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恨み節

「あいつにばかり負担をかける訳にはいかないからな……、そろそろお前には死んでもらう!」


 レオが足止めを開始したが、人形を出しつくした状態でどこまで止めていられるか分からない。

 1人では無理でも、自分が協力すれば多少は役に立つ。

 そうするためにも、ガイオはテスタとの戦いを終わらせることにした。


「チッ!! 死ぬのは貴様だ!!」


 2本の短剣を使い出してからは、テスタの方がガイオを押し始めた。

 やはり手数の多い相手に大剣では、なかなか攻め込むことができないというのが現状だ。

 それでもガイオは、服を斬られても怪我は負っておらず、まだ勝機を狙う目をしている。

 テスタは、強制奴隷能力のみで組織のトップに上り詰めたわけではない。

 戦闘技術も一流の戦闘員だ。

 強いのは認めるが、得物による相性で完全に有利に立たれたというのに、自信ありげなガイオの目にいら立ちが募る。

 決着をつけるというなら望むところと、テスタはガイオの大剣に注意しつつ接近を試みた。


「オラッ!!」


 左斬り上げからの右薙ぎ。

 ガイオによって、大剣とは思えないような速度で攻撃が振るわれる。


「っ!!」


 上半身を横に真っ二つ。

 そうなる寸前に、テスタは地面スレスレに身をかがめることにより、ガイオの攻撃を回避した。


「もらった!!」


 これまで以上のスイング速度で振るわれたガイオの攻撃を躱し、テスタは勝利を確信した。

 ガイオは大剣の遠心力によって自分の攻撃を躱すことなどできず、腹でも首でも狙いたい放題。

 その中でテスタが選んだのは首。

 しゃがんでいるような状態から伸びあがる反動を利用して、ガイオの頸動脈を斬り裂こうと短剣を持つ手を伸ばした。


「っ!!」


 しかし、テスタの思い通りの結果にはならなかった。

 ガイオの首に届いたと思った瞬間、ガイオが体を回転させて短剣の攻撃から回避をした。

 スローモーションのように感じられる僅かな時間で、そんなはずはないとテスタが目にしたのは、大剣を手放したガイオの姿だった。

 大剣を振ったことによる遠心力を、そのままテスタの攻撃を回避することに利用したのだと気付いた時には遅かった。

 首を狙った大振りの攻撃によって、隙だらけになったのはテスタの方だった。


「ハッ!!」


「ガッ!!」


 テスタの短剣回避と共に、腰に差していた短剣を引き抜く。

 そして、回転を利用したガイオの攻撃がテスタの両足を斬り飛ばした。


「これで動けんし、自害もできんだろ!?」


「う…うぅっ!!」


 足をなくし、床へと倒れ伏したテスタに対し、ガイオはすぐさま紐を取り出し手と口を縛り上げる。

 殺すつもりでいたが、侵入者の中で一番実力があると思われるこの男なら、ジェロニモに関するこれまでの情報を得られると、ガイオは捕縛の選択を取ったのだ。

 縛り上げられて身動きできなくなったテスタは、うめき声を漏らすことしかできなくなった。






「ハッ!! セイッ!!」


 仲間たちが侵入者と戦っているなか、レオは懸命に援軍到着までの時間稼ぎをおこなっていた。

 レオの指1本から伸びる糸は1本。

 つまり、両手で合計10本の糸しか操れない。

 糸を付けた個体しか操れないため、たった10体のスケルトンを利用して迫り来る何千、何万のスケルトンを止めなければならない。

 1体を長く操るのが一番魔力を使わずに済むのだが、どうやらスケルトンは自分たちに攻撃してくるなら同じスケルトンでも敵とみなすらしく、糸を付けて操れるのは1分程度。

 それ以上はスケルトンたちの反撃によって破壊されてしまう。

 しかし、これは利用できる。

 糸を付けて仲間を攻撃し、数体を倒したら糸を外す行為を繰り返すことで、操ったスケルトンを含めた数体が破壊できる。

 しかも、前列のスケルトンが反撃中、後続は進軍が鈍る。

 進軍を遅らせるだけでいいレオとしては、これが分かったのは僥倖だった。


「くっ!」


 所詮たった10体を操るだけでは、進軍を多少遅らせることはできても止めることはできない。

 レオの糸の届く範囲とは言っても、間に合わずすり抜けるスケルトンが出始めた。


「っ!! ナイス!! エトーレ!」


 レオの足止めを抜けたスケルトンが、レオの従魔であるエトーレの糸によって動きを止められた。

 それを見たレオは、指を動かしながらエトーレのことを褒める。

 糸を使って動きを止めるという意味では、蜘蛛の魔物であるエトーレの方がレオ以上の力を発揮していた。

 自慢の糸を飛ばして、スケルトンの手足を縛りつける。

 刃物でないと切れないエトーレの糸は、仲間のスケルトンに協力を受けないと脱出できない。

 助けようにもレオとエトーレによって止められるため、イモムシのように動けなくなるスケルトンの数が、少しずつ増えていった。


「くっ!!」


 学習能力があるのか、段々とスケルトンたちはレオの糸を躱すように動き始めた。

 それにより、エトーレの捕縛も間に合わなくなり始め、せっかく捕まえたスケルトンが解放され始めた。

 援軍到着はもう少しかかるというのに、このままでは砦内へなだれ込んでしまう。


「ニャッ!!」


「っ!! クオーレ!!」

 

 焦燥感に駆られるレオに、スケルトンの動きを止める存在が現れた。

 兵の避難を任せていたレオ自慢のもう一匹の従魔、闇猫のクオーレだ。

 レオとエトーレから逃れたスケルトンを、自慢の影を使った闇魔法により動けなくさせた。

 クオーレがここにいるということは、動けなくなっている兵たちを避難場所へと送り終わったということだろう。

 これで少し安心した気持ちでスケルトンの相手ができる。

 しかし、砦内に侵入されれば、レオに協力したフェリーラ領のメルクリオをはじめとした貴族や兵たちは成すすべなくスケルトンにやられてしまう。

 何としても足止めをするべく、レオは魔力を増やして糸の操作速度を上昇させた。


「頑張り過ぎだぜ! レオ!」


「ここまで来たのは俺たちに任せろ!」


「っ!! ドナートさん! ヴィートさん!」


 糸へ流す魔力を増やしたことにより、レオは魔力消費の疲労をジワジワ感じて汗が頬を伝う。

 そこへさらに仲間が到着した。

 槍使い兄弟のドナートとヴィートだ。

 数が多ければ危険なスケルトンも、単体ならたいしたことない。

 2人に危険が迫ればクオーレが止めると連携することで、砦付近にまで迫っていたスケルトンの破壊を始めた。


「【爆】!!」


「っ!! ジーノ師匠!」


「ホッホッホ……、弟子が頑張っとるのに師匠のワシが何もせん訳にはいかんからな」


 爆発の魔法によって、レオの糸の届かない位置のスケルトン数体が吹き飛ぶ。

 レオの師匠であるジーノの魔法だ。

 長命なエルフの特権である豊富な魔力を使い、遠距離のスケルトンを破壊し始めた。


「お前らに先を越されるなんてな……」


「ガイオさん!!」「「おやっさん!!」」


 ドナートとヴィートの側に、もう一人仲間が到着する。

 少し前までテスタと戦っていたガイオだ。

 頼もしい人間の到着に、レオだけでなくドナートとヴィートも嬉しそうに声をあげた。


「兵たちはエドモンドとセバスティアーノに任せてある。全力で足止めを継続しろ!!」


 動けなくなっている兵たちと共に、ガイオは縛ったテスタの見張りをエドモンドとセバスティアーノに任せてきた。

 侵入者はすべて倒したと思うが、他にいないとも限らないため、2人に残ってもらった。

 これで安心して足止めに専念できる。

 レオたちたった数名による全力の足止めが開始されたのだった。






◆◆◆◆◆


「何故だ!! 何であの数がいて攻め込めない!!」


「ジェ、ジェロニモ様……」


 レオたちの抵抗により、スケルトンたちが砦内へと攻め込めないでいる。

 これでは数がいる意味がない。

 ここまで自分の能力を虚仮にされて、ジェロニモは血管が切れそうなほど顔を赤くして怒り狂っていた。

 それをどう諫めていいか分からず、コルラードは内心狼狽えるしかなかった。


「ジェロニモ様! このままでは敵の援軍が到着してしまいます。そうなる前に、このまま我々は撤退すべきかと……」


「くっ!!」


 敵の援軍が到着しても、このままスケルトンの相手をさせておけば、自分たちの退却時間が稼ぐことができる。

 ジェロニモがいればスケルトンは増やすことはできる。

 一刻も早く退避して、スケルトン制作にあたってもらうことが得策だとコルラードは判断した。


「おのれ!! おのれーー!!」


 コルラードの言うように、ここにいてもできることはもうない。

 そのことを理解したジェロニモは、恨みがましい言葉と共に、将軍たちや兵たちと共に退避を開始したのだった。



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