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9話 食べ過ぎには御用心






 「うぅー…調子乗って食べ過ぎた…お腹が…」


 トントン「澪音、大丈夫?」


 「なんとか…」


 どうも、麻衣姉に連れて行ってもらった『お高い美味しい』ケーキバイキングで「元を取ろう」とムキになって食べた結果、翌日に消化器官が壊滅したアイドルの卵、結城澪音です。



 という感じで始まったが、調子に乗って食べすぎたのは事実だ。バイキング形式だったから、男だった時の感覚でとりあえず取って食べて詰め込むって方法を続けていたら、食べ終わるまでは良かったのだが、その後がキツかった。


 帰っている最中に気分が悪くなってきて、お腹に違和感を覚えた。そして帰り着くとすぐにトイレに直行、その時は出なかったんだが…。


 そして今日、早朝にあまりの腹痛に起床してすぐにトイレへ直行して、出しては治まり痛くなっては治まり、これを繰り返して今に至るというわけだ。


 現在進行中でお腹がゴロゴロいってるし、なにより痛い。この身体は何もしなくても時々(月3〜4回)熱が出たりお腹が痛くなったりするんだけど、それ以上に痛い。まぁ自業自得ではあるのだが…。




 ジャァー 「はぁ…」


 「ちょっと、大丈夫なの?」


 「しんどい…」


 「昨日あんなにムキになって食べるから」


 「本当に食べすぎたよ…」


 「お腹まだ痛い?」


 「今はそんなに、でもどうせまた来る」


 「あらら…そういえば…明日面接だけど、どうする?」


 「あっ!そうだった…どうしよう」


 「まぁ私から言っとこうか?『体調不良でちょっと行けそうにないです』って言ったら、多分だけど伸ばしてくれるよ?運営の人は優しいから」


 「それはいいよ、明日までには治すから」


 「がんばれ、あ、あとこれ薬ね、ちゃんと合うやつ選んどいたから」


 「ありがとう、じゃあまた寝てくる」


 「了解、何かあったら呼んで」


 「はいはい」








 昨日のケーキを食べ過ぎてお腹を壊したらしい澪音いもうと、顔は(普段も白いけど)白く見えるし少しやつれているようにも見える。


 さすがにケーキを10種類くらい追加で持ってこようとしてたのは止めたけど、それでも食べすぎたみたい。まぁあれだけ食べれば誰でもそうなるよね。


 (実際には血は繋がってないけど)もうずっと一緒に暮らしている家族だし、そんな


 「とてもとてもキュートでプリティーでビューティフルで天使レベルに可愛い」


 愛しの我が妹が蒼い顔してトイレを往復しているのを見ると、とっても興奮…じゃないや心配になってくる。


 え?今なにか聞こえたって?アイドルはそんな事は考えないのです。聞いた人は握手会とかライブチケット抽選とか全部外してやるからな?


 よし、私は優しいからあなたたちにもう一度チャンスをあげよう、今何か聞いた?え?聞いてない?よろしい、そんな正直者のあなたには結城麻衣のとびきりのスマイルをあげちゃうよ!


 麻衣や〜んスマイル!


 あ?誰だ今「ダサ」とか「イタい」とか言いやがったやつ!お前ら全員地獄に落としてやる!そこのお前もだぞ!あと小説読んでるお前らもだからな!!





 話がそれたからもとに戻そう。


 最大の問題は「食べ過ぎてお腹ピーピーという状態なのに、明日面接」という事、まぁ肝心な時に体調を悪くするのはもはや澪音の得意技でもあることだから、「あるかもしれない」と予想はしてたけど、まさか私がその引き金を引いてしまったとは…少しだけど罪悪感もある。


 「大丈夫」って言われたけど、とりあえず明日に向けて下痢止めと常備薬を渡しておいた。


 まぁ澪音なら余程のことがない限り面接でヘマすることはないだろうから大丈夫かな?


 「あぁ神様!どうか可愛いプリティーで可愛いビューティフルな我が妹に慈愛を!」






 


 翌日、面接会場にて



 「お姉ちゃん、トイレどこ?」


 「この部屋を出て右に曲がった突き当り」


 「ありがとう」


 すぐさまトイレに駆け込む。


 一昨日のケーキバイキングで食べ過ぎてダメージを受けた消化器官はまだ全然復活しておらず、今日もしばしばトイレに行っている。






 昨日の夜には少しだけ回復して、物も食べられるようになったから「晩ごはんどうしようかな」と考えていたら、麻衣姉が


 「今日は私が作るから休んでていいよ」


 って言ってくれて、お言葉に甘えて休ませてもらった。


 そして、麻衣姉が


 「はい、これ食べられる?」


 と言って俺の前に出してきたのは、やっぱりお粥だった。


 「ありがとう」


 そう言って受け取る。


 麻衣姉は親が居ない時に俺が体調を崩したりすると、余程のことがない限り帰ってきてくれて、そして決まってお粥を作ってくれる。この味が絶品なのだ。


 他の料理は壊滅的に下手なのに、このお粥だけはなぜか星付きレストラン並みに美味しい。食べると全身が温まるから、俺の身体にはもはや欠かせないものになっている。






 「ふぅ…」


 まだ少しキリキリと痛むお腹に手を当てて麻衣姉の所に戻る。


 「あ、澪音戻ってきた」


 「あ、進んでる」


 「さっき進んだよ、まぁまだあと20分くらいあるから大丈夫」


 見てわかるように今日は面接の日、届いた要項には


 「本人はもちろんだが保護者もできれば付いてきて欲しい」


 みたいな事が書いてあったんだけど、何故かついてきたのは母親ではなく麻衣姉だった。


 麻衣姉曰く


 「ママ行けないらしいから私がついて行ってあげる」


 らしい。


 「それってありなのかなぁ…」


 いくら保護者とはいえ、オーディション開催してる側の人(というかバリバリの現役メンバー)を連れてきて良いものかどうなのか甚だ疑問ではあるのだけれど、とりあえずそれはおいておこう。





 「ごめん、ちょっと…」


 「また?そろそろ時間だから早めに戻ってきてね」


 「わかってるよ」


 「いってらっしゃい」







 「次の方どうぞ」


 「あ、すいません、ちょっと調子悪いみたいで…まだ戻ってきてなくて、当分戻って来れそうにないので」


 「では一旦待機という事でよろしいですか?」


 「はい、ありがとうございます」


 「早めに戻ってきてね」とは言ったんだけど、トイレに行ったっきり澪音が全然戻ってこない。


 顔が真っ青になっていたから相当酷いのが来たんだろうけど、それにしても遅い。こうなると、やはり全国の姉同様に心配になるもので、


 「どこ行ったんだろ…」


 とりあえずトイレを覗いてみる(あ、別にそういう危ない意味じゃないよ)ことにした。


 そうしたら案の定


 「うぅ…お姉ちゃん…」


 澪音はそこに居た。緊張のせいもあってか、お腹の痛みが全く治まらないらしい。


 とりあえず個室から出てきた澪音を見ると、やっぱり顔は生気が無くただでさえ白い顔が更に白くなっていた。


 お腹を抱えてふらついていたから、このまま面接の方に戻るは無理だと判断して、澪音を支えてそのまま医務室に連れて行くことにする。


 医務室まで歩いている最中にも、何にもないところで数回倒れそうになっていたから、もう今日は無理かな。


 とりあえず状況を説明して、休んでいてもらう。ベッドに横になると少しは治まったようで、顔も少しずつ血色が良くなって表情も和らいできた。


 「澪音どんな感じ?」


 「ちょっと良くなった気がする」


 「そう」


 「お姉ちゃんありがとう…あのままだったら絶対耐えられなかった」


 「まぁ喋りなさんな、ゆっくり休んだ方が良いよ」


 「うん、ありがとう」


 そう言って、澪音は寝息をたて始めた、しかも私の手を握って。


 片手でお腹をおさえてもう片方の手で私の手をギュッと握っている。


 (あぁ…これはだめだ)


 天使のような寝顔としっかりと握られた手、それを見たり考えたりするだけで冷静さを保つことに必死になる。


 パシャッ


 澪音もこんな状態だし、本当はいけないと分かっていても、つい寝顔の写真を撮ってしまった。


 もちろん写っているのは澪音いもうとなんだけど、寝ているからかいつもより数割増で可愛く見える。もし自分が男だったら、すぐに襲っている自信があるレベルで可愛くて、誘っているようなある種の妖艶な顔だ。


 (これは…秘蔵フォルダ行き確定だ)


 音がならないように、すばやく画像を移動させた。




 そこへ


 「失礼します」


 さっきの面接会場にいた係員の人が静かに入ってきた。


 「他の方の面接が終わりましたので、寄らせていただきました」


 「あー、ありがとうございます。ちょっと今日は無理そうで…すいません」


 「いえ、全然大丈夫ですよ。むしろ用があるのは麻衣さんの方です」


 「え?私ですか?」


 「はい、面接とは言ってももう澪音さんの合格は決定してますから」


 「あぁ、はい…それで、何の用なんですか?」


 そう聞くと、突然ドアが開いた。


 「それは僕の方から説明しようか」


 「えっ…大和さん!?」




 ⚠注意 本作では「意識」と「本能」とは別物だと考えてください。私(筆者)はそのつもりで作品を書いております。


 例 意識→食べ過ぎちゃ駄目だなー

   本能→もっと食べたい!


 ややこしくてすいません。

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