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こちら実況席からお伝えいたします!

「ハイリッジ放送をお聞きの皆様!お待たせいたしました!第35回ハイリッジ優駿賞は間もなく出走となります!実況は私ブルス・アイスランド!解説には生ける伝説の騎士!ヒルベルト・ハピネス伯でお送りいたします!」


「よろしくお願いいたします。ただ私はもう引退しましたので、元騎士ですよ」


「いえいえ!長年の活躍が認められ、現陛下から勲章と伯爵位を授与された方を騎士と言わずにどう呼べばいいのですか!?」


「そうですねぇ……ヒルさんとでも気軽に呼んでほしいものです」


「そのように気軽には呼べませんよ!」


軽快なトークに花を咲かせる二人。

若い男性は情熱的に、髪だけではなく髭まで白くなりつつある紳士は優雅な口調と対照的だ。

彼らはコースを一望できる場所から、場内のアナウンスと最近普及しつつあるラジオ放送によって現在の状況を届けている。


「それでは全出走馬をご紹介いたしましたが、ヒルベルトさん注目の馬はいますでしょうか?」


「それが難しくてですね……ここは全馬を挙げたいところです」


「そ、そこをなんとか絞ってもらえません?」


「実績で考えるのならばブラックペガサスでしょう。血統から騎士まで隙は無いように思えます」


「なるほど!現在も一番人気の7番ブラックペガサス号が最有力候補だと!」


「ただ……妙に目を引く存在がいます」


「おや?それはどの馬でしょうか?」


「10番、ソロン号です」


「ソロン号ですか?えっと……」


実況のブルスはガサガサと資料を漁る。


「ここ最近頭角を現し始めた新鋭の馬ですね。騎士も目立った功績があるわけではありませんが?」


「少し前にソロン号を管理しているトナシ調教師とお話しする機会がありまして、その際に調教途中のソロン号を見せていただいたのです」


「その時に光るものを感じたという訳ですね!?」


「その逆です。敗北が続いたためか自信喪失となったようで、覇気がないと思った私は気にも留めませんでした。しかし出走馬を確認した際にソロン号の名を見つけ、どこかで見た名前だなと思ったのですが、思い出せませんでした。モヤモヤしたものを覚えつつも、調教師の名前を見て思い出しました。あの時見た馬だと」


「ソロン号に、何か変わるきっかけがあったのでしょうか?」


「分かりませんが、だからこそ気になるのかもしれませんね」


「と言いますと?」


「一度挫折を知ったとき、立ち上がるには相当の何かが必要です。それは人それぞれによって違いますが、馬も同じだと思います。スランプに陥った私も愛する人が励ましてくれたことにより、抜け出すことができましたから……」


はにかんだ表情のヒルベルトだが、それを見る独身男性ブルスの視線は冷たいものになっている。


「大変ごちそうさまでした。それでは間もなく出走です」


「急に冷たくないかね?それにこの話には続きがあるのだが……」


「ははは、気のせいでしょう。時間がありませんので結構です」


出走前の放送席は、少しだけギスギスし始めたのだった。


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