ゲートイン開始です!
「なんだか放送のひとたちに褒められてたね!」
「……少し険悪な感じになってはいたけどな。まあそれでもヒルベルトさんに気にかけてもらえるのは嬉しいもんだ」
「その人って凄い人なの?」
「ああ、地方中央を問わずにグレードの高いレースをほしいままにした伝説の騎士だ」
「うむ!とりあえず困ったときの騎士で馬券買っとけで何度救われたかのう!」
お父さんとダヴィルさんがこんなに褒めるなんて、すごい人だったんだ。
騎士かぁ……ボクにもなれるのかな……
ファァァ!ファファファファァァ!
そんなことを思っていると、下の方から楽団の演奏が聞こえてくる。
「さあゲートインの時間です!」
同時にアナウンスが聞こえたので、ボクはコース内で集まっている馬と騎士に目を向けた。
騎士を乗せた馬たちは続々とゲートの中に入っていき、スタートを今か今かと待つ。
「おや?ソロン号にユウガ騎士が上手く乗れていませんね?」
「ええっ!?」
驚いたボクはソロンの方に目をやると、ユウガさんは懸命に乗ろうとするものの、緊張で体がガチガチなのか上手く体が動かせないみたいだ。
「あの様子だと完全に自分を見失っているな……大舞台な分、調子にのれるのも僅かな時間だったか……」
「大丈夫かな……」
「ああ、まあ見ていたま……」
ボクはトナシさんの言葉を最後まで聞くことができなかった。
「おーい!騎士学校出てんのか!?」
「競走除外にした方がいいだろ!まともに走れねぇぜ!」
「ちげぇねぇな!」
バカにしたり、からかう声があちこちから聞こえてきたからだ。
……そこまで言う必要ないのに。
「辛いかもしれんが、これは勝負の世界だ。結果を出せないどころか、乗ることも出来ないならそう言われても仕方ない。だがディクトまで下を向いてはいかんな」
ボクがうつむいていると、トナシさんが背中に手を置いてくれた。
「でも、このままじゃレースにも出れないんじゃ……」
「君はソロンのことを信じてないのか?誰よりも勝ちたいと思っているのは、ソロンだぞ?」
「えっ?」
ボクが顔をあげた瞬間。
ヒヒーン!
ソロンの大きないななきが場内に響き渡った。
それは全ての雑音を飲み込んでいき、周囲は静けさを取り戻す。
そこからボクは一瞬たりとも二人を見逃さないように、前を向くことを決めたんだ。
すると二人のやり取りが良く見えてくる。
ソロンはごつごつとユウガさんの頭を鼻でつっつくと、顔を舐めまわした。
一瞬でよだれでべとべとになったユウガさんは、ソロンの唇を両手でぎゅぅっと引っ張りやり返している。
二人とも楽しそうに笑いながら。
「良い馬は、騎士を成長させてくれる。だからこそ私はユウガを託したんだ。ソロンなら大丈夫だとね」
「う、うん!そうだね!二人ならきっと大丈夫だよ!」
体の硬さが取れたユウガさんは、勢いよく飛び乗る。
そしてそのまま、ずるっと滑って落ちていった……
「勢いよく飛び過ぎましたね。緊張は解けたものの舞い上がってしまったようです。落ち着きを取り戻せるといいのですが」
丁寧な解説のヒルベルトさん。
静まっていた場内は、
「「「はははははは!」」」
そのまま爆笑の渦に飲み込まれていった……
「……し、信じてもいいよね?」
「あ、ああ、大丈夫、なはずだと思う……ソロンならな……」
冷や汗をダラダラと流すボクとトナシさんは、全てをソロンに託す。
だけど当の本人は、舌をベロベロ出して笑っていたんだ……
「あらあら、とても楽しそうに笑っているわね!これは期待できそうね!」
エリザさんも楽しそうにしているんだけど、ボクたちは引きつった笑いを返すことしかできなかった……
「「「あははは……」」」




