勝ちたい気持ちはみんなあります!
「ここで先行集団が向こう正面にさしかかりました!まずは3番のドレッドノートが行きましたが、後続とはそれほど差はありません!その後ろにジェネシス、ワンダーと続いており、隣にはアルマゲドン、ヘブンズゲートが並んでいます!そしてここに居ました!一番人気のダークペガサスです!この位置取りはどうでしょうか!?」
「ベストな位置だとは思いますが……」
歴戦の騎士ヒルベルトは、はっきりと言い切らずに少し含みのある言い方をする。
「何か不安なことでも?」
「はい。あまりにも教科書通りの位置取りであることです」
「しかしそれは勝つことに対する最適なものではないのですか?」
「レースは学問ではありません。ですので勝つことにはあらゆる要素が絡んできます。その結果として勝率が高い位置取りというのはありますが、それは結果論です」
「ですが、勝率の高い位置で能力の高い馬が走れば結果を残せるのでは?」
「それを見過ごす他の陣営がいると思いますか?どの陣営も負ける為に走っている訳ではないのですから、しっかりと対策はされるでしょう。見てください。すっかりと囲まれていますよね?」
「こ、これは!?ダークペガサスの前はドレッドノート、ジェネシス、ワンダーの3馬に塞がれています!そしてその隣にはアルマゲドン、そのすぐ後ろにヘブンズゲート!完全に包囲されています!」
「これは別に仕組まれたものではありません。勝つために自然とこうなるのです」
「ど、どういうことでしょう?」
「一対一で敵わないのが明白だとしたら、他の馬を利用して勝ちにいく。各騎士の思惑が一致したということです」
「卑怯者らが!」
貴族専用の個室でそう叫ぶのはウザック陣営の調教師、ドルバだ。
ドルバはいら立ちを隠せずにテーブルを叩く。
それを見てビクッと体を震わせるライハーツ。
「うるさいぞ。静かに見ていられんのか」
「し、しかし、あのような汚いやり方は許せません!」
「力ないものがあるものを引きずり落とすのは戦場の常であり、常套手段であろう。貴様そんなことも分からんのか?」
ワインを片手に落ち着き払った様子のウザック卿は、蔑むようにドルバを見る。
「ですが正々堂々と戦ってこその名誉では!?」
「名誉とは勝利あってこそだ。敗北に名誉はない。勝者として記録されないからだ」
「そんな……」
「くだらん。ただの理想主義者か。よほど温室で大切に育てられたのだろうな、坊や?」
「くっ……!失礼いたします!」
ウザックの言葉に耐え切れなくなったドルバはその場から逃げ出した。
「ふん……坊やのおかげで戦況は芳しくないが、見事立て直してみせよ。サイドマ」
「坊ちゃん、言ったじゃないですか……絶対に囲まれるって……」
ダークペガサス号の騎士、サイドマは現状を憂いながらぼやく。
「いつもなら負けても坊ちゃんの指示通りにした俺に責任はないんだけど、ウザック卿にも指示されているからな」
私の貴様に対する指示は勝利することのみ。
「おお、怖い怖い……さて、なんとかしますか」
不敵に微笑み、ゴーグルに隠された目を輝かせた。




