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第六話 招待状



「お嬢様!お嬢様!起きてくださいませ、もう朝ですわ!」

「ふわぁっ………?」

 

 小窓を見てみると暗かったはずの外が明るくなっていた。


(しまった!爆睡してしまったわ!)


 急いでベットから起き上がると、いつもどおりの薄汚れた格好に着替える。


(でも、ドレスのときは準備が面倒だから、意外と心地いいのよねー)


 こんなことを言ったら、使用人たちから呆れられるのは目に見えているが……。


「お義母様たちにバレる前に早く仕事しなくちゃ!」


 ミアに起こしてくれたお礼を言ってから、屋根裏部屋をコソコソと出ると、裏口から庭へ向かった。


 幸い、継母たちは、昨日の帰りが遅かったらしくまだ眠っているようだ。


「おはよう、マーカス」

「おはようございます。アルミリアお嬢様」


 日に焼けた小麦色の肌に、顔のそばかすがトレードマークの我が家の庭師マーカス。

 彼は、代々エルゼルト公爵家に仕える庭師一家の息子で、私が生まれてからずっとうちにいる。


「さぁ!今日も張り切って雑草抜くわよ!」


 おー!っと片手を突き上げてみると、マーカスはクスクスと後ろの方で笑っている。


「アルミリアお嬢様は、昔から雑草抜きがお得意でしたよね」

「えぇ、そうよ?なんなら刺繍よりも得意だわ」

「お嬢様の刺繍の腕はプロ級だと伺いましたよ」

「それは盛りすぎよ」


 あくまでも、王族の娘として、公爵令嬢として恥ずかしくないようにはしているだけ。


 そうして、マーカスと二人で庭の雑草抜きに精を出しているところ、屋敷からセバスチャンが走ってきた。


(彼ってもう80歳過ぎてるわよね。あんな素早く走っていいものかしら、世の中の(ことわり)ってなにかしら……)


「アルミリアお嬢様ーー!」

「一体どうしたっていうの?そんなに走って」

「ふぅ……。たった今、王宮から使いが参りました」


(うん、いやこの人すげー。さっきちょっと息吐いただけで、息切れしないんだ……)


 ほんとに老いぼれ?という目で凝視していると、後ろからマーカスに小突かれた。


「痛っ!ひどいわ、マーカス!」

「お嬢様?お話しはちゃんとお聞きしましょうね?」

「はい…………。それで、使いがどうしたの?手紙でも持ってきた?」

「それが……」


 妙に歯切れの悪いセバスチャンを訝しがりつつも、差し出してきた封筒を受け取る。


 これまたセバスチャンから渡されたペーパーナイフで封を切ると一枚のカードが入っていた。


『愛しのロサへ


 体調が悪いと聞いた。お父上のこともあり、さぞかし気分も落ち込んでいることだろう。

 昨夜は俺が見舞いに行くつもりだったのだが……。

 とにかく、ロサの顔を見たい。体調が悪いならそちらに行くから、大丈夫なのであれば明日の午後、王宮で茶会でもしよう。俺とレオンしかいないからロサもゆっくりできるだろう。


 君を一番に思っているベルンハルトより』



 王子、なんて余計なお世話をしてくれるんだろう……


「お嬢様、第一王子殿下は何と?」

「明日の身内だけの茶会に招待されたわ……」

「それはまた………」


 なんてことをしてくれたのか……。


 こんなのどうやって継母に伝えるというのだ。


「セバスチャン、ミアをこっそりと王城にいるヘンドリック様の所に行かせて。この件に関してはどうやっても私達だけで処理するのは無理だわ。事の次第を説明して協力してくれないか頼んで頂戴」


「かしこまりました、すぐにミアに伝えます」


 そう言うとセバスチャンは再び屋敷の方へ向かっていった。


「大丈夫なんですか?お嬢様」


 マーカスが珍しく心配そうな顔をしていた。


「うーん。取り敢えず、明日は隣町まで買い出しに行くということにしておけば大丈夫かしら。問題は『ドレス』よ………」


 私が持っていたドレスは全て継母に没収されている。

 お母様のドレスを着ようにも、それは継母の寝室の隣りにあるドレスルームに入れられていて取ることは困難だ。


 腐っても王宮。既製品を買うにしても格が落ちてしまう。


 どうするべきか………



 考えながら無心で草むしりをし、屋敷がディナーの支度を始めた所でお使いに行っていたミアが帰ってきた。



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