第三話 その頃、王宮では……
綺羅びやかなシャンデリアに、貴族たちの色とりどりの衣装、華やかな一流の演奏……。
俺は可愛い可愛い従兄妹を探していた。
「?おい、レオン。ロサはどこだ?」
「兄上、それ、俺に聞かないでください。いつも、俺より先にロサのこと見つけるでしょう?……で、いないんですか?ロサ」
「あの公爵の後妻たちの所にいない」
「離れたところにいるんじゃないですか?馬が合わないって言ってたじゃないですか」
しかし、どこを探しても愛おしい従兄妹の姿が見えないのだ。
仕方なく、公爵の後妻の元へ向かう。
(あの女の娘二人、たいして美人でもないくせに、うるさいんだよな……)
「御機嫌よう、セルノディア夫人」
本来ならエルゼルト公爵夫人と呼ぶ所だろうが、俺にとってエルゼルト公爵夫人は叔母上だけだ。
「あら、御機嫌よう!ベルンハルト第一王子殿下!!こちら、娘のセレンとユアンですわ」
「セレンです」「ユアンです」
「あぁ、御機嫌よう。………ところで、ロサは」
少しだけ、声を低くして問う。
「あ、あぁ、あの子でしたら、具合が悪くて家で休ませておりますわ。……そんなことより!是非、娘たちのどちらかとダンスを……!」
「すまないが、急用ができた。あぁ、この後も是非、夜会を楽しんでおくれ」
笑顔を貼り付けその場を辞す。
(義理といえども娘だろう。何故、そばに付いておらずに屋敷に置いて、夜会に来れるのか)
俺はその足で真っ直ぐに父の元へ向かう。
「あぁ、ベルンハルト。丁度いいところに。ロサはどこだ?姿が見えんのだ」
「父上、ロサは体調を崩しているそうです」
「なんと!!今すぐエルゼルト公爵家に、あっ、いや、宮廷医を送ったほうが良いか!?それとも、薬を……」
「父上、落ち着いてください。とにかく、今から私がエルゼルト公爵家に向かいます」
「あぁ!それが良い!」
父上はロサのことを溺愛している。公爵が行方不明になったことも合わさって、最近は特に気にしている。
(よし、じゃあ早速……!)
と、父の前を辞そうとしたその時………
「ベルンハルト第一王子殿下、お待ち下さい」
「何用だヘンドリック・ロンジャー。私は今、急いでいる」
俺たちの前に立っているヘンドリック・ロンジャーは、騎士団の団長を務める屈強な戦士だ。
「陛下発言よろしいでしょうか」
「もちろんだ、続けてくれ」
「殿下は今、アルミリア・ロサ・エルゼルト公爵令嬢の元を訪ねようとしていらっしゃるんですよね?」
「その通りだが」
「賛同しかねます」
「なに!?」
ヘンドリックから放たれた言葉に俺はヘンドリックへ鋭い視線を投げ掛ける。
「本日は王家主催の夜会。主催者であり王太子たる殿下が会場を抜け出すことは宜しくないかと」
「ならばどうしろというのだ。私の大切な従兄妹が体調を崩して屋敷に一人でいるのだぞ」
「公爵家には使用人もおりましょう。………それでも心配だとおっしゃられるのなら、私が出向きましょう」
「ハッ!笑わせてくれる。貴様などをロサの元へ向かわせるものか」
「いや、ヘンドリック、ベルンハルトの代わりに頼まれてくれぬか?」
俺は父の言葉に固まってしまった。
(今、父はなんといった??俺の代わりにこのヘンドリックを向かわせると?)
「はっ、かしこまりました」
そう言って足早に会場を立ち去って行くヘンドリックの背中に「待てっ!」と声を荒げるものの、ヤツは無視し出ていった。