ライバルは強敵です!
「いろいろとご説明したかったところですが、あまり時間がございませんので、ウザック卿の馬についてのみ説明いたします」
すでに投票は締め切られていて、もう少しでソロンたちがコース場に出てくる時間になっているみたい。
……ボクたちが騒いでいる間に。
その反省の為、静かにトナシさんの話を聞くことにした。
「名前をダークペガサス号と言います。その由来は空を駆けるように走る姿を見てウザック卿が付けたそうです。確実に最大のライバルと言っていいでしょう。生まれは中央の高名な牧場であり、両親ともにグレードレースを勝利しています。その能力の高さは戦績にも表れておりまして、五戦五勝と無敗です」
「じゃからここ最近、ウザック卿の羽振りが良いのか。地方都市とはいえ賞金も少なくないからのう」
「ええ。そして彼らはここを勝利し、中央へと向かうつもりのようです」
「聞いておる限り、万全のような気がするのじゃが……?騎士にはまったくといって問題はないしのう」
「どんな人なんですか?」
「ああ、ハイリッジで一番の騎士で名をサイドマという。30代前半と若いながらも、勝利数は毎年のように首位を譲らないでいる。彼の前と後ろのどこからでも勝負できるオールラウンダーなスタイルは、圧巻の技術だな」
「そんなにすごい人なんだ……」
「だが、一つだけ弱点もある。それは優等生すぎることだ」
「……えっ?優等生だといけないの?」
「ディクトには難しいかもしれんが、良い面も悪い面もある。彼は調教師の指示通りにレースを運ぶ。だが、その指示が適切ではない場合はそれが敗因となる」
「……えっと?」
説明されてもよく分からないんだけど……?
「……リディア嬢の誕生日プレゼントを買うことになったとしよう」
「まあ、何を頂けるのでしょうか?」
「ボ、ボク、女の子が欲しい物なんて分からないよ?」
「そこで両親に相談することに決めた。君のお母さんのアドバイスなら上手くいくだろう。だがサイレスのアドバイスならどうかな?」
「上手くいかない!」
これに関しては自信満々に言える。
お母さんに相談するのが恥ずかしくて、お父さんの言う通りにプレゼントを買ったことがあったんだけど……
ローゼリアにとっても悲しそうな顔をされたんだよね……
「そんなことはない!俺だってナイスなプレゼントを用意できるぜ!?」
「ほう?ならば何を贈る?」
「そうだなぁ……大人っぽいパンツなんてどうだ?これで立派なレディになれるね……なんつってな!?」
「「「……」」」
お父さんの答えにその場にいる全員が黙ってしまう。
その反応の無さに口をポカンと開けて、周囲をキョロキョロと見渡すお父さん。
「……あれ?」
「ディクト君?そのようなものを贈ってきたら……ふふふ」
「絶対にしません!分からないときはお母さんに相談するから!」
和やかに微笑んでいるリディアの目は全く笑っていない。
「なにっ!?リディアちゃんは俺のプレゼントじゃダメなのか!?」
「おじ様?キモいですよ?」
ピシッ……
その言葉とは裏腹にニッコリと微笑むリディア。
サイレスの体は、石のように固まってしまった。
「はしたない言葉遣いですが、仕方ありません」
「ええ、他に上品に表現する言葉がないのが難しいのよね」
サラサラ……バタン。
婦人たちの言葉とともに吹いた微風は、砂のようにもろくなったサイレスの巨体を難なく吹き飛ばしたのだった。




