肝心要の騎士さんはどういった人ですか?
「せいぜい祈るがいい。それが弱き者の定めだからな」
「貴様の駄馬が負けるのを楽しみにしておけ!……待ってくださいよ!ウザック卿!」
決闘の成立を確認したウザックは、息子のライハーツを連れてパドックから去っていった。
それを慌てて追いかけるドルバ。
「さて、わしらも移動するとしようかの」
「「「ダヴィルさん!!!」」」
「な、なんじゃぁ!?」
今まで黙っていた周囲の人々が、こぞってダヴィルの近くに集まってきた。
「俺たち……感動しました!」
「そうだ!心底情けない話だが、俺たちゃ権力ってやつにビビっちまって文句の一つも言えねえ!」
「でも、ダヴィルさんの言葉のおかげでスッキリしたんです。ありがとうございます!」
「ほっほっほっ!なぁに本当のことを言ったまでじゃ、そんなに褒めるでない」
言葉とは裏腹にご機嫌な様子である。
「それで俺たち応援する意味で、ダヴィルさんの賭けた馬に賭けようと思うんです!」
「おう!有り金全ツッパだ!」
「どの馬か教えていただきたいんです!」
「そうかそうか!仲間が増えるのは嬉しいのう!ほれ、丁度目の前で歩いておるぞ」
「「「えっ……?」」」
ふわぁぁぁ……
そこへ大きなあくびをしながらのそのそと歩くソロンがやってきた。
「やっぱり7番を買いでいきましょう」
「そうだな」
「血統から実績まで素晴らしいですからね。オーナーはあれですが」
その姿を見た瞬間、凄まじい手のひら返しを見せる。
驚きの早さというほかない。
「お、お主らさっきの言葉はなんだったのじゃ!」
「「「心の中で、応援しています……それでは!」」」
にっこりと微笑むと、馬券購入所へと走り去っていった。
「なんと薄情なやつらじゃ……」
「誰も負け戦にはついて行きたくないものです」
「ふん!負けると決まってはおらん!」
憤慨するダヴィルをなだめるトナシだったが、その矛先は別の方へ向いた。
「そうじゃろ!?ディクト君!」
「はい!トナシさんがソロンを元気いっぱいにしてくれましたからね!」
ボクは自信満々に頷く。
「うむ!人馬一体で挑めば……そういえば騎士はどういった人じゃ?トナシ君」
そういえばすっかりと忘れていた。
ソロンに乗ってくれる騎士さんはとても大事な人だ。
騎士さんとソロンの息が合わないと、力を出し切れないかもしれない。
でもトナシさんが選んだ人だし、きっと大丈夫だよね。
「三年目とまだ若い騎士ではありますが、その騎乗技術に関してはなかなかのものです」
あれ?なんだか騎乗技術だけしかダメみたいな言い方……?
「と、トナシさぁぁぁん!」
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
「なんじゃ!?」
急にパドックの方から情けない声が聞こえてきたんだけど!?
ボクたちはいきなりの大きな声にびっくりしてしまう。
「こっちに話しかけるな!観客との会話に罰則があることくらい知っているだろう!」
「調教師なら問題ないですよね!?」
「大いにあるわ!」
「すいません!でも俺!緊張して心臓が張り裂けそうなんですよぉぉぉ!」
もしかして、今にも泣き出しそうなこの人がソロンの騎士さんなの?
「……このバカ者が」
頭を抱えるトナシさんを見てボクたちは多分同じことを思った。
……これはダメかもしれない。




