両雄並び立ちます!?
「あっと!?これはどうしたことでしょうか!?」
「一番人気のダークペガサスがズルズルと後退していきますね……」
4、5番手を快走していたダークペガサスだったが、順位をドンドンと下げていったのだ。
その様子を伝えるアナウンスとともに、観衆の大きなどよめきが競馬場に広がっていく。
「何かトラブルですか!?」
「ここからでは詳しいことは分かりませんが、走り方自体は問題ないように見えます」
「それではどういった理由があるとお考えでしょうか?」
ヒルベルトは腕を組み、少し考え込む。
「……考えられるのは包囲崩し。窮屈な今の状況を覆すために一旦下がっていったのだと思います」
「なるほど!そういうことですか!」
「ただ、ダークペガサスは後方からのレースを経験していません。ラストスパート、位置取りなど実力が発揮できるかは未知数です」
「これは長い直線が楽しみですね!」
「ディクト、これなら大丈夫そうだな!末脚勝負なら負けないだろ!?」
デリカシーのない発言で倒れていたお父さんだが、いつの間にか復活していた。
だけどボクはその質問に答えられない。
でも、あえて言うなら、
「わからない……」
そう答えるしかないと思う。
「な、なんでだ?相手の得意の戦法は封じられているじゃねぇか?」
「それは間違いだ。恐らくだが、得意ではないのだよ」
「な、なんじゃと!?」
「なんだって!?」
トナシさんの言葉にダヴィルさんやお父さんはすごく驚いてしまう。
「私も自分の考えに確信は持てなかったが、ディクトの言葉に後押しされて結論へと至った。ダークペガサスは気の弱い性格で他の馬を恐れている。故に周囲に多くの馬がいると力を発揮しにくいタイプだ」
「でもよぉ!実績あるだろ!?無敗でここまで来てるっていうのに苦手だって言うのか!?」
「そうだ。馬自身の能力はトップクラス、それに調教自体は良くされているし、騎士の指示も良い。戦法が苦手だとしても地力の差で勝ってきたのだ」
「……えーと、どういうことでしょうか?」
リディアが首をかしげて聞いてきた。
女の子、というか詳しくない人には難しいんだろうな。
エリザさんやオクリスさんも話についてこれてないみたいだ。
「そうですな、例えるなら……リディア嬢、腕相撲はご存知でしょうか?」
「ええ、学園で男の子たちがやっているのを見たことがあります」
「それではこのデリカシーのない男と勝負して勝てますか?両手を使ってもらい、こやつには左手で勝負してもらいますので」
「その呼び方やめてくれよ!?」
「いいえ、勝てません」
「……しくしく」
どうやってもリディアの細い両腕がお父さんの太い腕に勝てるとは思えない。
取り合ってもらえないお父さんが少し悲しそうだけど、今はいいや。
「そういうことです。少し不利があったところで大きな能力の差があれば大したことではありません」
「それでは、負けてしまうのですか……?」
不安そうに聞くリディア。
「そうとも言い切れません。勝負に絶対はないのですから。だから声援を贈ってあげてください。それが二人の力になると思いますので」
「わ、わかりました!頑張ってください!」
リディアの大きな声に続き、ボクたちも力の限り応援した。
ソロンとユウガさん。
二人に届くと信じて。
「お邪魔するぜ?ルーキー」
最後方を走るソロンとユウガに並ぶ位置まで下がり、サイドマは隣に目を向ける。
「隣で走らせてもらうからよ」
「それは、光栄ですね」
「……本当に厄介な奴だ」
気負いも焦りもなく微笑むユウガの答えに、サイドマは苦笑を隠せないでいた。




