12話 4期生始動!!
「じゃあ、行ってきまーす」
「は〜い、行ってらっしゃ〜…って私も一緒に行くんでしょうが!」
「そうでした」
面接の合格発表から2週間が過ぎた。その間、だいたい3〜4日に1回くらいのペースで麻衣姉のダンスレッスンを受けたおかげで、最初の頃に比べれば少しだけだが体力もついたし、大分疲れずに踊れるようにはなれてきた。力の入れ具合の一つでも疲れ方が変わるのを嫌というほど知らされたよ…。
麻衣姉も忙しいはずなのに、合間を縫って帰って来て10分だけレッスンしてくれたり、ビデオ通話で指導してくれたり、いろいろしてもらってありがたかった。
そして今日は運命の(?)「合格者集合の日」、オーディションを勝ち抜いた猛者たちが一堂に会する日だ。
麻衣姉によると、合格者は「だいたい10人ちょっと」らしい。総応募数の数から考えると、あらためてとんでもない倍率だったんだなと思わされた。
「今日はスタジオに集合って書いてあったんだけど…お姉ちゃんは?」
「私は一応事務所の会議室に集合になってる」
「初日から鉢合わせしないようにとか?」
「だろうね、澪音は別として他の合格者にあったら私がいることがバレちゃうから」
「それってサプライズって事だよね?」
「御名答!大和さんに『妹いるんだからやっちゃえば?』って言われちゃって」
「まぁいいんじゃないの?他の人たちは驚くだろうし」
「澪音もリアクション取りなよ?」
「頑張ります」
こんな他愛もない話をしながら、駅まで歩いて電車に乗る…かと思いきや、麻衣姉が
「あ、結城です。駅の南口に着きましたよ」
なんて電話し始めた。
「え?電車じゃないの?」
「私が乗るとバレたらいけないでしょ?運営が厳戒態勢なのよ…(ホントは私が乗りたいだけ)」
「へー、運営さんも大変だね」
「まぁそれが仕事だからね、私もあの人たちがいなかったら仕事なんてできないわけだし」
「それもそうか…」
「あ、来たよ!乗ろう」
「麻衣おはよう」
「おはようございます、今日はよろしくお願いします」
「あと、そっちは妹さんだよね?よろしく」
「よろしくお願いします」
麻衣姉と共に車に乗り込んで、車内では雑談をしながら目的地まで送ってもらった。
「じゃあ私はここで」
「じゃあまた後でね〜」
「そっちも、自己紹介頑張れ」
「分かってるよ、じゃあねー」
ここからは1人で、案内に描いてある地図に沿ってスタジオまで行く。
さすが人気アイドルグループの運営兼スタジオとあって、広いしキレイだ。麻衣姉によると一昨年くらいにできたらしい。
「えーっと…ここを右に…」
スタジオまでの道中、廊下を曲がったところで
「あ、あのー…もしかして今日呼ばれた方ですか?」
見知らぬ女子に突然声をかけられた。
「はい、そうですけど」
「あ、良かった私もなんです!道に迷っちゃって…」
そう言いながらお互いの地図を見せ合う。向こうが自分の地図を覗き込んでくる形になっているが、無意識なのか腕にずっと胸が当たりっぱなしだ…下手に避けるわけにも行かないから放っておいたけど、大きさは麻衣姉といい勝負かも。
「なら一緒に行きますか?」
「ありがとうございます」
「いえいえ」
「あ、私『水沢 愛華』っていいます、今後ともよろしくお願いします」
「私は結城澪音です、よろしくお願いします」
広い建物の中で、迷子の迷子の子猫ちゃん状態になっていたらしい巨乳系アイドル(今勝手に名付けただけ)、水沢愛華さんと一緒にスタジオまでたどり着いて、中に入る。
「おはようございます」
「おはようございます」
「おはようございます」
中に入ると、既に到着していた人たちもちょっと緊張しているのか、オウム返し状態で面白かった。
集合予定時刻まで各々自由に本を読んだりして過ごして、時間になったらスタジオのドアが開いて、運営関係者の人たちが入ってきた。