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【コミカライズ9/29公開】お気楽令嬢は、婚約破棄にほくそ笑む【まさかの】  作者: アバタロー
第4章 お気楽令嬢は、学院生活にほくそ笑む
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2.お気楽令嬢と、そこはかとない勝利の予感



 ――グラセリア魔術学園は、このラヴォワ皇国内でも、有名な学園である。


 他にも魔術を教え、貴族が通うような学園は数あるが、どこもグラセリアとは規模も知名度も段違い、というほどの超名門校。


 とはいえ、家柄がすべて、というわけではなく、実力があれば平民だって入れる。

 そんなこともあって、ここの卒業生を名乗れるのは、貴族にとって圧倒的なステータスであった。



 そんな割と厳しい環境の中、アンネローゼはウキウキしっぱなしで学園内を歩いていた。


 汽車から降りて、駅から学園まではそのまま一本道になっている。

 学園の様子はだいぶ緑が多い。いい感じにスローライフ感がにじみ出ている。


 なんでも魔術の勉強に励めるよう、わざと都から遠いところに作ったらしい。

 建物もオシャレで、清潔感ばっちり。制服を着た生徒をチラホラ見かけるが、制服も可愛らしい。




「じゃあ、一旦荷物を置いて、試験会場に向かおうか」と、ゲオルグが口を開いた。


「試験会場?」

「ああ、ちょっとした実技試験さ。そこの結果次第で、クラス分けがされるんだ」


 なるほど。前哨戦か。

 アンネローゼはゲオルグの整った顔を見つめ返した。


「では、行って参ります」


 へえ、とゲオルグが目を細める。


「迷いがないんだね」

「もちろんです」


 アンネローゼは即答していた。

 なぜなら、先ほどから恥知らずにも、アンネローゼはこう思いこんでいたからである。


 ――自分には才能がある、と。


 つまり、アンネローゼの脳内では、


 あのゲオルグが『才能がある』と言ってくれたんだし、自分には才能があるかもしれない……。

 →いやもう、確実に才能があるに違いない………!! 

 →あ。私、天才だわ、たぶん


 という死ぬほど単純な構図が出来上がっていた。


 そう。

 こう見えて、ゲオルグは割と冷静なところがある。

 そんなゲオルグが「いけるよ」と言ってくれた。これは信ぴょう性抜群というものである。


「いい報告を待っているよ」

「ええ」


 自分が失敗するはずがない。

 ふぁさっと髪をなびかせ、優雅に試験会場へと歩くアンネローゼ。


 まさに、虎の威を借りる狐。

 完全に、アンネローゼは婚約者の才能にタダ乗りしていた。



 ――が、しかし。

 アンネローゼは1つ大事なことを忘れていた。

 

 他人には割と冷たく、厳しい面もあるゲオルグが、アンネローゼだけには激アマ採点をしていたことを。


 というか、アンネローゼのやることに対しては、だいたい無条件で皇子は褒めている、と言う事実に。

 

 アンネローゼはそんな事実に気が付かず、意気揚々と試験会場に向かうのであった。



**********



 案内された試験場では魔術の実技試験が行われていた。


 試験会場で()()()()()()アンネローゼは、広い試験会場で試験官と向かい合った。


 室内にあるホールでは、アンネローゼと試験官以外には他に誰もいない。

 どうやらアンネローゼが最後らしい。


「これで、試験のすべての行程は終わりです」と、眼鏡をかけた神経質そうな試験官がほほ笑む。


 アンネローゼも、「ありがとうございます」とお礼を返した。


「では、結果を………」


 しばし、無言が会場を包みこむ。

 緊張の一瞬。


「アンヌ君だったね?」

「はい」となるべく元気よく、返事をする。


 どうやら、アンネローゼはちゃんと『アンヌ』という偽名で学院に登録されているらしい。

 さすがは皇子。偽装工作も完璧である。



「では」


 ゆっくりと試験官が息を吸う。


 さて、自分はどこクラスに入ってしまうのか。


 優等生が多く集まる、というAクラスだろうか。それとも、手堅いBクラスか。

 いやあえて、一番人数が多い、というCクラスでも悪くないかもしれない。

 もしくは、一芸に秀でた者が集まる、という尖ったD,Eクラスだろうか。


 まあなんでもいいか。

 なぜなら、自分の勝利は間違いないのだから。


 アンネローゼの脳内では、もはや自分の試験結果を疑う必要もなくなっていた。

 末期である。


 そして、そんなアンネローゼに、笑顔のまま試験官は告げた。


「Fクラスで頑張ってください。成長を期待しています」




「……んん??」


「はい??」と怪訝な顔を返してくる試験官。


「え、Fクラス……ですか??」


 聞き間違え?? と思ったアンネローゼはたまらず試験官に訊き返した。


 いやいや、まさかまさか……。 

 いやだって、ゲオルグが………才能あるって……。


 が、試験官はアンネローゼが、緊張のあまり結果を聞き取れなかった、と考えたらしい。

 彼は、それはそれはいい笑顔で捕捉してくれた。


「――もちろん、Fクラスですよ」と




 げ、ゲオルグ皇子????

 話が……ちょっと話が、事前に聞いていた話と違うような気が……???

 

本日のアンネローゼ様

→婚約者の激アマ採点に気が付かず調子に乗る

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