4.5−2話 爆発
10月23日追加
「バタンキュー…もうだめ…」
「まったく…、一昨日教えた事半分忘れてるなんて…」
「だって覚えられないんだもん!!」
「それは澪音がやってないからでしょ」
「やってるもん!学校から帰ってきたらご飯作るまでずっとやってるもん!」
「その他は?」
「『その他は?』って?」
「いや、だから『その他にはやってないの?』ってこと、それだけじゃないでしょ?」
「いや、それだけだけど?」
「そりゃできるわけ無いじゃん、時間かけなさすぎ。だいたい私たちアイドルだってそんな簡単にできるわけじゃないんだから」
「そんなこと言われたって…」
「こんな基礎の基礎すらできないなら、まともに活躍もできないし誰にも推されず永遠に飼い殺しにされて人生1度しかない貴重で楽しい青春がグッバイフォーエバーだよ?」
「おぉぅ…なかなかに残酷な事を…」
「世の中そんなもの、綺麗事だけじゃやっていけないし」
「それはまぁ…」
あ、ちょっとヤバイかも…。
「上に行くには誰かを踏み台にしたり蹴落としたりしなきゃいけないの、最低限の努力すらできない人が生き残っていけるほど甘い世界なんてこの世に一切存在しないんだからね」
「わかりますがぁ……」
抑えろ…抑えろ!
「『努力は必ず報われる、報われないものはそれを「努力」とは言わない』って言葉あるでしょ?最低限の努力はして当たり前、人に見せるものじゃない。自分が蹴落とした人と一緒になりたくないならやることはやった方が身のためよ、特に澪音は良くも悪くも『結城麻衣の妹』っていうイメージがずっとついて回るんだから」
「勝手にオーディション応募したのはお姉ちゃんでしょうがぁぁぁ!!!!」
あぁ、ダメだったか…。
「あっ!!そういえばそうでした…」
「だいたい何?私は平穏に暮らしたかったのに自分が勝手に応募して!それで書類合格した体力の無い妹に『次はダンスだから』ってむりやりダンスレッスンさせておいて、更にくどくどお説教を垂れ流して!!先に原因作ったのはお姉ちゃんそっちでしょ!!」
「返す言葉もございません」
「もういい!お姉ちゃんなんて本当に知らないんだから!!」
バタン!! ガチャッ!
久々に爆発した気がする、いつ以来だろうか…。ちょっとしたイライラが指数関数のように爆発的にに増加して、最終的に大爆発してしまった。
自室に引きこもって鍵をかけて一人になる。今は家に二人しかいないという事もあって、意外に静かだ。
そんな中、気がついたら泣いていた。涙も始めは頬に伝うくらいだったんだけど、段々と抑えきれなくなって、最終的には嗚咽も漏らすほどになった。
ベッドに寝転がって枕に顔を押し付けて、涙が収まるのを待ち続けるしかなかった。