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訳アリの魂ですが、旅立てますか?

多くの魂が集まり、そして旅立つ場所。

天界では魂の港と呼ばれている。


「はい、出魂オッケーです。それでは次の方どうぞ」


そう声を発するのは神様だが、スーツを着こなす姿は人間と相違ない。

まるで空港のようなこの場所では、多くの魂たちが次の生へと旅立つために審査を受けている。

並んでいる魂たちにはそれぞれに特徴があり、綺麗な輝きがあればどす黒いものもある。


「……貴方は別室で罪の重さを測りますので、こちらへ向かってください」


次に訪れた黒く濁った魂は別室へと向かっていく。

ふよふよと浮かんでいるので分かりづらいが、元気がないように思える。


「はい、次の方……?お、おや?」


次に訪れたのは雪だるまのように重なった魂だった。


「え、えっと?二つの魂が重なりあっている……?どういう状況でこうなったんだ?ちょっと失礼しますね」


魂に触れると、死因やプロフィールを確認する。


「ふむふむ。上のちょっと小さな魂はサラブレットさんですか。レース中の骨折で……分かりました」


そして下の魂へと手を移動させていく。


「こちらの方は騎手さんですね。勝利を目的として一心同体となり、魂が重なったということですか。そして時を同じくして肉体を離れたと。それで分離することなくここまできたのですか……」


うーんと唸り、頭をポリポリとしつつ悩む神様。


「私の裁量ではどうにもなりませんね。上司の執務室へとご案内させていただきます。ここをまっすぐにいって突き当りを右へ。そこに港の管理官がおります。もし道が分からなくなったら、近くの職員にお聞きください」


雪だるま型の魂はこくりと上下にふよふよした。

そして雪だるまは、ゲートを通過することなく魂通りの少ない道へとふよふよ進んでいく。

すると、管理官室と書かれたプレートがあるドアを見つけた。

ただ入りづらい雰囲気でも感じたのだろうか?

少し躊躇したようにウロウロとしていると、


「中へとどうぞ?連絡は受けております」


ドアが開き、優しい女性の声が聞こえてきた。

恐る恐る中へと入ると、黒髪を肩まで伸ばし、キリっとした瞳、クールなスーツを着こなした女神がいる。

そんな彼女は雪だるまを興味深そうに見つめていた。


「これは……久しぶりに見ました。戦国の世にはたまに見たものですが、ここ最近では珍しいですね」


女神は雪だるまを持ち上げ、じっくりと上から下まで見つめていく。

気恥ずかしいのか、白は桃色へと染まっていく。


「ここまで重なっているとなると、引きはがすのは不可能です。両方とも崩壊してしまいます」


その言葉を聞いて堪えたらしく、輝きが薄れてしまう。


「一つだけ方法はあります。無理に分離させるのではなく、このまま一緒に新しい生を迎えて自然に分離を待つのです。魂はそれぞれ個たるものですからね」


雪だるまは意味が分からないようで体を傾けた。


「そうですね。あなた方の世界で例えるならつきたてのお餅を想像してください。あなた方はその状態でくっついていますので、無理にはがそうとすると形が大きく崩れてしまいます。ですが、時間を置いて固くなると容易に切り離すことが可能ですよね?」


理解したようで上下にふよふよする。


「ただ、一つだけ問題点もあります。本来ならば綺麗に浄化されて旅立つのですが、魂の接着部分が浄化できません。そのため、少しだけ何かを持っていくことになります。それが良いものなのか、悪いものなのかの判断は不可能です。申し訳ないですが、ここはあくまでも通過点ですので長く滞在はできません。心苦しくはあるのですが……よろしいでしょうか?」


互いに迷うことなく、了承の答えを出した。

良いも悪いも知っていると言わんばかりに。

お互いを知り尽くした二人だからできることだろう。


「ふふふ、流石は心を重ねられたお二人ですね。ありがとうございます。それでは出魂を許可します。あなた方に良い旅路があることを……」


そして二つの魂は、一つの体へと旅立っていった。

意識が薄れてゆく中で、お互いに思う。

また、よろしく……と。

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