で走ってろよな。行こうぜ」
「あっ……」
周囲の馬たちは誰も彼についていくことができないでいた。
そのため周囲と軋轢が生まれてしまい、気が付けば彼は一人で走る毎日を送ることになる。
「ほれ、元気を出さんか」
「おじいちゃん!」
トボトボと歩きながら牧草をつまんでいると、年老いた牧場長が柵越しに話しかけてきた。
すぐに駆け寄ると、ペロペロと舐めまわす。
「ほっほっほっ、そんなに舐めまわすんじゃないわ」
そう言いつつも老人は嬉しそうに微笑んだ。
「ああ!牧場長ばっかりズルいですよ!」
「そうだそうだ!」
「私もペロペロしてほしいのにぃ!」
「早い者勝ちじゃわい」
孤独なダークペガサスの周囲には多くの人が集まり、それが彼にとっての群れとなった。
だからこそ、自身は馬でありながら馬に馴染めないという性格へと育ったのだ。
「まあおせっかいだとは思うけど楽しくいこうぜ?えーと……名前なんて言うんだ?」
「……ダークペガサス」
「おう、俺はソロンってんだ、よろしくな。ダー公には負けないからよ」
「ダーコウ……?」
「長い名前はめんどくせぇからな。呼びやすいだろ?」
「う、うん!」
ニヤリと笑うソロンを見て、心から温かいものがこみ上げてくるダークペガサス。
それはきっと、初めてできた友というべき馬との会話だったからだろう。
「……あれ?なんだか表情が変わったような……?」
遠目ではっきりとは分からないけど、パドックでも明るい顔を見せなかったダークペガサスが笑ってる?
ち、近くにいるのがソロンだけになったからかな……?
流石のディクトも気づくことはなかった。
ソロンが一番のライバルに塩を送ったということに。




