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獣放浪記  作者: 柱餅
3/5

3話:"クロと鎧"

工事完了したので、実質初投稿です。

 とりあえず、友人宅へと行きながら話しましょう。シスターの提案で足を進めることにした。

もうそろそろ夜になってしまうような、日の沈み様だ。このままその場で話していても、ただでさえ薄暗かった路地裏が、真っ暗になってしまい色々と危険だろう。そう両者は判断した。


「とは言っても、私も詳しくはないんですけどね…。

 何でも、夜に現れて人に襲い掛かるんだとか…。」

「夜、か………『芸術家』の推定犯行時刻って、もしかして夜か?」

「え、確かにそうですけど…。よくわかりましたね?」

「殺人鬼が動きやすい時間帯は大体夜だ。暗闇に紛れて犯行しやすい。

 …まぁ、例外もいるとは思いますが。」

「あー…そういえばそうですね…。」

「他には?」

「…すみません、これ以上はないです…。」

「ん、ありがとうございます。」


 会話が終了し、両者に無言の時間が続く。

しばらくすると気まずくなったのか、シスターが口を開いた。


「あー…えっとぉ…く、クロさんは、何故ここに?」

「…オルドクトに行くんで経由する為に、ですね。

 調べたいことがあるもんで。」

「そ、そうなんですねぇ………あ、えっと、ここです。」


 そうこうしているうちに、件のシスターの友人宅へと、たどり着いた。

何の変哲もない、よくある路地裏の家だ。

シスターが、玄関の戸を拳の背で2回叩く。


「おーい、ベトちゃーん。いるー?」


 ベト。これが、彼女の友人の名前なのだろう。

…しかし、いくら待っても、その友人が来る気配はなかった。


「あれ、いないのかな?どこに行ったんだろう…。」


 シスターが思案している間に、クロがドアノブに手をかけ回してみると、

扉は開いた。鍵はかかってなかったようだ。扉の向こうには、様々な油絵が置いてあった。

その部屋の中から何か(・・)を見つけたのか、クロは無言で侵入すると、その見つけた何か(・・)を拾う。

…無断侵入。立派な犯罪である。

シスターは、目の前のクロの行為に気付くと、慌てて家に入り注意する。


「ちょっ、ちょっとー!?何やってるんですかッ!?無断侵入は立派な犯罪ですよ!?」

「…すまない。部屋で倒れてないか確認していた。」

「そしたら、鍵はかかってる筈です!!いいから、出てくださいッ!!」


 シスターに背中を押され、追い出されるように外へと出た。

そして急いで扉を閉められる。


「もう、まったく!!帰りますよッ!!」


 いつの間に、自分はあんたの護衛になったんだ。クロは仮面の中で顔をしかめたが、心の中で思うだけにした。

シスターの友人宅から離れて数分後、ふとあることに気付く。


「鍵がかかってなかったが、合鍵とか持ってないのか?」

「持ってないです、けど…。」

「…空き巣が、入って来たらどうするんですか?」

「あっ…。」


 頭を抱えながら、どうしましょうと呟くシスターの横で、どさくさに紛れて持ちだしてしまった、家の中で見つけた何か(・・)

―赤い液体が少し付着した空の注射器(・・・・・)を見つめ、クロは小さく呟く。


「…なるほどな。」


 そして、それを隠す様に懐に仕舞い、シスターの後を追う。

宿屋まで帰る道を忘れてしまったが、シスターに付いて行けば大通りまで戻れるだろう。

…もしかしたら、噂の『芸術家』に会えるかもしれない。そう、心の中で考えながら足を進める。

シスターは、空き巣が入らないように祈ることにしたようだ。



「…シスター、前に誰かいる。」

「え…あ、本当ですね。…何故、フラフラとしておられるんですかね。

 お酒でもお飲みになられたのでしょうか?」


 いつの間にか日が沈み切り、さらに暗くなった路地裏。2人がしばらく歩いていると、前方に人影を発見した。

しかし、何か様子がおかしい。ゆらゆらと亡者の様にこちらへと、ゆっくり近づいてくる。

頭頂部に、人には有るはずの無い丸い耳のようなものがあり、キラリと、銀色に光が反射して―――


「――!っ、邪魔だッ!!」

「えっ、きゃぁ!?」


 人影は、急に猛スピードでこちらに接近してきた。

クロは咄嗟に、シスターを後ろへと引っ張り、背中に背負っていた槍を取り出し、迎撃する為に突き出した。

しかし、その槍が人影を貫くことはなかった。




―――鎧によって、阻まれたのだ。

人影――熊を模したかのような鎧を身につけた”鎧の男(・・・)”は、クロの槍を両腕で掴み、へし折ろうとしている。


「おやおやおやぁ、いきなり攻撃を仕掛けるとは…物騒な方ですねェ…!!」

「…先に攻撃仕掛けてきたのは、貴様だろう、がッ!!」


 槍を力強く払い、へし折られるのを阻止すると同時に”鎧の男(・・・)”を吹き飛ばす。

勝負(突然の殺し合い)は、振り出しに戻った。”鎧の男(・・・)”はくもぐった声で喋りだす。


「おっとっと、それはそうでした。お詫びと言ってはなんですが、

 あなた方を作品(・・)にしてもよろしいでしょうかねェ?まぁ、勝手にやりますけど。」

「…そうだな、勝手にしろ。こちらも勝手に、お前の首を獲ることにした。」

「………ふふっ、くく…っはははッ…アーハッハッハァッ!!」


鎧の男(・・・)”はクロの言葉を聞いて突如笑い出した。

クロの発言を冗談だと捉えたようだ。


「そんなチンケな槍で?この私を!?面白い冗談ですねェ!!

 …あぁおかげで、ウキウキ気分が引っ込みました。

 どうしてくれやがんですか、ん?」

「一生沈んでろ、『ヒトモドキ(・・・・・)』。」

「『ヒトモドキ(・・・・・)』だなんて、酷いなぁ…

 私には『芸術家』という素晴らしい―」


 ”鎧の男(・・・)”の言葉を最後まで聞かずに、攻撃を仕掛ける。勢いを付けた、槍での突撃。

しかしその攻撃も、腕を交差し防御され、”鎧の男(・・・)”もとい、『芸術家』には届かなかった。

槍と、爪が付いた両腕の鍔迫り合いが、金属がこすれる音を辺りに響かせる。


「く、くく…力だけ(・・)はあるよう、ですねェ…

 まるで、私みたい(・・・)、だねェ…ッ!!

 しっかし、こちらが話しているのに、いきなり攻撃するなん、て…

 と、酷くない、ですかぁ?」

「…。」

「…あ、無視ですか。そーですか。…本当に、酷い奴、だなァッ!!」

「…!」


 交差した両腕を振り上げて防御を解き、槍を上へと弾く。

槍は持ちあがってしまい、姿勢を崩され、クロは無防備な状態になってしまう。

その出来てしまった隙を、『芸術家』は逃さない。片腕を後ろへと引っ込ませる。

そして、その引っ込ませた腕を勢い良く突き出して、クロの腹を貫こうとする。


「ハッハァーッ!!もらったァッ!!」


迫る拳。クロ、絶体絶命―――


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