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突撃

「魔力で壁をつくれ!!」


「少しでも時間を稼ぐんだ!!」


 スケルトンドラゴンの接近を防ごうと、魔導士兵たちを中心に魔力で障壁を張るように指示が飛ぶ。

 その指示に従い、王国兵の誰もが魔力を使って1ヵ所へ障壁を張ろうとする。

 1人、2人の魔力ではたいしたことはないが、それが重なり合うことによって強度を増していく。

 その障壁でスケルトンドラゴンの接近を遅らせようと、誰もが懸命に魔力を放出した。


“パリンッ!!”


「そんな……」


「折角張った障壁が……」


 王国兵たちが懸命に張った魔力障壁により、確かにスケルトンドラゴンを止めることはできた。

 しかし、スケルトンドラゴンが数発足で殴りつけるだけで魔力障壁にひびが入り、あっという間に破壊されてしまった。

 何千の人間の魔力も、スケルトンドラゴンにとっては児戯にも等しいといわれているかのようだ。

 魔力障壁が破壊された瞬間、王国兵たちの期待も打ち砕かれたようにすら感じる。

 ここまでの戦闘と、魔力を使ったことによる疲労感から、兵たちは全身の力が抜けたように項垂れた。


「クッ!! あんなの相手にどうしろって言うんだ!!」


 兵たちと同様に、メルクリオも期待が崩れるような思いがしていた。

 蟻が人に挑むように、スケルトンドラゴンからすれば人は蟻と変わりない存在なのだと思えてくる。

 それでも心を折られるわけにはいかないため、メルクリオは何とか声を張り上げることで自分を鼓舞するしかなかった。


「っ!!」


「何だっ!?」


 破壊されても少しは時間が稼げる。

 レオにスケルトンドラゴンを任せるという策に賛成していなかった貴族や、最前線で危険に晒されるわけにはいかない王のクラウディオたちが後方の地に控えている。

 彼らが安全な地へ退くまでの時間を稼ぐのもマルクリオたちの仕事だ。

 もしもの時は、身を挺してでもスケルトンドラゴンを止めなければと思っていたところで、上空から何かの骨が落下してきた。


「スケルトンワイバーン……」


 落ちてきたものが何かと上空を眺めると、次に3体のスケルトンワイバーンが落下してきた。

 先に落ちてきたのがスケルトンワイバーンの翼の骨で、翼を失った本体が遅れて落下してきたと言うことに、王国の者たちは後になって気が付いた。

 落下の衝撃によって捕まっていた人間も死に、スケルトンワイバーンの方も頭部を損壊して動かなくなっていた。


「レオがやったのか……?」


 レオの邪魔をするように飛んでいたスケルトンワイバーンたち。

 つまり、相手をしていたレオがこの状況を作り出したのだと、メルクリオはレオの姿を確認するために上空へと目を向けた。


「いたっ!!」


 もしかしたら、レオもやられてしまったのではないかという不安もあったが、レオが乗っていた鷲は普通に飛んでいるのが見えた。

 レオが乗っているのかは分からないが、とりあえずメルクリオは安心した。


「しかし、このままでは間に合わないか……」


 レオが飛んでいるのは、離れた上空。

 鷲型人形の姿は確認できても、レオの姿は確認できていない。

 何にしても、何度も張り直される魔法障壁を破壊しながら突き進んでくるスケルトンドラゴンが砦にたどり着くまでに、こちらに下りて来れるか分からない。


「どうせ駄目なら……」


 レオからは、ジェロニモの能力の関係上スケルトンドラゴンが何日も動くようなことはないと聞いている。

 どんなに長くても4時間。

 それがレオの出したスケルトンドラゴンの稼働時間だ。

 最悪の最悪を見越しての計算のため、そこまでの時間稼働するとは思えないが、まだまだ稼働してから1時間程度しか動いていない。

 まだまだ停止する時間が訪れるとは思えないため、魔力切れによる稼働停止を期待するのは薄い。

 しかし、レオが大丈夫ということは、スケルトンドラゴンの破壊が期待できる。

 レオに懸けるなら最後までと、メルクリオは覚悟を決めた。


「総員!! レオポルド準男爵に命を懸けろ!! 全魔力を使った魔力障壁でスケルトンドラゴンを抑え込むのだ!!」


「「「「「了解!!」」」」」


 メルクリオの言葉に、兵たちは少しの時間逡巡する。

 しかし、それに賛同した者たちがいた。

 シュティウス領のアゴスティーノと、彼が隊長を務めるスパーノたち精鋭隊だ。

 それに続くように、多くの兵たちが魔力切れによる気絶を恐れることなく、魔力障壁を張る作業をおこなっていったのだった。






「チッ! 折角手に入れたスケルトンワイバーンが……」


 離れた地で見ていたジェロニモにも、スケルトンワイバーンが落下してきたのは見て取れた。

 レオのスキルと違い、ジェロニモの能力は無傷の頭蓋骨が必要だ。

 実験の結果、頭蓋骨さえ無事なら他の動物の骨を使っての再始動も不可能ではないが、手に入れた3体のスケルトンワイバーンは落下で頭蓋骨が破損してしまった。

 他国から少なくない金額で手に入れたというのに、これではまた入手するしかなくなってしまった。

 そう考えると、またも邪魔をした人形使いのことが憎らしくて仕方がない。


「大変です!! このままではスケルトンドラゴンまでも……」


 3体のスケルトンワイバーンが全部潰されたというのは仕方がないとしても、せめて相打ちに持ち込んでほしかった。

 上空を見る限り、敵の方は無事に見える。

 スケルトンドラゴンが空を飛ぶことで攻撃を受けないようにできるといっても、敵の方が空中戦では上になる。

 むしろ、スケルトンドラゴンの巨体では的として攻撃を受けることになってしまう。

 スケルトンワイバーンのように、スケルトンドラゴンの破壊も時間の問題になってしまったといってもいい。

 ルイゼン側にとって最大戦力のスケルトンドラゴンがこのまま破壊されることを悟り、コルラードは慌てたようにジェロニモのことを見つめた。


「……スケルトンドラゴンに大火球を出させる!!」


「スケルトンドラゴンを捨てるのですか?」


「仕方がないことだ!!」


 一撃で王国に大打撃を与える攻撃。

 ジェロニモは、スケルトンドラゴンに大火球を出させることを決定した。

 それを聞いたコルラードが確認をするように問いかけると、ジェロニモは声を荒げつつ返答した。

 王国側は知らないだろうが、与えられた魔力のみで動くスケルトンドラゴンがあの大火球を撃てるのは最大2発。

 撃ちきったらすぐに行動不能になってしまう。

 このままではどうせ上空から攻撃を受けて、スケルトンドラゴンは行動不能になってしまう。

 ならば、そうなる前に王国側に大打撃を与えてしまおうという考えだ。

 スケルトンワイバーンとの空中戦で、敵の飛行体はかなり上空にいて離れている。

 今ならば、大火球を撃つ前にスケルトンドラゴンを止めることができないはずだ。


「フンッ! 魔力障壁を張ろうが意味などない。やれ! スケルトンドラゴン! 王国の砦ごと吹き飛ばせ!!」


 何度も破壊したというのに、王国側は魔力障壁でスケルトンドラゴンを止めようとしてくる。

 これまで以上に魔力を込められた魔力障壁が張られたが、そんなの気にする必要はない。

 撃ったらすぐに行動停止しようが関係ないと、ジェロニモはスケルトンドラゴンに向かって、大火球を放つように指示をしたのだった。

 大火球で王国側に大打撃を与えられれば、スケルトンドラゴンがなくても何とかなる。

 人でも動物でも、脊椎動物はどこにでもいる。

 エレナを手に入れられれば他が死のうが構いやしない。

 自分以外が死んでも、スケルトンにして使えばいいだけだ。

 ジェロニモの中では、もうエレナ以外の人間は利用価値があるかどうかということしか判断材料にならなくなっていた。






「レオ……」


 スケルトンドラゴンを抑えるために全魔力を使ったため、メルクリオは魔力枯渇で意識が途切れそうになる。

 それを何とか堪え、レオのスケルトンドラゴンの破壊を待った。


「くそっ!! ギリギリか……」


 ほぼ自由落下と言ってもいいほどの高速で、地上へ向かって飛ぶ鷲型人形。

 スケルトンドラゴンの顎が開いたのを見て、レオはあの大火球を放つことを確信した。

 そんなことをされたら、王国兵たちはひとたまりもない。

 スケルトンドラゴンの破壊のために用意した、ヴェントレ島唯一のエルフであるエドモンドと共に作成した爆発の魔道具を使うつもりでいたが、頭部に落とすのが間に合うか微妙だ。


「……こうなったら」


 あの大火球の発射を阻止しないとならないと考えたレオは、最終手段を取ることを決意した。

 そして、鷲型人形にしがみつくようにして、落下速度を上昇させた。


「レオ……、まさか……」


 だんだん近づいてくるレオの鷲型人形。

 しかも落下速度が上昇した。

 あんな速度で落下して、乗っているレオが大丈夫なのか心配になる。

 意識を懸命に保とうとしているメルクリオは、そのレオの顔に目を向ける。

 遠くてはっきりしたわけではないが、レオの目を見ることができた。

 その目を見て、メルクリオは嫌な予感がした。


「やめろ!!」


 どう考えても止まるつもりのない速度での落下。

 たしかにそれなら、スケルトンドラゴンの大火球を止めることができるかもしれない。

 それはつまり、自分も犠牲に突撃する万歳アタック。

 レオがそれをおこなうと分かったメルクリオは、懸命に手を伸ばしてやめるように声を出す。

 しかし、その手も声も届くことなく、レオの鷲型人形がスケルトンドラゴンの頭部へと飛んで行ったのだった。



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